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No.16:イメージづくりに使うレイアウトコンポジション

No.16:イメージづくりに使うレイアウトコンポジション

こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。これまでの連載では、画面構成やレイアウトデザインのルールについて学んできました。今回はそれらのまとめとして、ビジュアルデベロップメントで多用されるレイアウトコンポジションについて学びましょう。

TEXT&ARTWORK_伊藤頼子 / Yoriko Ito
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

多様なカメラワークやショットのデザインについて理解する

以降では、代表的なカメラワークやショットのデザインを紹介します。もしあなたがストーリーボードアーティストになりたいなら、もっと深く、多様なカメラワークやショットについて学ぶことをお勧めします。『 Filmmaker's Eye 映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方』(2013/ボーンデジタル)はお勧めの書籍です。もちろん、これらの知識はビジュアルデベロップメントをする上でも大変役に立ちます。

近年のアニメーション映画は実写映画の影響が益々大きくなっており、同じような知識が必要となってきています。この状況に対応するには、連載 第15回で解説したカメラのレンズや、多様なサイズのスクリーンフレームにおける表現を理解することが大切です。

▲多様なサイズのスクリーンフレーム。各スクリーンの縦横比を理解し、それに応じたデザインをするよう心がけましょう

Lesson33:モメンタムショットを描く

モメンタムショット(Momentum Shot)とは 、ビジュアルデベロップメントの初期段階や、ピッチ(投資家などに新しいアイデアや企画を売り込むプレゼンテーション)の際に制作するイメージで、映画の中の1場面であり、キャラクターの感情を表す場面でもあります。メインとなるキャラクター(または乗り物)が入ることが多く、ショットのロケーションやキャラクターの感情を明確に伝えることが目的です。そのためクロースアップショットではなく、ロケーションの説明が可能なミディアムショットやロングショットによるレイアウトコンポジションを選んだ方が適切です。

このレッスンでは、つぎに提示するストーリーのモメンタムショットを描いてみましょう。映画制作の初期段階ではストーリーボードができていないことも多く、つぎのようなスクリプトからビジュアルを描き起こすことも珍しくありません。

・昼間の墓場で、兄と妹が偶然ゴーストに出会う
・兄の方が臆病

まずはストーリーに合ったショットの見せ方を考え、次にリサーチをしてから、いくつかのサムネイルを描いていきます。以降で紹介する3種類のサムネイルは、1.85×1のスクリーンフレームに描いています。

▲ミディアムクロースアップショットで表現したサムネイル。特にキャラクターの表情を表したい場合に最適です。キャラクターを入れるときは、その目線に注意しましょう。キャラクターの目線は見えないラインを描きます


▲ミディアムショットで表現したサムネイル。キャラクターの表情や動作と、ロケーションとの関係を表したい場合に最適です


▲ ロングショットで表現したサムネイル。ロケーションとキャラクターの両方を描き、シーンの状況を説明したい場合に最適です。このサムネイルの構成は左右対称に近いため、象徴的な印象の画になっています

Lesson34:ロケーションデザインを描く

ロケーションデザインは、文字通りロケーション全体(あるいはロケーションの一部)をデザインすることが目的なので、キャラクターは小さく描いたり、入れなかったりします。そのため超ロングショットやエスタブリッシングショット(Establishing Shot)によるレイアウトコンポジションを選んだ方が適切です。これらはロングショット以上にカメラを引いた状態でシーンを撮影するため、見る人にシーンの環境や状況を説明することができます。

このレッスンでは、つぎに提示するストーリーのロケーションデザインを描いてみましょう。

・昼間に、兄と妹が墓場を通り抜け、教会へと歩いて行く

なお、以降で紹介する3種類のサムネイルは、2.39×1のスクリーンフレームに描いています。

▲教会を見下ろす構成。教会は遠くに小さく描かれていますが、パースペクティブの消失点に位置しており、画の中の焦点(Focal Point)になっています


▲左右対称に近い構成で、安定感があります。教会がセンターに位置しているため、象徴的な印象の画になっています


▲先に紹介した教会を見下ろす構成と似ていますが、地平線をより低い位置に設定しています


ここまでに紹介したレイアウトコンポジションに加え、映画制作ではつぎのようなショットも併用します。

・パンショット
(カメラを地面と平行に横回転移動させるショットで、スクリーンサイズよりも広いロケーションを表現できる。カメラが静止する地点に最も見せたいものを配置する)

・クレーンショット
(文字通り、クレーンを使って高い位置から撮影するショット)

・シークエンスショット
(カメラの位置やアングルを変えた複数のショットを使い、シーンの状況を説明すること。一般的にアメリカでは画面の左から右へとストーリーを展開させるが、反対のカルチャーをもつ地域もある)

名画のショットを通して、レイアウトコンポジションを学ぶ

オーソン・ウェルズ(Orson Wells)監督の『Citizen Kane(邦題:市民ケーン)』(1941)の中から、3人以上の人物が入ったトライアングルのレイアウトコンポジションを紹介します。

▲人物の頭や顔、特に目は見る人の視線を集めるFocal Pointとなります。これらのショットでは、登場人物の目線を使い、画の中にトライアングルのながれをつくっています。加えて、頭のサイズと位置関係を変えることで、その人物の重要性や、奥行きを表現しています


続いて、ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督の『The Last Emperor(邦題:ラストエンペラー)』(1987)の中から、左右対称のレイアウトコンポジションを紹介します。

▲左右対称の画は、象徴的、行き止まり、閉塞感、安定などの印象を与えます。このショットは左右対称なのに加え、奥に位置する大きな壁によって見る人の視線が止まるため、強い閉塞感が生まれています




今回のレッスンは以上です。第17回も、ぜひお付き合いください。
(第17回の公開は、2018年6月を予定しております)

プロフィール

  • 伊藤頼子
    ビジュアルデベロップメントアーティスト

    三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。2017年以降は拠点をロサンゼルスに移し、現在はアートディレクターとしてアニメーション長編映画を制作中。
    www.yorikoito.com

本連載のバックナンバー

第1回∼第13回まではこちらで総覧いただけます。
No.14:画の中のスケールとディテール
No.15:ダイナミックな動きのある画を描く

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