こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。 今回は、画の中のスケールとディテールについて学びます。
TEXT&ARTWORK_伊藤頼子 / Yoriko Ito
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
ディテールの加え方によって、スケール感が大きく変化する
連載 第12回では、オーバーラッピングを適切に使うと、オブジェクトの位置関係やスケールが明確になることを説明しました。今回は、ディテールの加え方によって、オブジェクトのスケール感が大きく変化することを学びます。ディテールを的確に表現したり、デザインできるようになることを目指しましょう。
Lesson27:絵画のスケール感を表現する
たくさんの絵画が飾られた部屋を描き、そのスケール感を表現してみましょう。
▲絵画と部屋だけを描いても、どのくらいの大きさなのか伝わりません
▲【左】人を加えると、絵画と部屋の大きさがわかります/【右】人の大きさを変えると、絵画と部屋のスケール感が変化します
▲椅子を加えることで、絵画と部屋のスケール感を表現しています。このように目安になるオブジェクトを加えると、スケール感を計ることが可能です
Lesson28:家のスケール感を表現する
家のディテールを描き、そのスケール感を表現してみましょう。
▲左右の建物の大きさは同じですが、窓や入り口の大きさを変えると、スケール感が変化します
▲この家にディテールを描きこみ、スケール感のちがう2つの家を表現してみましょう
▲画の中の大きさは同じでも、窓やドアのサイズ次第でスケール感がかなり変わります。車などのオブジェクトを加えると、スケール感を計る目安になるため、さらに効果的です
Lesson29:橋のスケール感を表現する
橋のディテールを描き、そのスケール感を表現してみましょう。
▲この橋にディテールを描きこみ、スケール感のちがう2つの橋を表現してみましょう
▲画の中の大きさやデザインは同じでも、柱やレンガのサイズ次第でスケール感がかなり変わります。バスや人、船などのオブジェクトを加えると、スケール感を計る目安になるため、さらに効果的です。このようなオブジェクトを加える際は、背景のスケール感に合った、適切な大きさにすることが大切です
Lesson30:ディテールをデザインする
ディテールを描き込みすぎると、うるさくなったり、見づらくなったりする場合も多くあります。時と場合に応じて、ディテールの密度や明暗などを加減しましょう。すべてを描かなくても、一部を描くことで、その全容を見る人に想像させることができます。Lesson29の作例の場合、橋のレンガをすべて書き込んでいませんが、橋がレンガでつくられていることが伝わります。どのようなパターンで、どこにディテールを配置するか、デザインしながら描くことがポイントです。
▲【左】手前の建物の壁に、古いレンガのディテールを描き込みましょう/【右】壁全体をレンガで埋め尽くすと、ここではうるさく感じられます
▲【左】一例として、三分割法(※2)を応用したディテール表現を紹介します。壁を三分割し、レンガの密度に変化を付けるとすっきりします/【右】もう1つ作例を紹介しましょう。見る人の視線が、画の中の焦点(Focal Point)へ自然と導かれるようにディテールを配置すると、画面が見やすくなります
※2 三分割法については、連載 第3回で解説しています。
今回のレッスンは以上です。第15回も、ぜひお付き合いください。
(第15回の公開は、2018年3月末〜4月頃を予定しております)
プロフィール
-
伊藤頼子
ビジュアルデベロップメントアーティスト
三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。2017年以降は拠点をロサンゼルスに移し、現在はアートディレクターとしてアニメーション長編映画を制作中。
www.yorikoito.com