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No.20:人工の光を使い、ライティングをデザインする

No.20:人工の光を使い、ライティングをデザインする

こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。第19回では天気や時間帯による自然光のちがいと、その使い分けによって場面やそこに登場する人物の感情を表す(ストーリーテリングをする)方法について解説しました。今回は人工の光を使ったストーリーテリングについて学びましょう。

TEXT&ARTWORK_伊藤頼子 / Yoriko Ito
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

Lesson42:人工の光を使い、屋内と屋外をライティングする

人工の光は、自然光よりも自由度が高く多様なライティングができる便利なツールです。特に真上、または斜め上から当たる舞台照明のような強いスポットライトは、ドラマティックな展開のストーリーに向いています。夜、または暗い室内で強いスポットライトを使うと、画面のコントラストが高くなり、劇的な緊張感を表現できます。画の中の焦点(Focal Point)に対し、見る人の視線を誘導する効果もあります。一般的な照明はもちろん、自動車のヘッドライトなどを使っても同様の効果を出せます。人工の光ではありませんが、月明かりや木漏れ日なども使えます。シーンの状況に応じて上手く使い分け、より良い画面をデザインできるよう工夫しましょう。

▲天井にある長方形の面光源を使い、画面を見る人の視線をビリヤードのテーブルへ誘導しています。プレイヤーである男性がFocal Pointになっており、高いコントラストによって男性の真剣さと緊張感が表現されています


▲『The Conformist(邦題:暗殺の森)』(1970)(ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。この女性が初めて登場するシーンで、天井の照明を使ったライティングが場面に緊張感を生み出しています


▲ヘンリー・セリック(Henry Selick)監督の『Shadowking』のために筆者が描いたビジュアルデベロップメント(この作品はキャンセルされました)。雨の中、暗い路地にたたずむ2人の主人公を、上からのスポットライトが劇的に照らしています。このライティングにより、2人の存在がさらに強調されています


▲ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の『Zootopia(邦題:ズートピア)』(2016)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。様々な方向からのサーチライトによって悪者を照らし、画面に明確な明暗(ハイコントラスト)をつくることで、悪者が逮捕されるシーンの緊張感を高めています


▲『Shadowking』のために筆者が描いたビジュアルデベロップメント。室内で眠る子供たちを、画面の外にある光源(月の光)が照らしています。光源はあえて見せず、減衰した弱い光を当てることで、画面のコントラストを低くして柔らかい印象のシーンにしています


▲『Shadowking』のために筆者が描いたビジュアルデベロップメント。人物たちの前方から自動車のヘッドライトを当てることで、画面の左右のコントラストを高めています。自動車のヘッドライト(嫌な眩しさ)が、シーンの不穏なムードを強調しています


▲『The Third Man(邦題:第3の男)』(1949)(キャロル・リード(Carol Reed)監督)の中のショット。後方から近付いてくる自動車のヘッドライトが男性を照らすことで、シーンの緊張感を演出しています

Lesson43:自然光を使い、舞台照明のようなライティングをする

Pool of Light(光が溜まる場所)をつくることで、自然光であっても舞台照明のようなライティングが可能となります。昼間の自然光を使うと、緊張感は控えめにしつつドラマティックな画づくりができるため、この手法はよく使われます。

▲森の中のシーンです。人馬のいる位置に木漏れ日を集めることで、画面を見る人の視線を誘導しています


第17回第18回でも紹介した手法を使っています。建物のキャストシャドウを使ってFocal Pointとなる犬に一条の光をあてることで、画面を整理し、見る人の視線を誘導しています


▲『The Last Emperor(邦題:ラストエンペラー)』(1987)(ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。画面の左から強い自然光をスポットライトのように当てることで、Focal Pointとなる人馬を強調しています





今回のレッスンは以上です。第21回も、ぜひお付き合いください。
(第21回の公開は、2018年10月を予定しております)

プロフィール

  • 伊藤頼子
    ビジュアルデベロップメントアーティスト

    三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。2017年以降は拠点をロサンゼルスに移し、現在はアートディレクター・ビジュアルデベロップメントアーティストとしてアニメーション長編映画を制作中。
    www.yorikoito.com
    www.artstation.com/yorikoito

本連載のバックナンバー

第1回∼第13回まではこちらで総覧いただけます。
No.14:画の中のスケールとディテール
No.15:ダイナミックな動きのある画を描く
No.16:イメージづくりに使うレイアウトコンポジション
No.17:ライティングデザイン
No.18:ライティングデザインによる感情表現
No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする

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