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No.21:ライティングと天候を使い、ムードを表現する

No.21:ライティングと天候を使い、ムードを表現する

こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。今回は、ライティングと天候を使い分け、様々なムードを表現する方法を学びましょう。第17回で説明したように、ライティングにはリーダビリティー(Readability) とストーリーテリングという、2つの役割があります。ストーリーテリング、すなわちショットのムードや登場人物の感情を表すときには、ライティングに加え、晴天・雨・雪などの天候も使い分けると表現の幅が広がります。 

TEXT&ARTWORK_伊藤頼子 / Yoriko Ito
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

Lesson44:逆光を使い、ムードを表現する

画面の中の焦点(Focal Point)を逆光で照らすと、表情やディテールがよく見えない一方で、シルエットや輪郭線が際立ちます。さらに空気感が出るため、神秘的、あるいはロマンチックなムードを表現できます。あえてFocal Pointのディテールを見せないことで、観る人の想像力をかきたて、惹きつける効果もあります。

▲『The Last Emperor(邦題:ラストエンペラー)』(1987)(ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。画面の左上からの逆光によって、Focal Pointとなる人物の輪郭線が輝き、空気感が出ることで、神秘的なムードを表現しています


▲『マダガスカル3』(2012)のために筆者が描いたビジュアルデベロップメント。路地に差し込む夕日が、Focal Pointとなるキャラクターの輪郭線を際立たせ、ロマンチックなムードを表現しています。夕日による逆光は、画面全体を暖かなムードにする効果もあります


▲『The Third Man(邦題:第3の男)』(1949)(キャロル・リード(Carol Reed)監督)の中のショット。逃げる男のシルエットが逆光によって強調され、顔やディテールが隠されることで、画面を観る人に「誰だろう?」という興味をもたせる効果があります

Lesson45:霧やモヤを使い、ムードを表現する

逆光と同様、霧やモヤも、Focal Pointのディテールを隠しシルエットを際立たせる効果があるため、ミステリアスなムードを表現できます。また霧やモヤを使うと画面をシンプルに整理できるため、第10回で紹介したレイヤリング(Layering)を使ったレイアウトデザインにも応用できます。

▲ヘンリー・セリック(Henry Selick)監督の『Shadowking』のために筆者が描いたビジュアルデベロップメント(この作品はキャンセルされました)。霧によって全てを見せないことで、ミステリアスさや不気味さを表現しています 


▲筆者のオリジナル作品。Focal Pointの象を霧で隠し、シルエットだけを見せることで、ミステリアスなムードを表現しています。このように、霧やモヤを使うと見せたくないものを隠すことができます。なお、この作例では遠くに位置するものほど明度を高くすることで、画面をシンプルなレイヤーへと整理し、遠近感を出しています

Lesson46:天候を使い分け、ムードを表現する

ライティングに加え、晴天・雨・雪などの天候も使い分けると表現の幅が広がります。

▲筆者のオリジナル作品。静かに降る雪が、ロマンチックなムードを表現しています


▲筆者のオリジナル作品。激しい吹雪のような極端な天候は、気持ちの乱れ、困難な状況、ネガティブなムードを誇張します

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Lesson47:逆光とほかの光を組み合わせ
ムードを表現する

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