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No.21:ライティングと天候を使い、ムードを表現する

No.21:ライティングと天候を使い、ムードを表現する

Lesson47:逆光とほかの光を組み合わせ、ムードを表現する

強い逆光(リムライト)に、セカンドライトやサードライトを組み合わせ、Focal Pointを表現してみましょう。光の組み合わせ方によって、画面のムードやリーダビリティを調整することができます。このライティングは、主にキャラクターや人物を見せるショットに使われます。

▲ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の『Zootopia(邦題:ズートピア)』(2016)の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。画面の左後方からの白色のライトに、右下方からの赤色のライトが組み合わさっており、赤色のライトによってキャラクターと状況の恐ろしさが誇張されています


▲『The Last Emperor』の中のショットを筆者が引用目的で模写したものです。人物の後方にある窓からの光(リムライト)が、椅子と人物の輪郭線を綺麗に際立たせています。さらに画面右からのセカンドライトが人物の顔を照らし、画面のリーダビリティを高めています

Lesson48:サムネイルを描き、ライティングの可能性を探る

これまでに学んだことを意識しながら、同じショットのサムネイルを、いくつかの異なるライティングで描き、その可能性を探ってみましょう。サムネイルを描くときには、画面のデザインとリーダビリティに気を配ることが大切です。

▲この線画のライティングの可能性を探ってみます


▲サムネイルを描くときには、線画の細かいディテールにとらわれず、画面の要素を5〜6個のシンプルかつ大まかな明暗の塊でとらえ、リーダビリティに注意しつつデザインすることが大切です。様々なアイデアを試し、最適なライティングを探りましょう


▲先に紹介した3つのサムネイルの中から、1番上のサムネイルを選び、さらにディテールを描き込んでみました。この段階でも、元のサムネイルの明暗と、リーダビリティは常にチェックしましょう

実写映画の撮影監督から学ぶ

実写映画の撮影監督はシネマトグラファー(Cinematographer)と呼ばれ、卓越したライテイングの技術をもち、実写映画におけるライティングデザインを監督します。映画の名監督の多くは、自らの専属と呼べるくらい信頼を置いた撮影監督と共に仕事をしています。以下に、代表的な撮影監督と監督の組み合わせを記します。

● ロジャー・ディーキンス(Roger Deakins)撮影監督 /コーエン兄弟(Coen Brothers)監督
● コリン・ワトキンソン(Colin Watkinson)撮影監督/ターセム・シン(Tarsem Singh)監督
● ヴィットリオ・ストラーロ(Vittorio Storaro)撮影監督/ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督
● ロバート・D・イェーマン(Robert D. Yeoman)撮影監督/ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)監督
● ヤヌス・カミンスキー(Janusz Kamiński)撮影監督/スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督
● ロバート・リチャードソン(Robert Richardson)撮影監督/クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)監督、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督、オリバー・ストーン(Oliver Stone)監督
● エマニュエル・ルベツ(Emmanuel Lubezki)撮影監督/テレンス・マリック(Terrence Malick)監督
● クラウディオ・ミランダ(Claudio Miranda)撮影監督/アン・リー(Ang Lee)監督
● グレッグ・トーランド(Gregg Toland)撮影監督/オーソン・ウェルズ(Orson Welles)監督

優れた撮影監督は、映画業界における制作側のスターと呼べる存在です。彼らが手がけた映画を見て、ライティングデザインを学びましょう。




今回のレッスンは以上です。第22回も、ぜひお付き合いください。
(第22回の公開は、2018年11月を予定しております)

プロフィール

  • 伊藤頼子
    ビジュアルデベロップメントアーティスト

    三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。2017年以降は拠点をロサンゼルスに移し、現在はアートディレクター・ビジュアルデベロップメントアーティストとしてアニメーション長編映画を制作中。
    www.yorikoito.com
    www.artstation.com/yorikoito

本連載のバックナンバー

第1回∼第13回まではこちらで総覧いただけます。
No.14:画の中のスケールとディテール
No.15:ダイナミックな動きのある画を描く
No.16:イメージづくりに使うレイアウトコンポジション
No.17:ライティングデザイン
No.18:ライティングデザインによる感情表現
No.19:自然光を使い分け、ライティングをデザインする
No.20:人工の光を使い、ライティングをデザインする

その他の連載