ゲームエンジンでアプリを開発する上で、バージョン管理は必要不可欠なものですよね。そこで今回は、Unreal Engine(以下、UE)での開発におけるバージョン管理について、簡単な実践を交えつつご紹介します!

環境としてはUE 5.6とDiffプラグインを利用し、Diffプラグインと接続できるバージョン管理ツールの比較もしてみました。みなさんのこれからのUE開発にお役立ていただければ幸いです。

本誌でのご紹介後、Epic Gamesから「Lore」が発表されました! 大容量ファイルに強い新しいバージョン管理システムで、しかも無料のオープンソース。重たいデータも快適に扱えるとのことで、要チェックですね。

記事の目次

    黒河 建

    ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
    X:@BD_SoftwareDiv

    ※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.333(2026年5月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。

    INFORMATION

    Unreal Engine (アンリアルエンジン)


    Epic Gamesが開発するリアルタイム3D制作プラットフォーム。ゲーム開発を中心に、映像制作、建築ビジュアライゼーション、シミュレーションなど幅広い分野で利用されている。

    高品質なグラフィックス、Blueprintによるビジュアルスクリプティング、豊富なアセットやツールにより、初心者からプロまで効率的にコンテンツ制作を行うことが可能だ。

    www.borndigital.co.jp/product/unreal-engine

    Step① UE開発バージョン管理、どうしてる?

    Unreal Engineで開発していると、必ず考えるのが「バージョン管理どうする問題」だと思います。ソースコードを書いている方であれば、とりあえず「まあGitでいいか」となりがちですよね。ソースコードでの開発をしている場合はGitとの相性はとても良いです。変更箇所の差分の確認やレビューもしやすいので、馴染み深いGitでの管理を選択される方も多いと思います。

    ですが、UE開発は普通のソフトウェア開発と少し事情が異なり、「.uassetデータをどのように扱うか」が悩ましいところです。

    ▲Gitは今では標準的なバージョン管理ツールで、ソースコードとの相性は抜群です。簡易的ですがバージョン管理のながれとしては、Gitのバージョン管理を利用し、GitHubなどのリモートリポジトリで共有するのが一般的かと思います
    ▲UEでは、Blueprintなどの使用されるアセットのほとんどが「.uasset」という形式で保存されます。そしてこれは、バイナリデータなんです
    ▲コード部分に関してはGitは非常に快適です。変更履歴が追える、誰がいつ何を変更したかわかる、Pull Requestでレビューが行える、特にチーム開発ではこの恩恵はかなり大きいですよね。クラウド上のGitホスティングサービス(GitHubなど)には容量制限があり、テクスチャをはじめとする膨大なデータは、Gitの管理対象から外して別の方法で共有する場面も多いと思います
    ▲「.uasset」のようなバイナリデータは「差分が見えない」「マージができない」「コンフリクトの解決が困難」といった状況になります。そのため、「どのノード構成が変わったのか」「どの変数が変わったのか」などがGit上ではわかりません

    Step② UEのDiffツールって何?

    普段は差分が確認できない「.uasset」や「.umap」などのバイナリファイルを、エディタ上で確認可能にする便利ツールがDiffツールです。Step①で見たように、バイナリのままではGitでの差分確認が難しいからこそ、このツールが重要になってきます。

    UEを触り始めたばかりのころって、「Diffツールって何?」ってなりますよね。正直、最初はちょっとわかりにくいです。Diff機能が具体的にどのようなもので何ができるのか、検証した結果をお見せしていきます。

    ▲まず、差分が確認できるバイナリとして、Blueprintがあります。BlueprintではEventGraphやプロパティなどの変更点を視覚的に確認することができました。通常のBlueprintだけでなく、「Animation Blueprint」「Widget Blueprint」「Level Blueprint」の差分も見ることができます
    ▲一方で、Blueprintと同じく「.uasset」として扱われるマテリアルですが、こちらはグラフの差分をUE上で視覚的に確認することはできませんでした。Blueprintと同じ方法で確認しようとすると、UE画面ではなく外部のDiffツールが起動し(画像は「P4Merge」というツール画面)、アセットの内容がテキストとして比較表示されるかたちとなります。そのため、Blueprintのように変更点を視覚的に確認することは難しくなっています
    ▲Diff機能を利用して差分を確認するには編集前のデータが必要となるため、バージョン管理との連携が必須となります。連携方法は、[Tools→Change Revision Control Settings…→Source Control Login(Revision Control Login)]から行います
    ▲Diff機能と接続できるバージョン管理ツールは「Subversion」「Git」「Plastic SCM(現・Unity Version Control)」「Perforce」です

    Step③ バージョン管理ツールを比較してみよう!

    Diffと連携できる5つのツールを、実際に試しながら比較してみました。それぞれに特徴があり、プロジェクトの規模やチーム構成によって向き不向きがあります。

    UE開発で重要になるのは、コード管理のしやすさだけではありません。.uassetや.umapといったバイナリデータを安全に扱えるか、差分確認やファイルロックに対応しているか、導入と運用のハードルが高すぎないか、といった点も選定のポイントになります。そうした観点を踏まえつつ、ひとつずつ見ていきましょう!

    Subversion

    ▲昔から使われている中央集中型のバージョン管理システムです。しくみはシンプルで、「サーバに全ての履歴があり、そこに接続して作業する」というスタイル。UEでは標準でサポートされており、ファイルロックも可能です。そのため、BlueprintやLevelのようなバイナリアセットも安全に扱えます。ただし、ブランチ運用はやや扱いづらく、大規模な並行開発には向きにくい面もあります。最近では採用例は減ってきていますが、「シンプルさ」という点では今も選択肢のひとつです

    Git

    ▲現在のソフトウェア開発では事実上の標準ともいえる分散型バージョン管理システムです。テキストベースのコード管理には非常に強く、C++中心の開発とは相性が良いです。ただし、UEのようにバイナリ資産が多い環境では工夫が必要になります。Git LFS(Large File Storage)を使うことで大きなアセットも扱えますが、ロック運用はやや弱めです。UE内ではGitプラグインが「β(Beta)」として提供されており、基本的な連携やDiff機能は利用可能です。個人制作や小規模チーム、あるいはC++主体の開発では有力な選択肢ですが、大規模なアセット中心プロジェクトでは注意が必要です

    Plastic SCM(現・Unity Version Control)

    ▲ゲーム開発を意識して設計されたバージョン管理ツールです。中央集中型と分散型の両方の特徴をもつハイブリッド構造で、ブランチ管理が非常に柔軟なのが特徴です。ファイルロックにも対応しており、UEのバイナリアセットとも相性が良いです。Perforceほど重厚ではないものの、Gitよりはゲーム向きという印象です。中規模チームやインディー開発では、バランスの良いシステムと言えます

    Perforce

    ▲ゲーム業界で最も広く使われているバージョン管理ツールです。AAAスタジオではほぼ標準と言っていい存在です。中央集中型で、バイナリファイルの扱いに非常に強く、ファイルロック運用が前提になっています。BlueprintやLevelを多人数で扱うUE開発との相性は抜群です。UEとの統合も安定していて、Diff機能や履歴確認もスムーズに行えます。その代わり、サーバ構築や管理のハードルはやや高めです。個人開発というよりは、中〜大規模チーム向けの選択肢と言えるでしょう

    Diversion

    ※DiversionはUE 5.7までサポートされています(2026年6月時点)。UE 5.8向けプラグインは近日公開予定です

    ▲Unreal Engine向けに設計された比較的新しいバージョン管理サービスです。専用プラグインを導入することで、UEエディタと連携が可能となります。Blueprintやアセット中心の運用を前提に設計されているため、初心者にも扱いやすいと思います。また、プランによっては100GB程度まで利用可能なので、これからバージョン管理を始める人、小〜中規模のプロジェクトに対しておすすめなツールとなっています。外部ツールにはなりますが、Fabにあるプラグインを利用するとDiffと連携することができます

    バージョン管理ツールの比較

    ▲UE5のバージョン管理は、「何をどう作るか」で選び方が変わってきます。バイナリアセットが多く、大人数で開発するならPerforceが安心ですし、少~中人数ならDiversionやPlastic SCM、個人制作やC++中心ならGitでも十分やっていけます。一番大事なのは「自分たちのプロジェクトに合っているかどうか」となります。本記事が少しでも参考になれば嬉しいです!

    次回予告|Red Giant

    エフェクトを作成する際に「重いかも」と感じたことはありませんか?リッチにエフェクトを盛るほど、プレビューがカクついたり、書き出しに時間がかかったりと、制作のテンポが落ちがちですよね。

    次回は、Red Giantでエフェクトを作成する際にできるだけ快適に使うコツを、できるだけシンプルに紹介していきます!

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.333(2026年5月号)


    特集:CGインディーズ仕事術
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2026年4月10日

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    TEXT_中島真之介/Shinnosuke Nakajima(ボーンデジタル)、黒河 建/Takeru Kurokawa(ボーンデジタル)
    EDIT_藤井紀明/Noriaki Fujii(CGWORLD)、高橋拓也/Takuya Takahashi(CGWORLD)