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Vol.2:続・AEユーザーのためのNuke的思考

Vol.2:続・AEユーザーのためのNuke的思考

具体的なマルチチャンネルの使い方

前項までAEとの比較を中心にNukeを見てきたが、やはりそれではAEの代わりをするためのものになってしまう。AEにはAEの良さがあるし、NukeにはNukeの良さがあるはずだ。つまり、「AEにおける、あのオペレーションはNukeではどうやるの?」では、AEの枠に収まった使用に止まってしまうのではないだろうか?

"Nukeならではの使い方"とは、どういうものなのか? そのひとつはノード・オペレータごとにマスクを適用できるという点が挙げられるだろう。例えば、今回用いた、作例の画像には「RGBMask」という名前のチャンネルがある。これは、ティーポットとキューブ上のオブジェクトを別々に扱うためのマスクだ。そこで、このRGBMaskを用いて、ティーポットだけに[ColorCorrect]の効果を適用してみたい。

AOVsの例

AOVsのようなマルチチャンネルのフォーマットを使えば(事前に設定しておく必要はあるのだが)、マスク等の各要素を個々にレンダリングする必要はないし、ファイルの数を抑えることができるので管理しやすくなる。RGBMaskは実に便利なフォーマットであり、作例のように「 r 」がティーポット、「 g 」がキューブオブジェクトといった具合に1枚の画像で最大3つのマスクが取得可能だ
 

まず、オリジナルの[Read]に[ColorCorrect]をコネクトし、適当に色味を変えてみる。当然ながら、このままでは、画像全体にカラコレが適用されてしまう。そこで、NodeGraph上で[ColorCorrect]ノードをよく見てみると、アイコンの右側に引き出し線らしきものが確認できる。これを引っ張り出すと、「mask」という表示が確認できるはずだ。ココに[ColorCorrect]の効果をマスキングするための画像(作例では、RGBMask)をコネクトしてやればいいのだが、[ColorCorrect]の場合はプロパティでRangesタブに移ると、そのコネクトしたmaskを確認することができる。この場合、ティーポットのマスクはRGBMaskのredチャネルなので、「RGBMask.red」を指定すれば[ColorCorrect]の効果がティーポットに限定される。

[ColorCorrect]を単純に繋げた例

単純に[ColorCorrect]をコネクトするだけでは、画像全体にカラコレが適用されてしまう

maskをソースにコネクト

エフェクトの影響範囲を特定部位に限定させたい場合は、まず[Merge]からmaskのインプットを引っぱり出し、ソースにコネクト

特定オブジェクトにのみ[ColorCorrect]を適用させた例

その上で、マスクとして「RGBMask.red」を指定する
 

このように、各ノード・オペレータにはその効果をマスキングするためインプットが準備されている。AEでも調整レイヤーやプリコンポーズを用いれば似たようなことは可能である。しかし、マルチチャンネルを用いてスマートに処理できるのは、まさにNukeの特長と言えよう。
また、maskのインプットはだいたいノード・オペレータの右側に付いているため、各ノードをNodeGraphで横に伸びるようにコネクトしていくと、maskのインプットを隠してしまうので、タテに繋ぐか、[dot]を用いてインプットを隠さないようにすることをお勧めする。

「dot」なし

横一列に繋いでしまうと、インプットが隠れてしまうため非常に扱いづらい

「dot」あり

Nukeのノードグラフが縦方向に伸びているのはこのためだ。ノード接続が視認しにくい時は「dot」を用いると整理がしやすくなる
 

今回は、コンポジションの仕様を設定する方法と、OpenEXRフォーマットによるマルチチャンネルの扱い方を解説したが、いかがだっただろうか? 読者諸兄の一助になれば幸いだ。
さて、次回のテーマは、先日Nukeユーザー有志たちで「Nuke勉強会」を開催したのだが、スペシャル・ゲストとして講演してくれた元アニマル・ロジックのコンポジット・アーティスト山口幸治氏直伝の「Nukeにおけるコンポジットワークの基礎」を紹介しよう。乞うご期待!

TEXT_テラオカマサヒロ(Galaxy of Terror)

株式会社ギャラクシーオブテラーにてヴィジュアル・エフェクツ・ディレクターとして活躍中。
実写合成からフルCGまで、幅広いVFX制作に携わっている。
tiraoka.blogspot.com

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