今月の本誌では、セガのキャラクターを用いたCGの基礎知識が特集されています。本特集に関連して、最近刊行された一風変わった数学書を紹介します。ゲームやCGをはじめ、「応用数学」の屋台骨としての線形代数が解説された一冊です。
今月の一冊

『セガ的 基礎線形代数講座』
発売日:発売中
定価: 2,970円(本体2,700円+税10%)
総ページ数:272ページ
著者:山中勇毅
著者からひと言!
本書は、よくある「3DCGでの使い方に特化した数学の解説本」ではなく、CGや生成AIをはじめとする様々な技術の基礎をなす線形代数の学び直しのための本です。応用のゴールとして回転行列やクォータニオンなどを「どう使うかではなく、どうしてそうなるのか?」ということをきちんと理解することを目的として、数学的な証明も含めて解説する内容となっています。
POINT 01 「セガ」の社内勉強会のためのテキスト
本書は、セガ社内にて行われた勉強会のテキストがベースとなっています。著者を中心にテキストは1年以上かけて制作されており、勉強会には40名もの参加があったとのこと。その経緯については、近日刊行予定の『数学がゲームを動かす!』(三宅陽一郎・清木昌/著、日本評論社)に掲載される著者インタビューでも、詳しく語られています。本書刊行のきっかけにもなった書籍です。

POINT 02 非数学者だから見える「線形代数」への最短経路
線形代数の本は、数学者(大学教員)によって書かれることが多いですが、著者は会社員であり技術者です。「大学を卒業すれば数学なんて必要ない」と思う方も多いかも知れませんが、実はそうとも限りません。著者はゲーム開発の現場で、長年数学を使い続けてきました。そんな著者が線形代数をどう学び直すのがよいかと考え、ゼロから再構築。異色のテキストに仕上がりました。

POINT 03 本書でしかお目にかかれない図解や表現の数々
本書の最終目的地のひとつが、ゲームにおけるキャラクターの回転などに用いられる「クォータニオン(四元数)」の理解です。「どう使う?」ではなく「どうしてそうなる?」を主眼にした本書では、どのような方法で語られたでしょうか……? それ以外にも、さすが映像を扱っている会社の中の人だと思わせる、普通の数学書ではあまりお目にかかれない図解や解説が本書の特徴のひとつでもあります。


ボーンデジタル書籍 売れ筋ランキング
(集計期間:2025年2月1日~2月28日)

1位
『Autodesk Mayaトレーニングブック 第4版』急上昇
¥7,700
IMAGICA GEEQ
shop.cgworld.jp/shopdetail/000000000574

2位
『ウェス・アンダーソンの世界展』新刊
¥6,600
ヨハン・キアラモンテ、カミーユ・マチュー
shop.cgworld.jp/shopdetail/000000001216

3位
『Unreal Engine 5で極めるゲーム開発』
¥5,940
湊 和久
shop.cgworld.jp/shopdetail/000000001094
- 4位
『スカルプターのための美術解剖学』
¥5,500 アルディス・ザリンス、サンディス・コンドラッツ
- 5位
『スカルプターズ・ラボ02』新刊
¥2,640 スカルプターズ・ラボ編集部
- 6位
『filmmaker's eye 第2版』
¥3,960 グスタボ・メルカード
- 7位
『カラー&ライト』
¥4,180 ジェームス・ガーニー
- 8位
『スコット・ロバートソンのHow to Draw』
¥4,400 スコット・ロバートソン
- 9位
『Vision ストーリーを伝える:色、光、構図』
¥4,400 ハンス・P・バッハー
- 10位
『CGクリエイターになるためのポートフォリオ制作の教科書』急上昇
¥2,420 佐藤 智幸
今月のふり返り
時期的に学校での採用品書籍の搬入が始まったこともあり、『Autodesk Mayaトレーニングブック 第4版』と『CGクリエイターになるためのポートフォリオ制作の教科書』の売れ行きが急上昇しています。特に、通称『Mayaトレ』は2006年刊行以来改訂を重ねて20年、現場で役立つ知識を盛り込んだロングセラー書籍です。

CGWORLD 2025年5月号 vol.321
特集:セガのゲームで学ぶ3DCGの基礎
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2025年4月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_入江孝成(日本評論社)
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada