工程を細かく分業せず、ひとりのアニメーターが1カットのレイアウトから演技、アクション、フェイシャルやセカンダリまでをトータルで担うYAMATOWORKS。大きな裁量と責任を、ディレクションと制作がどう支え、若手の成長につなげているのか? YAMATOWORKSの若手を代表する3Dアニメーションディレクターの奥田芽椰氏、3Dアニメーターの角田 凌氏、3D制作デスクの小林海斗氏に話を聞いた。
『FREEDOM』の絵コンテから実践的なカット制作をスタート
奥田氏と角田氏は2020年にYAMATOWORKSへ合流した。奥田氏はシステムエンジニアからの転身、角田氏は専門学校でMayaを学んだ新卒入社で、LightWaveはほぼ未経験だったという。アニメーション研修では、アニメーション部門を率いる坂本隆輔氏のチェックを受けながら、『FREEDOM』の絵コンテを基にカットを制作。研修後は実案件に入り、LightWaveによるカットワークを身につけていった。
「最初から好きに動かすのではなく、まずは先輩に付きっきりで見てもらい、LightWaveの操作と制作手順を覚えました。比較的レイアウトをとりやすいカットから始め、少しずつ難しいカットを任せてもらえるようになりました」(角田氏)。
3Dアニメーター
本格的に自分のカットをもつようになったのは『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』からだったという。奥田氏は先輩のフィードバックを受けながら約10カットを経験した後、ガンダムが二刀流で崖を下る重要なカットを任された。
「粘り強く取り組むところを見て、先輩がチャレンジとして作業を割り振ってくれたのだと思います。時間はかかりましたが、最後まで自分で仕上げました。1年目によくこのカットを任せてもらえたなと、今でも思います」(奥田氏)。
3Dアニメーションディレクター
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LightWave上の修正前 -
修正後。先輩からのフィードバックを受け、正面から見たシルエットや腕、ビーム・サーベルの構えを整理。ゆっくりと歩く動きは勢いでごまかしが利かないため、機体の重量感とキーポーズの説得力を詰めていった
制作職の小林氏も、最初は先輩と共にプリビズ案件を進行し、アニメ制作の工程を覚えるところから始めた。その後、3D制作進行として社内カットの回しを任され、カットの進行やチェックのタイミングを自ら組み立てるようになった。
「制作の場合は、進行やデスクといった役割ごとに責任範囲が示されます。その範囲内で、どの順番でカットを回すか、いつチェックへ上げるかは任せてもらえる。職種にかかわらず、自主性を重んじる会社だと思います」(小林氏)。
3D制作デスク
絵コンテの余白を動きに変え、制作がその時間をつくる
『片田舎のおっさん、剣聖になるII』で、角田氏はフィッセルとベリルの模擬戦を担当。絵コンテに示されていたのは、剣を数回交えてつばぜり合いをするというおおまかな指示だけだった。作打ちで作品のテンションと避けるべき表現を共有した後、具体的な殺陣、キーポーズ、カメラワークは角田氏がLightWave上でプランニングしている。
初期テイクには激しく飛び回る動きや回転斬りも盛り込まれていたが、奥田氏とのすり合わせを経て作品の世界観に合わせて整理。奥田氏はプランをつくり直すのではなく、止め絵のポーズや表情、シルエット、アクションの間を中心にチェックバックした。
「アクションのポイントが押さえられていれば、そこへ至る道筋はできるだけアニメーターに任せます。代表の森田(修平氏)も、つくり手の個性が出ているものを大切にしているので、細かく縛って勢いを消すのではなく、上がってきたテイクの良さをどう伸ばすかを考えています」(奥田氏)。
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調整前のモデル。形状としては自然だが、カメラビューでは狙った表情やシルエットになりきっていない -
カメラビューで作画的なシルエットになるよう、顔や髪を大胆に変形。別角度では形状が崩れて見えるが、実際のカメラからは自然な画として成立している
©佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ/SQUARE ENIX・「片田舎のおっさん、剣聖になるII」製作委員会
個性を活かして伸ばす『モンスト』のアクション
【獣神化・改】ネオ SPECIAL MOVIE【モンスト公式】でも、角田氏がアニメーションを担当し、奥田氏が3Dアニメーションディレクターを務めた。ネオがリングを飛ばして戦うカットは、制作途中でアクションの方向性が変更されたこともあり、絵コンテをそのまま再現するのではなく、角田氏が動きやタイミングを組み立てている。
「勢いと格好よさが出ていれば自由にやっていいと言ってもらえたので、かなり好きにプランニングしました」(角田氏)。
初期テイクを見た奥田氏も、動きのリズムや勢いを活かす方針でディレクション。プランを大きく変えるのではなく、止めのポーズや表情、アクションの間を中心にブラッシュアップしていった。
「自分の意図を汲んだ上で、『この方向性で良い』と伸ばしてもらえたので、気持ちを乗せたままつくることができました。この経験は、その後のアクションカットへの自信にもつながっています」(角田氏)。
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角田氏による初期プラン。動きやカメラワーク、リングの軌道まで含めてアクションを組み立てた -
奥田氏のチェック反映後。角田氏のプランを活かしつつ、ポーズや構図、リングの見せ方を整理し、画面の勢いを高めている
1カットを担う責任と、それを支える制作
同社ではシンプルなリグを使い、モーションキャプチャに頼らず、フェイシャルやセカンダリも細かく分業しない。ひとりのアニメーターが1カットのレイアウトから演技、アクション、フェイシャルやセカンダリまでを一貫して担うため、判断や個性が画面へ直接表れる一方、最後まで成立させる責任も大きい。
「責任はありますが、エフェクトのガイドまで自分で提案し、“このカットは自分がつくりました”と自信をもって言えます」(角田氏)。
その裁量を、制作側はスケジュールとワークフローから支える。小林氏はカットの進捗を管理しながら、案件ごとにチェック工程や提出フローを調整し、現場が動きやすい制作環境を組み立てている。
「アニメーターがアニメーション以外のことを考えずに済む状態をつくりたい。制作側で先方との調整や問題を引き受け、現場ではそれを感じさせないのが理想です。今はスケジュールを見た時点で起こりそうな問題を予測し、先回りして潰せるようになってきました」(小林氏)。
奥田氏は現在、アニメーションだけでなくモデリングやルックデヴ、後輩育成までを俯瞰する立場へ進み、角田氏は重要度の高いカットを任されることで成長を実感している。小林氏も制作進行から3D制作デスクへと役割を広げてきた。YAMATOWORKSの「任せる」文化は、アニメーターと制作の双方に、自ら考えて仕事を主導する力を育てている。
求人情報
株式会社YAMATOWORKS
yamato-works.com
■募集職種
・3Dアニメーター(新卒・中途)
・ルックデヴアーティスト(新卒・中途)
・3Dモデラー(新卒・中途)
・制作進行(新卒・中途)
TEXT_ 藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota