ゲーム開発の大規模化・長期化が進む中、プラチナゲームズは今、その根幹をアップデートしている。一方で、緻密に設計されたアクションと、職種を越えてゲームを面白くしていく文化は変わらない。
現在の開発思想から、“手触り”を磨くアニメーション制作、そして高速なイテレーションを支えるマウスコンピューターのクリエイター向けPC「DAIV」の活用まで、3人のキーパーソンに聞いた。
プラチナゲームズ株式会社
2006年設立。ゲームソフトの企画・開発を手がけ、アクションゲームを中心に国内外のパートナーと多彩なタイトルを開発。『NINJA GAIDEN 4』ではコーエーテクモゲームスのTeam NINJAと共同で開発を手がけた。
www.platinumgames.co.jp
大規模化するゲーム開発変わるプラチナのつくり方
現在のプラチナゲームズでは、AAからAAAクラスに相当する中~大規模タイトルを中心に、複数のプロジェクトが並行して動いている。開発規模が大きくなるにつれ、同社ではゲームのつくり方そのものも見直してきた。
クリエイティブオフィサー/プロデューサー
プラチナゲームズ株式会社
クリエイティブオフィサー兼プロデューサーの中尾裕治氏が挙げるのが、制作へ入る前に目的や方向性をより明確にすることだ。かつては実際につくって試し、結果を見ながら方向を探る実験的な開発も珍しくなかった。
しかし、関わるスタッフや予算が増えれば、大きな手戻りによる影響も比例して増していく。「端的に言えば、“ノリで何かを入れる”みたいなことを徹底的にやめようとしています」(中尾氏)。
もちろん、実験や挑戦そのものをなくすわけではない。何を試すのか、その結果として何が起こり得るのかを可能な限り想定し、失敗した場合の手段まで考えた上で制作へ進む。ゲーム開発の規模に合わせ、挑戦の仕方そのものを変えようとしているのである。
こうした方針は、現場のクリエイターにとってもメリットが大きい。作品が「誰に、何を届けるためのものなのか」が共有されていれば、新しいアイデアがその目的に合っているかを判断しやすい。疑問があれば、単なる感覚ではなく理由をもってディレクション側へ意見を返すこともできる。
開発管理室 室長
プラチナゲームズ株式会社
同時に進めているのが、プロジェクトマネジメントの強化と、制作手法の標準化・平準化だ。開発管理室 室長の村上 学氏は、「毎回プロジェクトごとに試行錯誤しなくてもいい部分は、できるだけ共通化していきたい」と説明する。
再利用できる技術やアセット、管理方法を整え、一定の品質へ到達しやすい基盤をつくる。それによって、どの程度までリスクを取れるかという判断もしやすくなる。守りを固めるのは、ゲームづくりを画一化するためではなく、むしろ安全に開発できる範囲が見えることで、本当に挑戦すべき部分へ時間と人を集中できるという考えだ。
“100人の脳みそ”で磨くアクションゲームの手触り
開発手法を変える一方で、プラチナゲームズが残していきたい文化もある。それが、担当領域に閉じず、スタッフ全員がゲームそのものについて考える姿勢だ。「100人の脳みそで一緒に考えて、ひとつのものをつくった方が、最終的には良いものになると思っています」と中尾氏は話す。
ディレクターは作品として進むべき方向を示すが、具体的な解法まで全て決めるわけではない。例えばアニメーションなら、ゲームとして満たしてほしい要件を提示し、具体的な動きはアニメーターへ任せる。“余白”を残すことで、それぞれの専門性から新しいアイデアが生まれることを期待している。
アニメーター
プラチナゲームズ株式会社
その考えを象徴するのが、アニメーターの小澤智弘氏が語るアクション制作だ。同社ではインゲームのアニメーション制作にMotionBuilderを長く活用している。HumanIKによる扱いやすさに加え、レスポンスが良く、簡単なものであればアニメーター自身でセットアップしてすぐに動きを試せることもメリットだという。「プラチナゲームズでは、アニメーターもアニメーションをつくるだけではなく、“遊び”をつくるところまで関わります」と小澤氏。
まずは手付けで、プレイしたときの感覚が判断できる程度まで仮アニメーションを素早くつくる。それをゲームへ実装し、実際に操作して動きやレスポンスを確認。違和感があればすぐMotionBuilderへ戻って調整する。早ければ1時間ほどでゲームへ実装されることもあり、「つくる→触る→直す」という短いサイクルを何度も回して手触りを磨いていく。
その後、方向性が定まった段階でモーションキャプチャを行い、キャプチャデータを採り入れて仕上げていく。つまり、手付けとモーキャプはどちらか一方を選ぶものではない。まず手付けでゲームとしての正解を探り、そこで固めたプレイフィールを基準としてキャプチャデータを活用するという関係だ。
簡易的な収録には社内のXsens MVNも使用している。会議室などに収録スペースをつくり、ノートPCを持ち込んで少人数で収録することもある。NPCの芝居だけでなく、クリーチャーなどの動きをスタッフ自身が演じるケースもあるという。
PS5世代を転機に強化されたハイエンドな開発環境
こうした高速な試行錯誤を支えるもうひとつの要素が、制作PCだ。村上氏によれば、プラチナゲームズがPC環境を大きく見直す契機となったのが、『NINJA GAIDEN 4』の開発が始まった約3~4年前だった。
その直前には、Nintendo SwitchやPlayStation 4世代向けのタイトルを中心に手がけていた。そこからPlayStation 5世代のタイトルへ移行したことで、高品質なビジュアルを制作環境上で描画し、実際に確認するために、それまで以上のPC性能が必要になったという。この開発ターゲットの変化が、制作環境を見直す直接的な契機となった。
以前から社内PCはある程度標準化されていたものの、現在ほど職種ごとの負荷に合わせた明確なグレード分けは行われていなかった。現在は3Dモデルやエフェクト、アニメーションなど、高負荷なデータを日常的に扱うアーティストへハイエンド機を優先的に割り当てるなど、用途に応じて環境を選び分けている。「性能が足りなくなったからその都度交換する、というやり方では管理も大変になります。職種ごとに必要な性能を整理して、ある程度グレードを決めるようになりました」と村上氏。
プラチナゲームズ導入モデル DAIV FW-X3G90
- CPU
インテル Xeon w7-2495X プロセッサー(24コア/48スレッド、2.50GHz~4.8GHz)
- GPU
NVIDIA GeForce RTX 4090 24GB
- メモリ
128GB
- ストレージ
SSD 1TB+4TB
- OS
Windows 11
アーティスト向けのハイエンドPCとして採用されているのが、マウスコンピューターのDAIVだ。導入機はXeon w7-2495X、GeForce RTX 4090、128GBメモリという構成。重視したのは、ひとつのアプリケーションだけを高速に動かすピーク性能ではなく、ゲームエンジンと複数のDCCツールを同時に扱っても余裕を残せることだった。
アニメーション制作ならMotionBuilderを中心に、必要に応じてMayaなども使用する。ほかのアーティストではPhotoshopやSubstance 3Dなども加わり、ゲームエンジンや開発中のビルド、オンラインミーティングなども並行して動く。実際の制作現場では、複数の処理が同時に走っていることが当たり前なのだ。
©/TM/® 2025 Microsoft
©2025 コーエーテクモゲームス. Team NINJA All rights reserved.
NINJA GAIDEN, and the Team NINJA logo are trademarks of KOEI TECMO GAMES CO., LTD.
© PlatinumGames Inc.
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ハードウェア構成は社内ICT部門が必要な性能を検討し、ベンチマークなども行いながら選定している。制作PCを個々の作業に合わせて最適化しつつ、一定の基準で管理できる環境を整えることも、大規模化するゲーム開発を支える基盤のひとつとなっている。
「待たない、困らない」が高速イテレーションを支える
DAIV導入による変化は、大きな処理を短時間で終わらせられるというだけではない。日常的に発生する小さな待ち時間の減少にも表れている。中尾氏は『NINJA GAIDEN 4』の開発序盤、ゲームのプレイ映像の撮影から動画編集まで自ら行なっていたという。
それまでの環境ではゲームを起動してキャプチャし、その後Premiere Proで編集するというように、作業を順番に進めていた。DAIVへ移行すると、ゲームを動かしながら動画編集を並行して進められるようになった。「エンジンが立ち上がるまで待つとか、Perforceの更新を待つとか、そういう細かい待ち時間は確実に減っています」と中尾氏。ひとつひとつは1~2分でも、それが1日に何度も起きれば時間は積み重なる。さらに、待ち時間のたびに別のことへ意識が向けば、作業への集中も途切れてしまう。
そして、日々制作PCを使う小澤氏の評価は実にシンプルだ。「何をやっていても、待たない。困らないんです」。以前の環境を思い返して初めて、「また止まった」と感じるような細かなストレスがなくなっていることに気づいたという。高性能PCの価値は、単に処理時間の数字を縮めることだけではない。アニメーションを直したらすぐゲームで触る。映像を撮ったらそのまま編集する。アイデアを思いついたとき、PCの都合で思考を止めず次の試行へ移れる環境そのものが、プラチナゲームズの高速なイテレーションを支えている。
今後、中尾氏が目指すのは、さらに高度なグラフィックスと、同社が得意とするアクションゲームのパフォーマンスを高い水準で両立させることだ。「グラフィックスはもっとハイエンドにしていきたい。一方で、アクションゲームとしてのパフォーマンスも落としたくない。その両方を成立させたゲームをつくっていきたいです」(中尾氏)。
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同社では長く内製エンジンを活用してきた一方、現在はUnreal Engineを採用する機会も増え、新たな制作手法を学びながら開発環境を整えている。大規模化・長期化する開発の中で、プラチナゲームズらしいゲームを一定のペースで完成させ、ユーザーへ届けていく。そのための制作・管理手法も、現在進行形で模索されている。
つくり方は変わっても、スタッフがアイデアを出し、それを動くものへ変え、触って判断し、また磨くというゲームづくりの本質は変わらない。そのサイクルを止めない制作環境として、DAIVはこれからのプラチナゲームズのゲームづくりを支えていく。
お問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9時~18時、土日祝:9時~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
※土日祝は、法人のお客さまも個人窓口でのご対応となります。ご了承ください。
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TEXT_CGWORLD
EDIT_藤井紀明(CGWORLD)
PHOTO_中村昭一(レブフォトワークス)