2026年1~3月にかけてTOKYO MXほかにて放映されていたアニメ『透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~』から、今回はBlenderのGrease Pencilを効果的に活用したオープニングムービー(以下、OP)を紹介する。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 333(2026年5月号)に一部、加筆修正を加えた転載となります。

    Information

    TVアニメ『透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~』
    原作:岩飛猫「透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~」(双葉社「webアクション」連載)/監督・シリーズ構成:瀬田光穂/アニメーション制作:Project No.9
    tomeiotoko-ningenonna.com
    ©岩飛猫/双葉社・「透明男と人間女」製作委員会
    TVアニメ『透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり〜』ノンクレジットオープニングムービー| 阿部真央「Ding-dong」

    Interviewee

    2D・3DCGディレクター・高原さと氏(ルナデジ)

    ルナデジ合同会社代表。2Dや3DCG、アニメーションのスキルを駆使し、TV・映画・CMなど様々な映像作品でコンセプトアートやアニメーション、3DCGを提供する。主な参加作品は、映画『窓ぎわのトットちゃん』(2023)、Youtubeアニメ『Ryan’ s World Time Travel Adventures Animation』(2025)など多数。
    lunadigi.com

    2人が歩くカットのコンセプトアートとプリビズ

    楽曲のサビ部分で透乃眼と夜香の2人が並んで歩くカット。これらのカットではまず最初にコンセプトアートが作成され、その後プリビズが作成されている。

    ▲コンセプトアートの例。コンセプトアートは絵コンテがない段階から竹内氏の要望を基に高原氏が作成している。最初は草原のカットのイメージボードを作成して、Blenderでプリビズを制作。Blender上でカメラワークを付けながらイメージを探っていったという。物語本編とは異なり、Grease Pencilを使って背景全体を3D側で制作してほしいという要望だったため、Grease PencilやDeep Paintのテストもこの段階で行われている
    ▲簡単なキャラクターのガイドモデルを使ったプリビズ。歩きのモーションは自社で作成したモーションを流用しているが、2人で連れ添って歩くモーションに苦労したという

    Grease Pencilで描いた3つのサビのカット

    Grease Pencilを使って表現された背景モデルの例で、カメラから見た状態と俯瞰からみたシーン。

    • ▲カメラマップとGrease Pencilを併用してシーンが構築されている。遠景など画面上で視差が小さく面積が広い部分にはカメラマップを使用
    • ▲この草原のカットでは、中央の家や遠景の地形はカメラマップで表現し、手前の柵や植物はGrease Pencilを使ってモデリングしたモデルやペイントしたモデルが使用されている。また、シーン全体のオブジェクトに対してGrease Pencilでペイントして手描き風の柔らかい空気感がつくられている
    • ▲街のカットでは面積が広い建物や地面はカメラマップ素材を貼り込み
    • ▲中央の壁面や植生はGrease Pencilで表現された
    • ▲花畑のカットは、薔薇の花や茎のオブジェクトはGrease Pencilで描画したラインをメッシュ化し、歪みをつくりながらモデリング。色もGrease Pencilでペイントすることで水彩の雰囲気を出している。マテリアルはDeep Paintのマテリアルを使用し、頂点カラーなども併用して表現した
    • ▲このようなディテールが詰まった画では密度が高くCG感が増すので、Grease Pencilを使ってペイントすることで、情報量をコントロールしているという

    カメラマップによる表現

    遠景の建物などに使用されているカメラマップの例。

    • ▲画像は草原のカットにある遠景の家の例。簡易的にモデリングされたオブジェクトに対して、カメラマップ素材が投影されている。遠景であるためカメラが多少動いても視差が少なく、カメラマップでも問題なく表現することができている
    • ▲カメラマップが投影された家のモデルをシーンに配置した状態

    Grease Pencilによる表現

    シーンに配置されている植生のほとんどはGrease Pencilで作成されている。Grease Pencilは空間に直接ペイントすることができるため、花や葉などのモデルを効率良く作成するには非常に便利な機能だという。精密な葉を1枚ずつ描いていくような表現には向かないが、ブラシを的確に選択することで、植生のボリューム感のある柔らかい雰囲気をつくり出すことができる。

    • ▲薔薇の花はモデリングした花びらの上から、Grease Pencilを使ってペイントし、輪郭に歪みをつくり出すことで手描き感を出している
    • ▲薔薇の花畑は、上からGrease Pencilで空気感をペイントすることで、3DCGの硬い印象を和らげている
    ▲Grease Pencilを使って直接モデリングされている草花の例。Grease Pencilは空間にラインを生成するだけではなく、輪郭内を塗りつぶすこともできるため、このような草花も立体としてモデリングすることが可能だ
    • ▲描いたラインをメッシュ化して作成した樹木の幹
    • ▲樹木の枝に直接Grease Pencilでペイントして葉が作成されている
    ▲Grease Pencilは空間に自由にペイント可能なので、このように壁に沿った状態の蔓草なども作成することができる

    プリビズと完成カット

    キャラクターはプリビズを基に、最終的には作画で描き直されてセル素材として撮影される。キャラクターの作画も長回しのカットが多く、スケジュールギリギリまで作業にあたっていたため、3D側ではレイアウトのラフ素材で速度などを調整し、最後に本番素材に合わせることで対応したという。

    ▲3D背景とキャラクターのセル素材がズレないように、カット一連で歩きのガイドモーションやパースガイドが作成されている。サビのカットは一連で同じ速度で背景が移動するため、統一した3Dガイドを作成して参考にしている
    ▲草原の完成カット
    ▲街中の完成カット
    ▲花畑の完成カット

    CGWORLD 2026年5月号 vol.333

    特集:CGインディーズ仕事術
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2026年4月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_大河原浩一(ビットプランクス)/ Hirokazu Okawara
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada