『KILLTUBE』プロジェクトをはじめとする、KASSENとの多彩なコラボレーションなどを通じてデジタルアーティストたちからも注目をあつめているCHOCOLATE Inc.(以下、CHOCOLATE)が、12月10日(火)にオリジナル短編アニメーション『SWEETS MATE』(スイーツメイト)をYouTubeと作品公式Xにて公開した。

壮絶でファンシーなスイーツたちのバトル(肉弾戦)を描いた本作。3Dと2Dを巧みに組み合わせたユニークなアニメーションによって、怒濤の展開がくり広げられていく。

主人公プルー(オレンジゼリー)のCVは、お笑い芸人・もう中学生。ブルーと行動を共にするチェル(さくらんぼ)のCVは、人気声優・ファイルーズあい、などと豪華なキャスティングである一方、今後の展開が謎に包まれている気になるプロジェクトだ。

この度、CGディレクターを務めた、まめたろう氏にインタビューする機会に恵まれたのでここにお届けしよう。

記事の目次

    まめたろう

    映像作家・3D Artist

    小学校の1/3は不登校、高校は中退、子どもの頃は牧場の馬を眺めて過ごしていました。その後、CGを学び、WOWなどでビジュアルデザイナーとして経験を積み、2022年よりRED所属。シンプルでカラフルな映像を得意とし、見る人の心を惹きつける独自の作品を手がけています。 NHK『デザインあneo』にも参加し、2024年には「映像作家100人」に選出。様々なメディアで活動しています。



    ——早速ですが、まめたろうさんが『SWEETS MATE』に参加された経緯を教えてください。

    まめたろう:
    今年の春頃にCHOCOLATEのプロデューサーさんからメールをいただいたことがきっかけです。

    2018年頃から仕事の合間を縫って、自分が好きな・作りたい映像も作るようになって、SNSにアップしています。今年の頭から、プルプルの表現にハマって、それ系のショート動画を投稿しているのですが、それをご覧になっていただき、現在進めているアニメーション企画の相談にのってほしいということで、お話を聞いてみることにしました。

    まめたろう:
    最初のミーティングの時点で、オレンジゼリーという設定の主人公プルーに、僕が個人的に発表していたプルプルの表現を取り入れたい。そのためにもアニメーション制作に参加してほしいとおっしゃっていただけました。

    ——と言うことは、アニメーションの表現手法や制作体制(座組)を考えるところから、まめたろうさんがリードされたわけですか?

    まめたろう:
    そうとも言えますね。ただ、仕事でも本格的なキャラクターアニメーション制作を取り仕切る経験がなかったので、「どうしようかなあ……」的な不安もありました。

    ですが、それ以上にCHOCOLATEさんの熱意と、僕の個人制作に対してリスペクトをしていただけていることがすごく伝わってきたので、お引き受けしました。

    ——完成したアニメーションは2Dの3Dのハイブリッドで、一部のシーンはフル2D(作画)で仕上げられています。ハイブリッドの表現は、どのように決めていかれましたか?

    まめたろう:
    作画パートがあることは元々決まっていました。その意味では、ストーリーやキャラクター設定は、僕にお話をいただいた時点でしっかりと決まっていました。

    なので、3DCGパートをどうやって作るのかを考えて提案することを、僕が最初に行なったことでした。

    実は最初から、フェイシャルも含めてフル3Dで作ることはやめましょうと提案していたんです。

    ——なんと。その理由を教えてください。

    まめたろう:
    フェイシャルも含めてしっかりと3Dで作ろうとしたら、相応にコストも作業期間も増えてしまいます。

    喩えが悪いですけど、ピクサー的なアニメーションを作ろうとして中途半端な仕上がりになってしまった卒業制作みたいになる恐れがあるなと(苦笑)

    ——表現が秀逸ですね(笑)

    まめたろう:
    そこで考えたのが、ボディはモチーフとなったスイーツのリアルな形状をベースにしつつ、目や口は3Dパーツとしてくっついているという表現でした。これであれば、アニメーション表現の自由度とクオリティを両立できそうだなと。

    ですが、この手法でもフルCGで仕上げるのはハードルが高いことがわかり、作画パートが入るという全体的なコンセプトをふまえて、表情は2Dで描くというハイブリッド方式で作ることが決まりました。

    ——お話を聞いていると、CHOCOLATEさんがまめたろうさんの画づくりを、その作り方を含めて尊重されていることが伝わってきます

    まめたろう:
    本当にありがたかったですね。

    CHOCOLATEさんの制作の進め方は、監督さんや脚本家さんなど、クリエイティブの責任をもたれる方がしっかりと熟考した上で決めていかれていく印象でした。

    トントン拍子で進んでいくという感じではありませんが、後出しジャンケン的な表現の変更などはいっさいなかったので、最後まで気持ちよく画づくりを行うことができました。

    プルー動きの検証(その1)
    • プルーの形状(プロポーション)の検証例。最終的に採用されたもの
    • 最終形よりもデフォルメしたプロポーションの検証例

    ——CGアニメーションチームの編成を教えてください。

    まめたろう:
    僕がCGディレクターとして全体を監修しつつモデル制作は、僕が所属しているREDの同僚である山野(幸一郎氏)にお願いしました。そして井上(裕貴氏)が制作進行を一手に引き受けてくれたので、僕たちは画づくりに集中することができました。

    キャラクターアニメーションについてはリギングを含めて、僕が新卒でお世話になったI-mage(アイメージ)さんにお願いしました。

    当時の上司だった伊藤(了太郎)さんにI-mageチームのCGスーパーバイザーを務めていただきました。伊藤さんにはもう10年来、大変お世話になっているのですが、安心しておまかせすることができました。

    また、FULUさんには制作佳境になって、REDもI-mageさんもさばききれなくなってしまった数カットのショットワークを助けていただきました。

    プルー動きの検証(その2)
    プルー動きの検証(その3)

    ——まめたろうさんこだわりのプルプル表現ですが、この作品向けにカスタマイズされたところはありますか?

    まめたろう:
    個人創作は球体などのシンプルな形状ですが、今回はキャラクターだから鼻や帽子などのパーツもあるので、同じやり方では良い表現にならないことがあったのでCinema 4Dのパラメータを少し調整したりはしました。とは言え、基本的にはこれまでに蓄積してきたノウハウをそのまま活かすことができましたね。

    あとはキャラクターの動きによっては、普段使っているソフトボディに加えてziggleを使ってシミュレーションぽい動きをI-mageさんに手付けしていただいたりもしました。

    ——ところでアニメーション制作に際して、レイアウトはどのように決めていかれたのですか?

    まめたろう:
    レイアウトについても冨永監督をはじめ、CHOCOLATEの方々がしっかりと提示してくださいました。

    iPhoneとかで撮ったレイアウト参考的な動画に加えて、CHOCOLATEの方がわざわざCinema 4Dを使ってラフな3Dレイアウトを提供してくださったりもしたので、迷うことなく本制作を進めることができました。

    プルーの質感検証

    ——制作をふり返ってみて、いかがですか?

    まめたろう:
    先ほどもお話したように、クリエイター冥利に尽きるプロジェクトでした。

    欲を言えば、もっと作り込みたかったところや、具体化できなかったアイデアが残っていたりもします。

    その意味では、ぜひ多くの方に観ていただいて、シリーズ化とか長編プロジェクトへと展開してほしいです。

    ©CHOCOLATE

    ——最後に、CGに限らずプロとして活動を始めるとオリジナル作品を作りたいけど苦労している的な話をよく聞きます。まめたろうさんが5年以上にわたり、個人創作を続けられている秘訣は?

    まめたろう:
    単純に「仕事は仕事なんだから、100パーセント自分のやりたいことができるわけない」と思っているからかもしれませんね(笑)

    仕事の中で、創作意欲が満たされているなら、それはそれで良いことだと思います。ですが、本当にやりたいことがある人はできる範囲でオリジナルにチャレンジするのが良いと思います。

    最初は反響がなかったりすると思うけど、本当に作りたいものがあれば続けられるんじゃないかと。

    ——ありがとうございます! その意味では、まめたろうさんのようにショート動画をコツコツ作って投稿するというのが、今の時代に合っていると思いました。

    ©CHOCOLATE

    プチアニメ『SWEETS MATE』(スイーツメイト)

    ▽キャスト

    プルー      :もう中学生

    チェル      :ファイルーズあい

    ドッツ      :三宅健太

    ドナ/ナナ/ツナ :内田真礼

    実況       :安元洋貴

    筋肉効果音    :青木マッチョ


    ▽スタッフ

    監督/脚本/キャラクターデザイン   :冨永 敬

    脚本                 :徳山武昇

    アニメーションプロデューサー     :野田楓子 今野雄太 福田文香

    プロデューサー            :田中詩織

    アートディレクション         :高藤達也

    脚本/演出協力            :竹林 亮

    製作                 :栗林和明

    編集                 :小林 譲 Shawhit Lynn 佐川正弘 須田悠斗

    コンセプトアート           :ア・メリカ

    原画                 :山田ハリケーン 須藤知花 谷口宏美

    CGディレクター/アートディレクション:まめたろう(RED Inc.)

    モデラー               :山野幸一郎(RED Inc.)

    CGプロジェクトマネージャー     :井上裕貴(RED Inc.)
    リードアーティスト          :永田健人(I-mage)

    3Dアーティスト           :雪家総一朗(I-mage)

    CGスーパーバイザー         :伊藤了太郎(I-mage)
    CGスーパーバイザー         :福永誠二(FULU Inc.)

    3Dアーティスト           :依田拓郎(FULU Inc.)

    音楽                 :マツザカタクミ 大木嵩雄

    音響効果               :小山健二

    録音                 :小西真之

    録音助手               :高梨日菜

    音響制作               :dugout Inc.
    PR                 :坂本 舞

    カメラマン              :工藤雄太
    ダンス振付協力            :松下加奈 松井笑那
    製作                 :CHOCOLATE Inc.


    YouTube:https://www.youtube.com/@CHOCOLATEANIMATIONS
    作品公式X:https://x.com/sweets_mate

    INTERVIEW_NUMAKURA Arhito