マウスコンピューターが販売するクリエイター向けPCブランド「DAIV」
イラスト・マンガ制作、デザイン・DTP、映像制作・動画編集、写真編集、3DCG・CAD制作など様々なクリエイティブ向けに提供されている「DAIV」だが、そのラインナップはハイエンドモデルにもなると数百万円の価格にまで及ぶ。
はたして、そうした高級機は最前線のクリエイターからどのように評価されるのか。

今回は、AMD Ryzen Threadripper PRO 7965WX プロセッサとNVIDIA RTX 6000 Ada 世代を搭載し300万円近い価格を誇るDAIV FW-P6N60を検証。SideFXにてHoudini先生として活躍、『SideFX公式 さつき先生と学ぶはじめてのHoudini』などの著書も持つさつき先生こと高瀬紗月氏をお呼びして、現役クリエイターの目から見たマシンの実力や感触を確かめていただいた。

記事の目次

    検証機材

    DAIV FW-P6N60
    OS

    Windows 11 Pro for Workstations 64ビット (DSP)

    CPU

    AMD Ryzen Threadripper PRO 7965WX プロセッサ

    グラフィックス

    NVIDIA RTX 6000 Ada 世代

    メモリ標準容量

    64GB (16GB×4 / クアッドチャネル)

    M.2 SSD

    4TB (NVMe Gen4×4 / Western Digital WD_BLACK SN850X)

    無線

    Wi-Fi 6E( 最大2.4Gbps )対応 IEEE 802.11 ax/ac/a/b/g/n準拠 + Bluetooth 5内蔵

    保証期間

    3年間センドバック修理保証・24時間×365日電話サポート

    販売価格

    2,919,800円~

    流体シミュレーションを行うならメモリは積めるなら積めるほどいい

    ――さつき先生の普段お使いのPCについて、スペックや選定意図を伺ってもいいですか?

    さつきCPUがIntel Core™ i9-13900K、GPUがGeForce RTX 4090、メモリが128GB、ストレージは(NVMeの)2TBです。ストレージがだいぶ控えめなのは、データの保管をNASに任せているからですね。

    選定意図……は、いま使っているPCは1年半前ぐらいに自作で組んだものなのですが、そこで自分の要求に合わせていったら自然とそうなった感じです。その前に使っていたPCがメモリを64GB積んでいたのに物足りなさを感じていたので128GB積むことになり、NASから10Gbpsでデータ転送したいけどATXに収めたいということでマザーボードが決まり……と決まっていって自然と。あとは、当時用意した予算が50~60万円くらいだったので、その枠内で。

    ――では、その要求の部分を個別に訊いていくのですが、まず、CPUのIntel Core™ i9-13900Kの選定理由は?

    さつきCPUは、正直あまり考えていないです。
    上を見ると100万~200万の世界が見えてきてしまうので、とりあえず当時の予算内で一番いいものを買ったら13900Kだった、という感じですね。実はマザーボードとの兼ね合いもあったりしてます。

    ――続いて、メモリが64GBでは物足りなくて128GBにされた理由は?

    さつきやっぱり、Houdiniで大規模な流体シミュレーションなんかを行うには足りないんですよ。シミュレーションは3次元上で行われるので、ボクセルのサイズ(グリッドの解像度)を1/2にするだけでも、ボクセル数自体は2の3乗で8倍になっちゃうわけですよね。だから、64GBのメモリでできてたシミュレーションからちょっと上を目指すだけでメモリなんてあっという間に使い尽くしてしまう。

    なので、メモリを倍にしたというととんでもなく増やしたように思えるかもしれないんですけど、実際の感覚としては割と妥当というか。溜められるキャッシュが大きいほど作業もやりやすくなるので、メモリは積めるなら積めるほどいいですよね。

    GPUとストレージが強いのにCPUとメモリが物足りない

    ――今回、さつき先生に体験いただいたDAIV FW-P6N60は価格にして約300万円、CPUにAMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 7965WX、GPUにNVIDIA RTX™ 6000 Ada搭載、ということでしたが、使ってみていかがでしたか?

    さつき今回は、自分で作った流体シミュレーションのデータを使ってみたのですが、ストレージの強さなのかプレビューは速かったと思います。読み込んでビューポートで表示する処理だけなら先ほどご紹介した自分のマシンの2倍くらいの体感です。Houdiniの起動も明らかに速い。また、GPUも、Karma XPUのレンダリングなどでは力を感じました。アーティストの待機時間が短くて済むのはありがたい人も多いのではないかと。

    今回はMPMのサンプルファイルからシミュレーションをいくつか回してみたのですが、ちゃんと設定を詰めていないながらも、体感では結構速いと思いました。
    ただ、メモリが64GB、CPUもThreadripperの中で最高クラスではない、という構成がボトルネックになったような部分もちらほらと感じました。ストレージやGPUが強い分、このクラスのものを使う人は周囲のスペックを底上げしてくれないと物足りないかもしれないです。

    ――さつき先生の総評としてDAIV FW-P6N60はどうだったでしょうか。

    さつきRTX™ 6000 Adaと高速のストレージにパフォーマンスを発揮してもらうには、CPUとメモリがもう少し欲しいかな、と。メモリが64GBじゃなくて128GBあるだけでも、もっと違ったのではないかと思います。

    あとは、CPUクーラーは空冷じゃなくて水冷であって欲しかった。70度くらいを維持できる冷却性能自体はとてもいいのですが、音量が気になってしまいましたね。
    プロダクションだと気にならないのかもしれないですし、はたしてこれを個人で買う人がいるのかとも思いますけれども、クーラーが結構な音量を立てているのは個人的には気になりました。音量もそうですが、より強いCPUだと簡易水冷の方が冷却能力も高くて安心かもというのもありました。

    ――ありがとうございました。

    TEXT_稲庭 淳