カルト的人気を誇るインディゲーム『ART SQOOL』やニューヨークタイムズの3Dイラストなどで知られる3Dアーティストのジュリアン・グランダーが手掛ける長編アニメ映画『ボーイズ・ゴー・トゥー・ジュピター』が5月22日(金)より劇場公開される。
これまでもHBO MaxやCartoon Network、Adult Swimなどでいくつもの作品を手掛け、その独特で鮮やかな3Dアニメーションが評価されてきたグランダー氏だが、本作は彼の長編初監督作となる。
制作費は自己資金によるわずか3万ドル、映像制作はグランダー氏がBlenderを用いてほぼひとりで手掛け、劇伴もすべて自作という極少人数での制作となっているが、日本国内では2024年に新千歳空港アニメーション映画祭で上映、2025年に監督の手による調整が施された完全版が全米公開されている。今回満を持して劇場公開されるのはその完全版であり、これは監督が望む最良の状態であるとのこと。
『ボーイズ・ゴー・トゥー・ジュピター』とは
舞台となるのは年の瀬が迫るアメリカ・フロリダ州の郊外にあるジュピターという町。町には廃墟のようなスポットばかりが立ち並び、産業といえばジュース製造会社とその農園がある程度。成人した若者は町の外に出ていき、歳の満たない少年たちは駐車場やビーチに目的もなくたむろすることでなんとか日々を過ごしている。
主人公のビリー・5000は学校を中退しフードデリバリーの仕事に明け暮れる少年だ。アプリの指示するままに寸暇を惜しんで食事を運び、町から出るための資金となる5000ドルをなんとか貯金しようと苦闘している。
物語はそんな彼がドーナツ型のエイリアンやジュース製造会社の跡取り娘・ローズバッドと出会い、最終的な選択に至るまでの数日間を描く。
「1人で100人分の仕事を担当」してできた自主制作映画
本作で特筆すべきは86分という長尺のアニメ映画でありながら、ほぼ監督個人で制作されているという点。エンドロールには声優やレコーディングエンジニアなど数名がクレジットされるのみで、その他はすべてグランダー監督とプロデューサーのベイシン・ヤン・ラゾ氏の働きによって賄われている。
制作期間は約4年、制作予算は約3万ドル。
映像面はYouTubeでのチュートリアルやフォーラムでのアドバイスを参考にしながら監督がBlenderでつくりあげ、アニメーターも監督以外にはたった1人がいるのみだ。
また、音楽に関しても監督が自作。劇伴として使用されたのはボーカル付きの9曲とインストゥルメンタル48曲の計57曲だが、監督が「ファジーなシューゲイザー・ベッドルーム・ポップ」と称する楽曲群を自ら手掛けている(監督とプロデューサーの2人はかつてバンド活動を共にしていた仲であり、この制作には「巡り巡って元に戻った」という充足感があったそうだ)。
そうした極少人数での制作は監督いわく「100人分の仕事をこなした」ほど大変だったというが、これにより「自分たちのやり方で自由に物語を語ることができ、非常に奇妙で、美しく、パーソナルな作品が出来上がった」という。
監督は制作において影響を受けた作品として『ゴーストワールド』、『シザーハンズ』、『ナポレオン・ダイナマイト』、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、『ヴァージン・スーサイズ』、『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』、『パリ、テキサス』などを挙げているが、本作はたしかに郊外の町の倦怠感やある種のシュールさが漂うものとなっており、クライマックスに訪れるほんのわずかな劇的さと相まって不思議な余韻を残すものとなっている。
『ボーイズ・ゴー・トゥ・ジュピター』
5月22日(金)より、新宿武蔵野館・渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次ロードショー
監督・脚本・製作・音楽:ジュリアン・グランダー
出演:ジャック・コーベット、タヴィ・ゲヴィンソン、グレース・クーレンシュミット、エルシー・フィッシャーほか
2025年|アメリカ|87分|原題:BOYS GO TO JUPITER
提供:キングレコード
配給:boid、コピアポア・フィルム © Glanderco, LLC.
TEXT_稲庭淳