ページをめくるたびに、新しい物語との出会いが待っている――。新刊『イソマルトの夢見る家』は、見ているだけで想像が広がる「家」をテーマにした設定資料集。
『ペットのアヒルと暮らす少女の家』『UAP(未確認空中現象)研究者の家』『毒キノコでポーションを作る魔女の家』など、個性豊かな家々を収録。調度品や間取り、空間の細部に至るまで、そこに暮らす住人たちの人生や物語を感じさせるイラストが描き込まれてる。
韓国のゲームコンセプトアーティストとして活躍するイソマルト氏に、本書を制作したきっかけや、空間と物語を結びつける世界観づくりの考え方について話を聞いた。
プロフィール
イソマルト
ソウル大学で西洋画を専攻し、副専攻として視覚デザインを学ぶ。
その後、約10年間、NEXON、Netmarble、LINE、com2us、Nimble Neuronなどのゲーム会社と協業し、主なプロジェクトとしては『BTS Universe Story』『Knights Chronicle』『Summoners War: Chronicles』などがある。
現在はフリーランスとして、さまざまな業界のビジュアル制作に関わる一方、絵を教える講師としても活動している。
CGWORLD(以下、CGW):イソマルトさんの自己紹介をお願いします。普段はどのような仕事をされていますか?
イソマルト氏(以下、イソマルト):空間を通じて世界観と物語を視覚的に設計する作業に深い関心を持ち、ゲーム、アニメーション、ミュージックビデオ、小説など様々な分野でコンセプトデザインや背景アートを手がけています。
また、個人制作を続けながら、背景コンセプトアーティストを夢見る学生たちや、さらに実力をつけたいアーティストたちに、コンセプトデザインや背景アートのノウハウを教える講師としても活動しています。
CGW:「夢見る家」というテーマが印象的ですが、家の設定資料集を制作されたきっかけは何ですか?
イソマルト:以前から、映画やアニメーションのアートブックに収められた素敵なコンセプトスケッチとデザインを見ては、「なぜこんな空間がつくられたのか」、「どんな話がこのデザインにつながったのか」と、興味をもっていました。
そこから、空間がつくられる過程と設定、そしてその中の物語を一緒に込めてみたいという考えが大きくなり、それが今回の設定資料集の出発点となりました。
イソマルト:私は日常の中からいくらでも興味深いアイデアが生み出せると思っています。普通の要素をつなぎ合わせ、組み合わせるだけで、十分に新しい空間や物語になるからです。
ですので、コンセプトデザインが難しいと感じる方々にも、このアートブックが小さなインスピレーションやヒントになることを願っています。
私の本を通じて「こういう方法でも物語を綴っていけるんだな」と感じ、自分だけのアイデアを拡張していくきっかけになればとても嬉しいです。
また、単に視覚的な印象で終わる絵ではなく、設定と物語を一緒に盛り込み、長く見続けていたくなる絵を描きたいと思いました。これを通して、背景と空間デザインも十分に面白くて魅力的な創作になるということも、一緒に伝えたかったのです。
CGW:本書の見どころや、特に注力した部分があれば教えてください。
イソマルト:最も大事にしたいと考えたのは、コンセプトとデザイン言語の一貫性です。
例えば、直線と曲線では、人に伝わるニュアンスが大きく異なり、同じ曲線でも曲率の程度によって空間の性格と雰囲気が完全に変わることもあります。
これらの形態言語に基づいて、それぞれの家ごとに外観と内観デザイン、装飾要素、小道具まで、統一された方向性をもつように構成しました。
イソマルト:また、建物の外観だけでなく、内部空間を通してキャラクターの性格と生活様式が自然に読み取れるようにデザインしました。これらの要素は空間の構造とディテールに反映され、外部と内部が一つの叙事詩のようにつながることを意図しました。
そして、これらの空間設定と繋がるようにキャラクターデザインも一緒に構成し、世界観全体の雰囲気が有機的につながるようにしました。これらのコンセプトの統一性が読者に自然と伝わることを願っています。
CGW:本に登場する家の中で最も思い入れのある家はありますか?
イソマルト:この本の出発点となった「バードウォッチング画家の家」に最も愛着がわいています。
イソマルト:普段韓国の探鳥YouTubeチャンネルである「새덕후 Korean Birder」をよく見ていて、そのチャンネルを通じて鳥に興味をもつようになりました。すると、私が住んでいる町でよく見られる鳥の種類や、四季ごとにどんな鳥が行き来しているのかが、少しずつ目に入り始めたんです。
その過程で、絵を描く自分の姿と鳥を観察する趣味が自然につながり、「バードウォッチング画家の家」というアイデアが思い浮かびました。
私が普段好きな要素から始まったコンセプトであるだけに、作業過程はとても楽しかったですし、日常の中の経験が1つのコンセプトへと拡張される流れを明確に感じることができたので、より強く記憶に残っています。このようなアプローチが、今後ほかの制作にも広がる可能性を感じるきっかけでもありました。
多くの方々に好んでいただいた作品でもあり、個人的に一番好きな家です。
CGW:この本をどんな方に読んでいただきたいですか?
イソマルト:コンセプトデザインや背景デザインに興味がある方はもちろん、絵本を読むように空間と世界観を鑑賞するのが好きな方に楽しく読んでいただけたらと思います。
また、普通の日常の経験がどのように1つの設定と物語に拡張できるのか興味深く見ていただけたらとても嬉しいです。
読者の皆さまそれぞれの想像力を加えて自由に楽しんでいただければ、それだけで十分嬉しいです。
CGW:最後に日本の読者へのメッセージをお願いします。
イソマルト:幼い頃から日本のゲーム、漫画、アニメを通じて本当に楽しい時間を過ごしてきました。
日本はコンテンツ強国であるだけに、個性的で独創的なコンセプトとストーリーテリングをもつ作品が多いと感じ、そのような作品を見ながらいつも、とてもかっこいいと思っていました。特に自分だけの色があり、作品ひとつひとつに独創性がある点が印象的でした。
そんな日本の読者の方々に、私の世界観をご紹介することができ、とても嬉しく、ありがたく思っています。本の中の空間や物語を楽しんでいただけたら本当に幸せです。
書籍紹介
『イソマルトの夢見る家(設定資料集)』
定価:3,080円(本体2,800円+税10%)
総ページ数 168ページ
著者:イソマルト