TVアニメ『クレバテスII-魔獣の王と偽りの勇者伝承-』は、岩原裕二によるLINEマンガ発のダークファンタジーを原作とするシリーズ第2期。アニメーション制作をLay-duceが手がけ、CGディレクターは同社の辻 直希氏が務めている。

今回は全3回にわたり、効率化のためのスケジューリングやアニメーションのパターン出しなど、本作ならではの取り組みを解説していく。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 338(2026年10月号)からの転載となります。

    3DCGならではのリアリティと誇張表現のバランスを追求

    本作は作画中心の演出が基本だが、第9話では3DCGが大きな役割を果たした。物語の鍵を握るアイテム「トアの書」、無数に登場する「魔道人形クグツ」(以下、魔道人形)、魔獣「キメラクイーン」の出現、さらにアクションシーンの作画ガイドまで、この1話に多彩なCGワークが詰め込まれている。

    『クレバテスⅡ-魔獣の王と偽りの勇者伝承-』
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    原作:岩原裕二(「LINEマンガ」連載)/監督:田口清隆/アニメーション制作:Lay-duce
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    ⒸYuji Iwahara/LDF/クレバテスⅡ製作委員会

    メインツールはBlender 3.6。前作アセットとの互換性を優先し、あえてバージョンを据え置いている。モデリングからUVまではMayaを併用し、セットアップはAuto-Rig Pro、ウェイト調整はLazy Weight Tool、レンダリングはPencil+ 4、作画ガイドにはAdjustable Mannequinを用いるなど、作業内容に応じてツールを使い分けているとのこと。さらに、魔道人形やキメラクイーンのデザインもCGチームが担当している。

    CGディレクター・辻 直希氏

    特撮出身である田口清隆監督からは、モデリングやアニメーションにリアリティを求めつつ、アニメならではの誇張表現もほしいという要望があった。「格好良いものは、より格好良く、気持ち悪いものは、より気持ち悪く見せることを意識しました」と辻氏。

    演出の意図を丁寧に汲み取りながらシルエットや動きの緩急を細かく調整し、不自然さを排した誇張表現へと落とし込むアプローチを心がけたという。

    左より、CGリードアニメーター・高橋翔月氏、3DCG制作・村岡康成氏、CGアシスタントディレクター・小林大介氏、CGアニメーター・桝田烈成氏、ルックデべロッパー・西本健人氏(以上、Lay-duce)
    ※Lay-duceでは現在、スタッフ募集中です。詳しくは公式Webサイトをご覧ください。
    lay-duce.co.jp

    また、第2期では社内対応カット数が前作の約2倍に増加。限られた人数で品質と納期を両立させるのも、本作でのチャレンジとなった。そのため、CG先行とレイアウト(以下、LO)先行の割合調整、1カットあたりの負荷軽減、リテイク回数の削減という3つの工夫で品質と納期を両立させるスケジューリングとフローづくりに取り組んだという。

    品質を維持しながら納期を守る
    スケジューリングとフローを重視した制作

    第1期では3DCGの全123カット中49カットを社内制作していたが、第2期では全91カット中80カットを社内制作。社内対応の数が大幅に増えるなか、限られた人数で品質を維持しつつ納期を守るために意識したのが以下の3点だ。

    (1)CG先行とLO先行の割合の調整。CG先行は絵コンテが上がった時点で着手できるが、LO先行は作画監督によるLO完成を待つため着手が数週間遅れる。少人数体制でLO先行の数が偏ると納期に間に合わない恐れがあるため、複雑な合成カットは可能な限りCG先行へ切り替え、負荷が偏らないよう調整。特に第9話では社内対応の32カットのうち17カットをCG先行、15カットをLO先行とし、スケジュール通り進行できたという。

    (2)1カットあたりの作業負荷の軽減。テストモーションの段階から監督のOKを得た動きをライブラリ化し、必要なタイミングで活用。複数カットに流用することで、1体ずつ新規にアニメーションを付ける負担を減らした。

    (3)リテイク回数の削減。社内のCGディレクターチェックの段階で完成度を高めておくことを徹底。結果、第二期の平均テイク数は2.32まで抑えられたという。

    テストモーションからのライブラリ制作

    1カットの尺が長い、あるいは複数体を同時に動かすカットは、それだけ制作負荷が高くなる。例えば、魔道人形が7体も登場するカットを1体ずつ新規にアニメーション付けしていては効率が落ちてしまう。そこで、前もって原作を読み込み、絵コンテが上がる前からテストモーションに取りかかり、その段階から実際のカットでも使えるアニメーションを制作した。

    監督のOKが出た時点で複数のバリエーションを展開、それらをライブラリに登録し、必要なタイミングで取り出して似たカットへ流用できるようにしたという。レイアウト完成後にCG発注を受けてから動きをつくるのではなく、あらかじめ用意したアニメーションで対応することで、1カットあたりの制作負荷を大きく軽減している。

    ▲魔道人形のアニメーションの一例

    リテイク回数を減らす工夫

    アニメーションのチェックはCGディレクター、話数演出、アニメーションディレクター、監督という4段階で行われるが、演出の一部や監督は社外にいるため、フィードバックが返るまでに日数がかかってしまうことがある。そこで社内対応のカットではCGディレクターの段階で完成度をできる限り高め、OKが出たものだけを話数演出に回すことにした。

    社内チェックでは演出意図とのズレや動きの違和感、緩急のテンポなどを、演出の好みの傾向も踏まえながら、赤入れやスケッチを交えて修正内容を伝わりやすく工夫した。技術的な修正は経験豊富なアニメーターであれば少なく抑えられるが、演出の好みに合わせた修正は難しい。そのためA・B・Cと複数パターンを同時に提示し、監督に選んでもらうかたちでチェック回数を削減している。

    ▲アニメーションのチェックのながれ

    トアの書のチェーンの表現

    ▲物語の重要アイテム、トアの書のリグ画面。本の背表紙についたチェーンはシーンによっては1本ずつニュアンスを調整したいケースもあるため、全体のながれを操作する6つのコントローラに加え、細部を個別に調整できるようなリグを構築。チェーンの長さも2パターン設定し、大きなシルエットのアニメーションを付けたうえで、細かい演技を足せる構成にされている
    ▲完成カット。ページ送りはジオメトリノード、鍵穴のプレートはドリブンキーで制御するなど、少ない操作で意図した演技を付けられることを意識。リグを担当したCGアシスタントディレクターの小林大介氏は「動くようになったところで完成ではなく、実際の制作の中で見えてくる課題をひとつずつ改善しながら、より使いやすいリグへ育てていくことが大事だと、改めて認識しました」と語ってくれた

    No.2に続く。

    CGWORLD 2026年10月号 vol.338

    特集:アニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』
    判型:A4ワイド
    総ページ数:118
    発売日:2026年9月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎデ)
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada