TVアニメ『クレバテスII-魔獣の王と偽りの勇者伝承-』は、岩原裕二によるLINEマンガ発のダークファンタジーを原作とするシリーズ第2期。アニメーション制作をLay-duceが手がけ、CGディレクターは同社の辻 直希氏が務めている。

今回は全3回にわたり、効率化のためのスケジューリングやアニメーションのパターン出しなど、本作ならではの取り組みを解説していく。今回は主人公のアリシアに襲いかかる魔道人形クグツの制作とアニメーションについて紹介しよう。

記事の目次

    関連記事:『クレバテスII-魔獣の王と偽りの勇者伝承-』スケジューリングとパターン出しによる効率化に注目! ~No.1/スケジューリング・フロー篇

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 338(2026年10月号)からの転載となります。

    Information

    『クレバテスⅡ-魔獣の王と偽りの勇者伝承-』
    dアニメストア、U-NEXT、アニメ放題、ほかにて配信中

    原作:岩原裕二(「LINEマンガ」連載)/監督:田口清隆/アニメーション制作:Lay-duce
    clevatess.com
    Blu-ray BOX 2026年11月27日(金)発売!
    ⒸYuji Iwahara/LDF/クレバテスⅡ製作委員会

    アリシアを襲う魔道人形、シーンごとに適切な不気味さと実在感を追求

    CGディレクター・辻 直希氏

    第9話に登場するのが、主人公のアリシアに襲いかかる魔道人形クグツ(以下、魔道人形)と、その体内で魔道人形を生み出す魔獣キメラクイーンだ。いずれもデザインからアニメーション付けまで、CGチームが主体となって手がけている。

    魔道人形は、原作のようなシルエットと不気味さを両立させるべく、前垂れを下げた状態とアクション用に跳ね上げたバージョンの2種類を用意。関節部を球体で構成したリグにより、人形特有の異質な動きを表現している。マテリアルはシーンごとの色替えを効率化するしくみを構築し、テクスチャも1号影・2号影・絶対影という考え方で、立体感を保ったまま短時間での配色変更を可能にした。

    左より、CGリードアニメーター・高橋翔月氏、3DCG制作・村岡康成氏、CGアシスタントディレクター・小林大介氏、CGアニメーター・桝田烈成氏、ルックデべロッパー・西本健人氏(以上、Lay-duce)
    ※Lay-duceでは現在、スタッフ募集中です。詳しくは公式Webサイトをご覧ください。
    lay-duce.co.jp

    一方、キメラクイーンは左右非対称に棘やカプセルを配置し、体内には生成途中の魔道人形を複数配置。あまり動かないキャラクターだからこそ、目のわずかな動きだけで存在感を印象づける工夫がされている。

    さらに、アリシアが魔道人形と戦うシーンでは、絵コンテの印象を崩さずより迫力を出すため複数パターンのCGアニメーションを制作して提案。監督や制作とのすり合わせでは1回あたりの確認内容の密度を高めることで、リテイク削減につなげた。

    魔道人形のデザインとモデル

    ▲魔道人形のデザイン画。デザインからCG化まで一貫してCGチームで担当した。通常はデザイナーから設定を受け取ることが多いが、前作でクリーチャーのデザインを手がけたながれを引き継ぎ、原作の雰囲気を崩さないシルエットでデザインがなされている
    ▲魔道人形の3Dモデル。前垂れを下げたバージョンと、アクションシーン向けに跳ね上げたバージョンの2パターンを用意して、カットによって切り替えている。ひとつのモデルで全シーンに対応するのではなく、シーンごとに適切なシルエットを選べるようにすることで、原作らしい不気味さと演出の幅を両立させた。なお、関節部は球体で構成し、人形特有の異質な動きが表現できるように設定されている

    魔道人形のシェーダ

    ▲マテリアルリスト。「arm_legs_mtr」「head_mtr」「mask_hat_mtr」「hands_mtr」「kansetsu_mtr」の5マテリアルで構成。身体の部位ごとに独立したマテリアルをもたせることで、後述の配色切り替えを部位単位で管理できるようにしている
    ▲Blenderでのシェーダーエディター画面。ひとつのシェーダーツリーの中に「COL_A」「COL_B」「COL_C」「MSK_BLK」という複数のマテリアル出力ノードを内包している。ノードのつなぎ替えは行わず、選択/非選択の状態を切り替えるだけでレンダリングに反映され、見た目が変わるしくみが構築されており、青枠が非選択、赤枠が選択中の出力ノードで、クリックひとつで配色を差し替えることができる
    • ▲それぞれマテリアルを切り替えたときの比較例。同じモデルに対して、光が当たる場面や暗めの部屋用など、シーンに応じた配色を適用した比較だ
    • ▲マテリアルやノード構成をつくり直すことなく、出力ノードの選択を切り替えるだけで見た目のちがいを再現できる。作業時間の短縮とヒューマンエラーの防止を両立させる設計だ

    魔道人形のテクスチャによる影

    光が当たる部分の影を1号影、当たらない部分を2号影と呼び、ひとつのキャラクターにつき複数のテクスチャを制作。1号影側には基本色やハイライトに加え、常に影として残したい「絶対影」の情報も描き込み、立体感と情報量を保っている。

    基本色・1号影・2号影・ハイライトはそれぞれマスクで管理され、マスクを用いてテクスチャを描き分けることで、色替えを容易に行えるしくみにされている。単に見た目を再現するだけでなく、同じ色は極力1枚のUVにまとめ、1枚のテクスチャ内に複数色がなるべく混在しないよう、UV制作の段階から色替えのしやすさを見据えて、切り分けて配置が行なわれており、後工程での配色変更にも柔軟に対応できるよう設計された。

    • ▲光が当たっている箇所のテクスチャ
    • ▲同マスクの様子
    • ▲光が当たっていない箇所のテクスチャ
    • ▲マスクが白くなっているのが特徴。「01」の1号影は反映されず、基本が影色になる

    魔道人形の攻撃アニメーション付け4パターン

    魔道人形がアリシアを攻撃するカットは、絵コンテの意図を守りつつ、担当者がより良いと思う4パターンのアニメーションを提案している。移動距離やカメラワークで差異をもたせたパターンを用意しておき、あらかじめ選択肢を並べて見てもらうことで後戻りの少ない進行を実現。これにより、リテイクを抑えることができたという。

    「例えば、このカットですと4パターン出しているので、順当にいけばテイク4まで重ねないといけないはずですが、あらかじめ自分のところで満足いくまでパターンをつくってしまえば、一度に見せられるので、総合的には早くなると思います」とアニメーションを担当したCGリードアニメーター・高橋翔月氏は語る。こうしたパターン出しが、限られた人数やスケジュールの中でのスムーズな進行を支えている。

    ▲絵コンテ
    ▲絵コンテに沿って作成された「Aパターン」
    ▲「Aパターン」よりスピードを上げた「Bパターン」
    ▲カメラを横にPANすることで移動距離を出し、「Bパターン」よりスピード感を表現した「Cパターン」
    ▲カメラの動き始めを止めの状態から動かすことで、初手の動きを演出した「Dパターン」。移動距離やカメラワークで演出の差を出していることがわかる
    ▲最終的には、最後に提出した「Dパターン」の案に決まった。画像は色を付けた状態のカット

    アクションシーン作画ガイドのパターン出し

    CGチームが作画ガイドを制作したアクションカット。本カットは、初めは絵コンテ通り上から魔道人形が襲ってくる構図で制作していたが、それでは動きの説得力や迫力が表現しにくいように思われたため、横から走り込んで攻撃するパターンを追加で提案した。

    アリシアのモデルにはほか作品でも使用実績のあるAdjustable Mannequinを使用。付属のリグはあえて外し、アニメーターが操作に慣れているAuto-Rig Proで組み直しているほか、キャラクターのポニーテールに合わせた形状調整や、正中線など作画時の目印になる線の追加も行なわれた。

    このカットは作画と3DCGを組み合わせるため、動きに応じて素材の前後関係が変化する点が難しく、魔道人形の頭と腕をパーツ分けしてマスク処理を施し、After Effects(以下、AE)側で前後関係や見え方を細かく調整できるようにしている。

    ▲絵コンテ
    ▲絵コンテに沿った「Aパターン」
    ▲横から攻撃を仕掛けられる「Bパターン」
    ▲アニメーションOK後、色を変更した状態
    ▲前述の【Bパターン】をベースに制作された完成カット。「魔道人形の動きは違和感の出ない範囲であえて誇張し、よりダイナミックに見せることを意識しました。アリシアへの手刀もギリギリ当たるように見せることで、緊張感を演出しています」とCGアニメーターの桝田烈成氏

    No.3に続く。

    CGWORLD 2026年10月号 vol.338

    特集:アニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』
    判型:A4ワイド
    総ページ数:118
    発売日:2026年9月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎデ)
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada