>   >  ニューノーマルを見据えたファンワークスのシステム構築と、それを支えたリトルビットの取り組み 〜ACTF2021 [SUMMER] (2)
ニューノーマルを見据えたファンワークスのシステム構築と、それを支えたリトルビットの取り組み 〜ACTF2021 [SUMMER] (2)

ニューノーマルを見据えたファンワークスのシステム構築と、それを支えたリトルビットの取り組み 〜ACTF2021 [SUMMER] (2)

一般社団法人日本アニメーター・演出協会による「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2021 [SUMMER]」が7月16日(金)と17日(土)の2日間、オンラインにて開催された。開催2日目のセッション「ニューノーマルに向けてのファンワークスの取り組みと、リトルビットが考えるスタジオDXの未来」では、アニメ制作を手がけるファンワークスと、アニメスタジオのシステム構築を行うリトルビットによる取り組みが紹介された。


TEXT_高橋克則 / Katsunori Takahashi
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE




バックアップシステムの重要性

セッションには、リトルビットから代表取締役の若狭 隆氏と執行役員でエンジニアの柴田雅之氏、ファンワークスからは代表取締役の高山 晃氏、ディレクターの松井久美氏、プロデューサーの石原由加里氏が登壇。まずはファンワークスが、これまでどのようなシステムを導入してきたのかを解説した。

▲(上段左から)若狭 隆氏、柴田雅之氏(以上、リトルビット)、松井久美氏(下段左から)高山 晃氏、石原由加里氏(以上、ファンワークス)

ファンワークスは、2013年に社内のNASサーバが故障したことを機に、リトルビットの前身となる企業にシステム構築を依頼。自社FTPの運用を本格的に開始し、簡易なユーザー管理を始めた。

続いて2017年のスタジオ移転時に、ネットの高速化とバックアップシステムを導入した。若狭氏は移転先への引っ越しにも立ち会い、建物の電気容量が足りるかどうかを確認するなど、様々なチェックを行なったという。

新たなシステムの中で、制作に大きく貢献したのはバックアップシステムである。バックアップは単にデータを保存しておくだけでなく、自動スナップショット取得機能によって、ファイルを誤編集・誤削除した場合も任意のデータに復元できる。

スナップショットの世代は最大1,024個取得でき、取得間隔は最短5分、最長週1回と幅広く設定可能。操作自体も数クリックで済むシンプルなもので、既存のデータに上書きせずに別のフォルダに出力するなど応用が効く。実際にファンワークスでは締切当日にデータを結合してしまうトラブルがあったが、前日までのデータに復元したことで問題なく納品できたという。

▲サーババックアップのイメージイラスト

またバックアップの耐障害性も重視している。メインサーバのハードウェア故障に備えて全てのシステム情報とデータを保存しており、緊急時にはバックアップサーバをメインサーバに昇格させて業務の継続が可能。故障を直した際にはバックアップサーバからシステム情報を復元して、メインサーバに再度復旧できる。

バックアップサーバで運用した場合、新しいデータと古いデータが混在してしまい、メインサーバへの復旧が難しいという状況に陥りやすい。しかし、今回紹介した手法であればデータの亜種を作ることがないため、バトンタッチがスムーズに行える。幸いファンワークスではこれまでメインサーバにトラブルが起きるという事態は起きていないが、緊急時にも対応できる体制を整えているのだ。



スタジオのDXはマネジメントが重要

2020年以降はユーザー管理にActive Directory(AD)を導入。ADの移動プロファイル機能を利用することで、ADアカウントをもつ利用者がパソコンにログインした際に、自分の環境が復元されるようになった。この環境にはデータだけでなく、アプリケーションのカスタマイズも含まれており、例えばPhotoshopで作成したカスタムブラシなども使用できる。

業務で用いる重要データはファイルサーバに格納することで、どのパソコンからもサーバからデータをコピーしての作業が可能。またデスクトップに保存したデータは全てサーバに保存されるため、万が一パソコンが壊れたとしても別のパソコンに移ることですぐに業務に復帰でき、耐障害性の面でも優れている。

▲フリーアドレスのイメージイラスト。リモートワークも実現したことで、ファンワークスでは社内の机よりスタッフの数が多いという環境になった

松井氏は全てのパソコンでデータが同期されることのメリットについて、その日の業務内容によって適切なマシンを選べる点を挙げた。重いレンダリングをする場合は高スペックのマシンを、複数の作業を同時に行うのであればデュアルモニタに接続されているマシンを使用するなど、用途に適したPCを選択できるようになった。

▲リモートワークのイメージイラスト

さらにVPNと仮想化を組み合わせて、テレワークでもスタジオと同じ環境を実現。自宅からのリモートデスクトップと聞くと「自分用の社内PCのみ操作する」と考えがちだが、ファンワークスではリモートのための高性能な共有PCも設置している。そのため、リモート先のマシンでレンダリングをしながら異なるマシンで別の作業を進めるという方法もでき、作業効率のアップに繋がった。

若狭氏はこのようなシステムを構築した上で、スタジオのデジタルトランスフォーメーション(DX)には環境をより良く活かすためのマネジメントが重要になるとコメント。特にリモートワークでは、どうしてもスタッフが物理的に離れているため、情報共有などが難しくなるのもその要因である。

▲ファンワークスではクリエイターとプロデューサーで使用PCを分けており、左下のデスク早見表のピンクがクリエイター、青がプロデューサー用の席。灰色は固定でシェアしない席

それを解決する一例として、松井氏はGoogleスプレッドシートを社内全員で共有し、出社状況と使用パソコンが一目でわかるようにしていることを紹介。スプレッドシートはスマートフォンでも利用でき、入力内容が数秒で反映されるのもメリットである。スタッフはその表を見て、空いているPCを確認してリモートしたり作業が重くなりそうな日のために高性能なPCを予約したりと、柔軟な使い方をしている。

現在は新型コロナウイルスの影響により新たな働き方が模索されている最中だが、このように技術とマネジメントをしっかり組み合わせれば生産性を上げることができる。ファンワークスの取り組みは、リトルビットが考えるスタジオDXの理想的な未来像の1つであり、両社は今後ともチャレンジを続けていくことを語った。





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