Foundry社は9月2日(水)、公式YouTubeチャンネルで動画「Inside Industrial Light & Magic’s VFX: How Netflix’s ‘The Dinosaurs’ was built with Katana and Nuke」を公開した。ILM(Industrial Light & Magic)のシニアコンポジター・Andreas Feix氏が、Netflixのドキュメンタリーシリーズ『ダイナソーズ:恐竜の時代』におけるVFXのメイキングを講演したもので、NukeとKatanaを中心としたパイプラインや効率化の手法を解説している。
Mariを活用した巨大翼竜のSSS制御
40〜50種類の古生物のルックデヴにはMari、Katana、RenderManを活用。ルーマニアのハツェグ島を舞台にしたシーケンスでは、2.5メートルのくちばしを持つ巨大翼竜ハツェゴプテリクスが登場するが、その物理的スケールの大きさから、小鳥と同じ設定でSSS(サブサーフェススキャタリング)を適用しても不自然になるため、Mariのノードシステムでノイズとブラシを組み合わせ、表面層とSSS層の双方に傷や質感のムラを構築してリアルな角質を表現したという。
KatanaでのライティングとSolarisによるUSD連携
全726ショットのライティングをわずか5名で行うため、Katana上では複数のショット間でノードやデータ構造を共有・一括管理できるILM独自のマルチショットワークフローを構築。ドキュメンタリーらしい自然な空気感を保つため、ライトは曇天の環境ライトとトップライトの2灯のみを基本とし、瞳のハイライトのみを例外的に追加してレンダリング負荷の軽減とリアルなルックを両立させたという。
データ連携の面では、HoudiniのSolarisで構築した高密度な植物の背景アセットをUSD形式でKatanaへ引き渡し、エフェクト部門とのやり取りもUSDのレイヤー構造を活かして該当レイヤーのみを転送するという、非破壊かつシームレスなワークフローとなった。
非同期更新を実現するKatanaのセットアップと被写界深度の最適化
Katanaでのレンダリングセットアップでは、背景のビューティパスに恐竜の影を直接焼き込まず、独立したシャドウパスとして個別にレンダリングする手法を採用。これにより、背景や恐竜のいずれかに修正が生じても全体の半分を再レンダリングするだけで済み、コンポジターは作業を止めることなく非同期にショットを更新し、影の濃淡も自在に調整できるようになった。
また、恐竜の巨大さを強調する浅い被写界深度の表現では、計算負荷や容量の制約から完全なDeepデータ(ピクセル単位でデプス方向の複数情報を保持する形式)のレンダリングではなく、USDの背景をカメラからの距離(深度)ごとにスライスする手法を採用。これにより、コンポジット時に破綻のないボケ味を効率的に再現している。
NukeのDeepコンポジットとパーティクル活用
コンポジット工程では、手作業で霧のカードを配置する手間を省くため、Nukeのパーティクルを用いた「Fog Box」を開発。ボックス空間内に実写の煙素材の2Dスプライト画像を発生させ、ライティングのDeepレンダーと統合することで、数分で正しい奥行き位置に立体的な霧を自動配置できる。霧の中の光散乱も、光が距離の2乗に反比例して減衰する法則を模して、複数のBlurノードを指数関数的に連結し、自然な減衰を再現したという。
同様の手法は昆虫の群れの生成にも応用。実写フッテージから抽出した虫のスプライトやNuke内で生成した軽量な3Dモデルの虫をパーティクルで空間に配置し、Deepデータを介して霧やアニメーションの変更にも完全自動で追従するような環境を構築したという。
■Inside Industrial Light & Magic’s VFX: How Netflix’s ‘The Dinosaurs’ was built with Katana and Nuke(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=F5AapbMV5So
CGWORLD関連情報
●Foundry、Nukeと機械学習、AIを組み合わせたハイブリッドVFXパイプラインの解説動画を公開 新しい3DシステムやCopyCat、Beeble AIの活用法など
Foundry社とHugo Guerra氏が、Guerra氏の講演動画「Hybrid VFX pipelines: Nuke + machine learning + AI (Hugo Guerra keynote)」をYouTubeで公開。Nukeの新しい3Dシステムや機械学習ツールのCopyCat、そしてBeeble AIを組み合わせた実験的なハイブリッドコンポジットワークフローについて解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202609-Nuke-Hybrid.html
●Foundry、Nuke&Griptapeワークフロー解説動画公開 RotoPaintから3D化、Nuke 17のライトノードを用いたリライトまで
Foundryが動画「Griptapeを活用したAI画像から3DへのワークフローとNukeでの再ライティング| Foundry」を公開。同社AIオーケストレーションプラットフォーム「Griptape」とコンポジットツール「Nuke」を組み合わせた、AIを活用した画像生成から3D化、リライト(再照明)までのワークフローを解説している。動画の音声は英語だが、Foundry Japanが日本語字幕を用意している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202608-Nuke-Relight.html
●Foundry、バーチャルプロダクションツール「Nuke Stage」発表 Nukeと共通のUI、ノードベースシステムでリアルタイムコンポジットを実現、現在アーリーアクセス提供中
FoundryがインカメラVFX(ICVFX)・バーチャルプロダクション(VP)向け新製品「Nuke Stage」を発表。Nukeと共通のUIとノードベースシステムを採用したソリューションで、VFXアーティストはLEDウォールでフォトリアルな環境(B44 EXR)をリアルタイム再生し、ライブコンポジティングが行える。対応OSはWindows 10/11。現在はアーリーアクセスの段階で、利用にはFoundryへの登録が必要となる。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202504-Nuke-Stage.html