Image Courtesy of Kane Parsons
北カリフォルニアで活動する17歳のVFXアーティスト、ケイン・パーソンズ氏が手がけた人気の短編ホラー映像作品『The Backrooms』が、長編映画化されることが決まった。
監督はパーソンズ氏自身が務め、A24、ジェームズ・ワンのアトミックモンスタープロダクションズ、チャーニンエンタテインメント、21ラップスエンタテインメントが製作に携わる。脚本とエグゼクティブプロデューサーはロベルト・パティーノが担当することが決まっており、パーソンズ氏の夏休みを利用して制作するとのことだ。
『The Backrooms』シリーズは、海外でミームとなっている「リミナルスペース」をモチーフにしたホラー作品。リミナルスペースとは、人のいないショッピングモールや夜のプールなど、見慣れているはずなのに妙に不安をかき立てられる風景のことだ。
『The Backrooms』とは
『The Backrooms』は現在短編16本から構成されている。観たことがない方はぜひこちらの再生リストから視聴してみてほしい
もし手っ取り早く視聴したい場合は、最初に投稿された『The Backrooms (Found Footage)』が良い。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を想起させるような、手持ちカメラによる死角の怖さや手ぶれ表現。舞台は1996年ということで、アナログとデジタルの境界的時期をエフェクトや効果音により巧みに表現している点も素晴らしい。リアルで薄気味の悪いこの作品を、高校生がつくり上げたというのだから驚きである。
本作が話題を呼び、YouTubeにおける『The Backrooms』シリーズは合計1億再生、2022年のはじめにはチャンネル登録100万人超えを成し遂げた。それが今回の長編映画化に繋がるのである。
なお、最初の作品『The Backrooms (Found Footage)』は世界最大級の映像コンテンツデータベース「IMDb」にも登録されており、そのレーティングは7.9/10と高得点を獲得している。
パーソンズ氏の制作ツール
パーソンズ氏を知る一番の近道はInstagramとなる。
制作ツールについては、2020年4月のInstagramの投稿に「はじめてBlenderでレンダリングした」という記述があることから、Blender歴は約3年ほどと推察される。
そしてそれ以降、#blenderとタグ付けされたVFXショットがコンスタントに投稿されるようになる。そのどれもがアーティスティックで習作レベルを超えている点に注目してほしい。
さらに2020年6月から現在まで、#aftereffectsとタグ付けされた投稿も多く登場している。2021年11月の『The Backrooms』シリーズ第一弾の告知投稿には、#blenderと#aftereffectsの両タグがあることから、本作の制作ツールはBlenderとAfter Effectsだと思われる。
音楽制作やアパレル販売も
なお、パーソンズ氏は、Spotifyでは認証アーティストとしての顔も持つ。『The Backrooms』の劇中音楽も自身の手によるもののようで、Spotifyではサウンドトラックとして視聴することが可能だ。その才能には脱帽である。
ちなみに、作品内に登場する研究施設「Async」(非同期の意)のロゴをあしらったアパレルやステッカーなども販売している。商品数が非常に多いことから、おそらく日本での「SUZURI」(GMOペパボ)のようなサービスを利用しているものと思われる。
3DCG制作から映像合成、音楽制作まで手がけ、YouTubeでは金の盾を獲得、さらにはマーチャンタイズまで。ひとりで何でもこなす超人的なパーソンズ氏の動向、そして『The Backrooms』長編映画についての続報に注目していきたい。