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Dynamixyz Performer Suiteは、専用のヘッドマウントカメラ(以下、HMC)、2種類のソフトウェア(Grabber、Analyzer)、2種類のプラグイン(Retargeting Plugin、Real-Time Option Plugin)からなるフェイシャルキャプチャシステムだ。開発元はフランスに拠点を置くDynamixyz社で、日本での販売は2013年11月に開始された。後発ながら世界各国で着実にシェアを広げているという本システムの特徴を、代理店であるゼロシーセブン株式会社に伺った。
手動と自動化を組み合わせた
柔軟かつ効率的なシステム
まずは本システムの特徴を理解してもらうため、基本的なワークフローを解説しよう。なお、本システムはリアルタイムでの運用にも対応できるが、今回はプロダクションクオリティのフェイシャルキャプチャに焦点を当てて紹介する。
最初に使用するのはHMCとGrabberだ。HMCは120fps、640×480dpiでのビデオ収録に対応しており、唇の震えなどの細かな動きまで収録できる。目線の追跡も可能で、重量はわずか310gと軽量ながら、照明(IR-LED方式)やUSBケーブルも装備している。一方ですでに他社のHMCを所有しているユーザは、そちらを使ってもらって構わない。後述するソフトウェアは、他のHMCやビデオカメラで収録した映像にも対応できる。fpsや解像度にも制約はない。Grabberは収録用のソフトウェアで、HMCとセットで使用する。音声やタイムコードも同時収録できる。
続く第2ステップでは、Analyzerという解析用ソフトウェアを使用する。AnalyzerにGrabberを使って収録した映像を入力すると、約40個のフレームがランダムに抽出される(基本はランダム抽出だが、任意のフレームを追加・削除することも可能)。ユーザは、これらのフレーム内における、役者の顔パーツ(眉・目・鼻・口・輪郭)の頂点情報を手動で定義していく。ただし手動で行う必要があるのは全作業の3割以下で、それ以外の部分は、Analyzerがユーザの作業結果を参照しながら自動的に処理してくれる。作業が完了すると、トラッキング・プロファイルと呼ばれるデータが生成され、これを基に映像の全フレームが解析、トラッキング・データとして保存される。このデータは、独自形式のRTGのほか、C3D、FBX、ASCIIテキストフォーマットとしてエクスポート可能だ。
第3ステップでは、Retargeting Pluginに加え、本プラグイン対応のDCCツール(Maya、3ds Max、MotionBuilder、Unityの何れか)を使用する。トラッキング・プロファイルをRetargeting Pluginで開き、Upper (眉)、Eye(目)、Lower(鼻・口)の各領域に対応する、CGキャラクターのリグを選択する。それが完了したら、Analyzerで抽出した約40個のフレームに対応するCGキャラクターの表情を、先ほど選択したリグを使ってDCCツール上で付けていく。この作業はフェイシャルアニメーションにおける約40個のキーとなる表情(キーフレーム)を設定することに相当するため、熟練者ほど高品質な結果が得られる。最後に、対応付けが完了したトラッキング・データをCGキャラクターに流し込み作業完了だ。
キャラクターの演技に
とことんこだわれるシステム
本システムの長所を端的に表すなら「アニメーターが、自らの主観的な思いを、自らの手で反映できる、フェイシャルキャプチャ」となるだろう。要となるのは前述のRetargetingPluginを用いた第3ステップで、役者の表情をあえて誇張したり、各パーツの変形具合を任意に調整することもできる。役者とCGキャラクターの顔の形状が極端に違う場合でも、アニメーターの判断に応じて、様々な対応ができる柔軟性も備えている。「大量のモブキャラクターに対して、フェイシャルアニメーションを機械的に流し込みたい」というニーズはもちろん、「主要キャラクターの演技には、とことんまでこだわりたい」というニーズにも高いパフォーマンスを発揮してくれる。
本システムは、さらなる操作性の向上を目指し、日々改良を重ねている。最新バージョンではノイズ・フィルタリング機能が強化されており、120fpsで収録したデータをファンクションカーブ化し、カーブの頂点フレームは残しつつ、不要なフレームを削除する機能が備わった。さらにSIGGRAPH 2014では、奥行き情報が取得できるマルチカメラに対応したAnalyzerのリリースや、パフォーマンス・キャプチャ用HMCとして注目を集めるTHIRDEYEとの提携が発表された。引き続き、本システムの展開に注目していきたい。
POINT 1
収録した映像を解析しトラッキング・プロファイルを
生成するAnalyzer
上はAnalyzerの作業画面だ。画面下部に並んでいるのは、Grabberで収録した映像からランダムに抽出した約40個のフレームで、これら1つ1つにおける、役者の顔パーツ(眉・目・鼻・口・輪郭)の頂点情報を手動と自動認識を組み合わせて定義していく。唇の内側と外側、右側と左側といった関係性をわかりやすくするため、各頂点に対して色分けがなされている
POINT 2
トラッキング・プロファイルに対応した表情付けを行う
Retargeting Plugin
共にMayaとRetargeting Pluginの作業画面だ。上では、Upper(眉)、Eye(目)、Lowe(鼻・口)の各領域に対応する、CGキャラクターのリグを選択している。コントローラー、ジョイント、ブレンドシェイプのスライダーなど、ユーザがMaya上で設定したリグを自由に指定できる。下では、Analyzerで抽出した約40個のフレーム内の役者の顔を参照しながら、対応するCGキャラクターの表情を付けている
TEXT_尾形美幸(EduCat)