マーベル・コミックを原作とし、実写映画でも根強い人気を誇る『スパイダーマン』シリーズ。同シリーズでは初となる3DCGアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース(以下、スパイダーバース)』が第91回アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞した。その他にもゴールデングローブ賞、アニー賞最多7部門受賞、第24回放送映画批評家協会賞アニメ映画賞などなど、あらゆる賞を総なめするという快挙を達成。

そんな同作には、Sony Pictures Imageworks(以下、SPI)に所属する日本人アニメーターが8名参加しており、アメコミらしい表現と最新テクニックで魅せるフルCGに加えて日本アニメの手法がふんだんに盛り込まれ、作品をより一層奥深いものに磨き上げている。CGWORLD.jpでは、そんな彼らのインタビューを2回に分けてお届けする。後編となる本稿では、若杉 遼氏、小宮健太郎氏、東郷拓郎氏、池田優子氏の4名に制作をふり返ってもらった。

TEXT_UNIKO(@UNIKO_LITTLE
EDIT_UNIKO、小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』予告3(3月8日公開)

Information
『スパイダーマン:スパイダーバース』
大ヒット公開中!
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
www.spider-verse.jp/site
© & TM 2019 MARVEL. ©2019 SPAI. All Rights Reserved.

<1>かっこ良ければそれで良し! 2コマ打ちもフルコマも、全てアニメーターのさじ加減

CGWORLD(以下、CGW):『スパイダーバース』の制作に途中から参加された方も多いかと思いますが、担当されたショットや思い出深いエピソードを教えてください。

左から、池田優子氏、小宮 健太郎氏、若杉 遼氏、東郷拓郎氏(Sony Pictures Imageworks)

池田優子氏(以下、池田):エンディングの近くで、主人公のマイルズと彼のお父さんが抱き合うシーンは思い出深いです。アクションシーンが多い『スパイダーバース』の中でも、自分が好きなアクティングのショットを担当することができて嬉しかったのですが、マイルズのお父さんの表情がなかなかバシッと決まらず苦労しました。


  • 池田優子/Yuko Ikeda
    武蔵野美術大学短期大学部卒業後、デジタルハリウッドでCGを学ぶ。1998年ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)でジェネラリストとしてキャリアをスタート。2000年スクウェア・エニックスに移りゲームのアニメーションに携わる。ポリゴン・ピクチュアズ、、マーザ・アニメーションプラネット、OLMデジタル等を経て2016年からカナダに移りRainmaker Studios、Framestoreを経て現在はSony Pictures Imageworksに在籍。主な参加作品は『キングダム ハーツ』(2002)、『ファイナルファンタジーX-2』(2003)、『ファイナルファンタジーXIII』(2009)、『サーフズ・アップ2』(2017)、『パディントン2』(2017)、『モーグリ: ジャングルの伝説』(2018)、『スモールフット』(2018)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)

池田: 全編を通してアクティング(演技)は監督の指示で、オーバーでないリアリティのある演技になっています。 私が担当したショットで、黒人のお父さんが困った表情をするアニメーションが なかなかOKが出なくて苦労しました。顔のつくりが違うので、自分を鏡で見ても参考にならないですからね。これで良いと思える表情が出来るまで色々な映像や映画を観ました。自分と違う人種の自然な仕草や表情というのは、生まれ育ってきたバックグラウンドが違うので表現するのが難しい時がありますが、アニメーターは俳優の様なものなので、キャラクターを演じるのはすごく楽しいです。

CGW:人種も文化も環境も、まったくちがいますからね。

池田世界中のあらゆる国の人が自然に理解できて楽しめるアニメーションをつくるには、技術に加えて文化的な背景というか、説得力のある仕草や表情を表現しなくてはいけないんですよね。例えば日本の人が " いわゆるアメリカ人っぽい動き" と言われて思いつくのは、"手の平を上に向けて肩をすくめる" だと思うのですが、実際はそれだけではない。日々、様々な人種や年齢の人々を観察して、 自分の中でストックするようにしています。

東郷拓郎氏(以下、東郷):僕はアクションショットが多かったですね。これには経緯があって、『スパイダーバース』のチームにアサインされたとき、英語があまり喋れない状態で。そのマイナスのギャップを埋めるために「こういうショットがつくりたい!」と自分の宣伝も兼ねた『スパイダーマン』のアクションシーンのアニメーションを勝手につくって、いろんなところで発信したんです。そうしたら、リードアニメーターがそれを見てくれていて(笑)。それでアクションチームに入れてもらうことができて、アクションをつくることが多くなりました。


  • 東郷 拓郎/Takuro Togo
    1992生まれ。2012年に名古屋トライデントコンピュータ専門学校を卒業後、ポリゴン・ピクチュアズ、StudioGOONEYSに在籍。2017年にカナダへ渡り現在はSony Pictures Imageworksに所属。これまでにアニメーターとして『山賊の娘ローニャ』(2014)、『シドニアの騎士』(2015)、『亜人』(2015)、『SHOW BY ROCK!!』(2016)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)などに参加。現在『アングリーバード2』を制作中

CGW:海外に出て初めての仕事が『スパイダーバース』の制作だったわけですが、いかがでしたか?

東郷:『スパイダーバース』って「2's(トゥーズ)」といって日本のアニメみたいに2コマ打ちで付けているところがあるんですが、僕は日本でずっと2コマ打ちのアニメ制作に携わっていたので、苦労することなくアニメーションを楽しむことができました。「海外に出たらフルコマのアニメーションをやりたい!」とはりきって日本を出て、一番最初に携わった作品が『スパイダーバース』でまた2コマ打ち(笑)。だから苦労したこともあんまりなかったんですよね。

CGW:前編でも伺いましたが、『スパイダーバース』では日本のアニメを参考にされることが多かったそうですね。

東郷:そうですね。「こういう感じにしたい」と渡されたリファレンスには、日本のアニメの格好良いショットが本当に多くて。だから、僕も作画をやるようなイメージでやっていたし、他のアニメーターとはちがったアプローチでつくっていたんじゃないかなと思います。スパイダーマンはマスクをかぶっていて表情がないぶん、格好良いポーズをキメキメでつくっていました。リードアニメーターが僕にショットをくれるとき、「アニメっぽくクールにしろ」と言ってくれたので、リラックスしてアイデアを出しながらつくることができましたね。

CGW:日本のプロダクションとの大きなちがいを感じた点はどこですか?

東郷:やはり、時間をかけられるのはすごく大きかったですね。以前、日本で働いていた会社ではアニメーターがレイアウトまで担当していたのですが、SPIでは完全に分業になっているんですよ。僕はレイアウトが好きだったので、カメラから全部決めるところまでやりたかったんですけどね(笑)。もうちょっとレイアウトからディレクターとやりとりをしてアニメーションしてみたかったです。

CGW:日本のアニメ制作の現場とSPIとで、制作にかけられる時間はどれくらいちがうのでしょうか?

東郷:ショットの長さによってちがいますが、日本では1日2~3ショットくらいが平均的だったのに対して、こちらでは短くても1週間に1ショットくらいで、長いアクションのショットになると1ヶ月くらいかけます。日本でもTVシリーズの場合は「繋がりで20ショット」という感じでまとめて割り当てられるので、小さいショットは手早く終わらせて力を入れたいシーンには2週間くらいかけるということもありましたが、やはりSPIに来てすぐの頃は、1週間は結構余裕があるなと思いましたね。

とはいえ、詰める情報量が日本とは段違いだし監督とのやりとりも多くて、1週間という時間がだんだん短く感じ始めるんですよ、不思議なことに(笑)。結局、感覚的には日本の制作と変わらないという。なかなか監督のOKが出なくて7回くらい見せては「もうちょっとこうしよう」と言われて、1秒に満たないショットに3週間かかったことも。「これは本当に俺にはできないかも」と落ち込んだこともありました。

池田:『スパイダーバース』はインクラインとか自分で効果をつくらなければならなかったので、普通のアニメーション制作よりスケジュールが乱れることが多かったですね。本来なら「ここで終わり!」なのにまだやらなきゃ、みたいな。

小宮 健太郎氏(以下、小宮):僕はOLMデジタルでフルCGの制作部門にいたので、ずっと24fpsフルフレームのアニメーションを付けていました。日本でずっとアニメを観てきた背景があったので、2コマ打ちは楽しそうだなと思っていたんですが、縁がないまま終わって。で、『スパイダーバース』のプロジェクトで初めて2コマ打ちができると聞いて「楽しそう! ずっとやってみたかった」と(笑)。それも、時間がかけられる状況での2コマ打ちなので、どこまでクオリティが上がるんだろう、とわくわくしていました。


  • 小宮 健太郎/Kentaro Komiya
    東京都出身。デジタルハリウッド大学にてMayaを学び、2011年に同大学を卒業後OLMデジタルにてキャリアをスタート。アニメーターとしてだけではなく、アニメーションTDとしても複数のプロジェクトに関わる。2017年よりSony Pictures Imageworksにアニメーターとして所属。参加作品は『ルドルフとイッパイアッテナ』(2016)、『スナックワールド』(2017)、『モンスター・ホテル3』(2018)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2019)、『アングリーバード2」(2019)など

東郷:初めての2コマ打ちはどうでしたか?

小宮:楽しかった!

一同:笑

CGW:日本ではなくアメリカで2コマ打ちをやるというサプライズですね(笑)。

小宮:『スパイダーバース』は全てが2コマ打ちというわけではなく、ショットの中で最初の数フレームだけ2コマ打ちでその後はフルフレーム、などアニメーターが自分でチョイスできるワークフローだったんですよ。さじ加減はアニメーターの自由でした。1's(ワンズ=フルフレーム)でも2's(2コマ打ち)でもナチュラルに見えればどちらを使っても良くて、とにかく「カッコよければOK」というスタイルで(笑)。1'sと2'sを意図的に使い分けていたというより、「2'sだとちょっとパチパチとした動きになりすぎるから1'sにしようか」と監督から言われる感じで、基本的にはアニメーターのチョイスでした。

CGW:小宮さんにとって、制作で思い出深いことは?

小宮:主人公のマイルズがバイクに乗ったプラウラーに追いかけられるシークエンスです。マイルズがトラックに張り付きながら逃げるショットは自分が担当した中では一番格好良いシーンでもあり大変でもありました。人ってなかなか走っているトラックに張り付けないので、そんなショットで格好良く見せるのは難しかったです。

CGW:そのショットは2コマ打ちで制作されたのですか?

小宮:そうですね、初めは2コマ打ちでつくりました。2コマ打ちがやりたくてワクワクしていたので(笑)。だからまず2コマ打ちで考えて、アクションシーンで動きが大きいとストロボっぽく見えてしまうので、そういうところはフルフレームにして目で追えるように調整しています。こんな感じで、後からフルフレームを足したパターンが多かったですね。

あと、SPIのリグで各キャラクターの「プロキシモデル」という軽いモデルが用意されていたんですが、キングピンのものが少し使いにくくて(笑)。だから、キングピンが扱いやすくなるようにプロキシモデルを自作して、園田(大也)さんをはじめ数名のアニメーターにも使ってもらったら好評だったので、それをチームに導入してもらったんですよ。そうしたら、いつのまにかキングピンを使うアニメーター全員に共有されていました(笑)。

CGW:使いづらいと思いつつも、つくり直す人はいないんですね。

若杉:忙しいのでそのまま使っちゃうんですよね。そんなときにタイミング良く扱いやすいプロキシモデルがシェアされた感じでした。最後の多次元空間でのアクションシークエンスで、マイルズとキングピンが戦うシーンでは本当に活躍してくれました。キングピンのアクションシーンはほとんどなくて、アニメーターがあまり触っていなかったんですよ。最後にキングピンのショットが来るタイミングで小宮君のモデルがリリースされて、本当に助かりました。


  • 若杉 遼/Ryo Wakasugi
    2012年にサンフランシスコの美術大学Academy of Art Universityを卒業後、Pixar Animation StudiosにてCGアニメーターとしてキャリアをスタート。 2015年よりサンフランシスコからカナダのバンクーバーに移り、現在はSony Pictures Imageworksに所属。 映画スタジオでアニメーターとして仕事する傍ら、3DCGアニメーションに特化したオンラインスクール 「AnimationAid」の創設者として、運営の他、講師として教えている。 これまで参加した作品は『アングリーバード』(2016)、『コウノトリ大作戦』(2016)『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017)『スモールフット』(2018)『スパイダーバース』(2019)などがある。『スパイダーバース』は2019年アカデミー賞長編アニメーション部門受賞。

小宮:プロキシモデルをリリースしたものの、そのタイミングで僕はプロジェクトから抜けたので、活躍してくれた実感がないんですけどね(笑)。

若杉:プロキシモデルはいるけどケンタロウがいない! ってみんな言ってたよ(笑)。

池田:アニメーションもシステム系も両方できる人は少ないので、すごく貴重ですよね。

小宮:完全に独断でやったことなので、下手したら怒られるかもしれません(笑)。元々は自分のために使っていたもので、自分でアニメーションを付けるときに使いづらいからつくってたんだけど、という話を園田さんにしていたら、気に入ってもらえてじわじわと周囲に広がっていった感じです。

CGW:日本のアニメ制作現場で、非常にタイトなスケジュールで回転の早い仕事を経験されてきたからこそ、「思い切って扱いやすいモデルを元から作った方が、効率もクオリティも上がるだろう」と直感が働いたんじゃないですか? 日本の制作現場と比べると多少は時間にゆとりがある、という精神的な余裕もあったでしょうし。

一同:確かに。

小宮:日本のアニメ制作は、パイプラインの面ではスピード重視で効率化がすごく図られている会社も多いと思うのですが、SPIではそこまできっちりと効率化されているという訳ではありません。ただ、アニメーター用につくられたツールだけでもかなりの数が用意されています。

池田:SPIではツールのために人を雇っていたりしますからね。ツールの数がすごく多くて、使い方を覚えるのが大変でした。

小宮:印象として、SPIのツールは効率化のためだけではなく「クオリティを上げるためのツール」もあり、そこはツール制作もしていた身からするととても新鮮でした。

次ページ:
<2>仕事にも遊びにも手を抜かないのがSPI流

[[SplitPage]]

<2>仕事にも遊びにも手を抜かないのがSPI流

CGW:若杉さんにとって『スパイダーバース』の制作はいかがでしたか?

若杉:これまで「柔らかい」作品を多く手がけてきたので、『スパイダーバース』では初めての挑戦が多かったです。「格好良い」ものをつくった経験がなかったので表現のさじ加減が掴めず、結構抑えたつもりでも「やりすぎ」と言われたり。でも、何よりも「格好良いのを作るのは面白い」と素直に思いました(笑)。

今までは、コメディ色が強かったり、リアリスティックを求めるショットが多く、「格好良い」を求めるショットは目指したことのない方向性だったので「このショット、ずっとつくっていたい」と思うくらい楽しかったです。

CGW:一番苦労したのはどんなことでしたか?

若杉:ここにいるみんなは日本でのアニメ制作を経験されていますが、自分は一切経験がないんですよ。さらに、アニメをあまり観ないこともあり、本当にアニメのことがわからなくて(笑)。そんな背景がある自分にとって2コマ打ちは難しかったです。あとは影の付け方ですね。インクラインツールでモーションブラーの線を付けられるんですけど、日本ではアニメーターがライトを調整して影を付けたりしますよね。『スパイダーバース』でも影の線があったので、影のしくみも理解しておかなければならなかったんです。「ライトをどこから当てたら格好良いのか」が全然わかっていなかったのでとても勉強になりました。インクラインにしてもシワを入れる配分も、やりすぎが多かったです。

CGW:皆さん、どういった資料を参考にされて制作されていましたか?

若杉:『スパイダーバース』の制作では、設定資料やモデル資料、ポーズのライブラリといった参考資料が全然なかったんですよね。これには驚きました。ただただ「格好良ければいい」という感じで(笑)。コマ打ちに関しても、参加する前はキーの打ち方とかポーズの付け方とか、かなり厳密な決まりがあるんだろうなと思っていたんですが、何の説明もないままショットをもらって、「何これ......」と唖然としていました(笑)。だから、他のアニメーターがつくったショットが一番参考になりましたね。

東郷:ショットによっては監督のアイデアが固まりきっていないこともありました。アニメーターが出したものを「それ良いね」とプッシュして制作することが多かったです。僕がつくったショットで、グウェンが雪山で敵にキックするショットがあったんですが、『ストリートファイターIII』のキャラクター、エレナの要素を少し参考にしたら好評で。エレナの動きを完璧に取り込むわけではなく、あくまでも参考にする程度なんですが。でもこれがきっかけで、グウェンはキックの攻撃が多くなったと風の噂で聞きました。こんな感じで、アニメーションを付けているときに「キャラクターの核心に迫る動き」を発見することは結構ありましたね。

CGW:働く環境としてオフィスの雰囲気はいかがでしたか?

東郷:みんな楽しむのが上手ですよね。前回も話題に出ていましたが、「デスクデコレーションコンテスト」というのがあって、デスク周りをスパイダーマンっぽいもので飾ったり、スタッフが描いたファンアートを壁に貼り出したり。誰か1人がやり始めたら、それがどんどん広がっていくんですよ。みんな遊び心に溢れているというか、遊びにも真面目に取り組む姿勢がとても良いんですよ。モチベーションが上がります。

若杉:ほんと、忙しくてもみんな楽しむことが上手いです。やっぱり残業も多くなるので、楽しい要素がない中で静かに重い感じで仕事していると、気分が沈んじゃいますよね。

小宮:残業の話で言うと、日本で働いていたときは監督レビューが2週間に1回くらいで、レビューまでの2週間は結構自分のペースで作業に集中していましたが、SPIは毎日レビューに出すタイミングがあったので、追われるようなプレッシャーは感じました。極端に言うと、毎日締切がある感じですよね。

東郷:どう? って聞かれるよね(笑)。

池田:提出時間が決まっているから、ギリギリまでがんばって良いものを出そうとすると「あと10分しかない!プレイブラストが終わらない!」といった感じで、ドキドキしながらみんなやっていると思います。

CGW:最後に、みなさんの今後の目標や挑戦してみたいことを教えてください。

池田:SPIには上手い人が本当にたくさんいるので「もっと上手くなりたい」のが今のところの目標ですね。アニメーションだけでも絵的なセンスがすごく問われて、モデリングやレイアウトも写真のようだったり。アートのセンスがとても求められるなと以前から思っていたので、もっと突き詰めていきたいです。

小宮:僕もまだまだ現状に満足できてなくて、もっと上手くなりたいですね。今SPIで仕事ができて上手い人がたくさん周りにいて、自分にとってすごく良い環境だなと思うので、残れるだけ残って突き詰めていければ。そして、いつか日本のアニメーションに還元できれば良いなと思っています。いつのことになるのかわかりませんが(笑)

若杉:僕はアニメーションってそもそも子どもたちに夢を与える仕事だと思っていて、自分たちが伝えるメッセージとして「何を子どもたちに残していくべきか」に真摯に向き合って作品を作ること。そして、アニメーションを教える仕事もしているので、作品を通して夢を与えたりアーティストとしての仕事の仕方やライフスタイルを発信して、子どもや若い人たちに「こうなりたい!」と思ってもらえる生き方ができたらなと思っています。

アニメーターとしてできることには正直に言うと限りがあるので、いくら自分が「こういうメッセージを残したい!」と強く思っていても、その思いが必ずしも作品と合うとは限らないんです。だから、自分で作品をつくる、監督をするなど、具体的な目標をもっています。『スパイダーバース』のアニメーションには日本人が9人ほど携わっていますが、海外を見渡してもここまでたくさんの日本人が参加しているのは珍しい気がするんです。だから、これを励みに日本のクリエイターの皆さんに「自分にもできるかも」と希望が与えられたら、と本当に願っています。

東郷:僕は、ショートフィルムのようなものだったり、2~3分程度のものでも良いので、自分で監督して作品をつくってみたいですね。学生のときにつくったショートフィルムが賞をもらったことがあって、それがすごく嬉しくて。完成したときの達成感も忘れられないですね。だから、アニメーターでもいたいですし、そのかたわらで自分が格好良いと思える作品をつくってみたい。そういう意味でも、『スパイダーバース』のような格好良い作品に携わって監督たちとやり取りができたのはすごく貴重な経験になりました。監督が何を考えているのか、何に気をつけているのか、アニメーション以外でもこの作品に関わって勉強になったことがたくさんありました。

CGW:良いですね! 楽しみにしています!

若杉:CGWORLDで公言しちゃったね。文字で残っちゃうよ(笑)

東郷:いやいやいやいや、ふわっとした「子どもの夢」みたいな、そういうノリですよ!?

CGW:もう記事に書くことを決めちゃいました(笑)。

若杉:5年後やってなかったら、記事を見せよう(笑)。

東郷:~~~~!

一同:笑