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MVNは17個の慣性センサーを搭載したフルボディスーツで、モーションキャプチャ経験のない人でも導入可能な手軽さが魅力だ。スーツ着用後、専用ソフトのMVN Studioでキャリブレーションなどを行うだけでモーション収録を開始できる。ディレクションシーズでは2013年の6月にMVNを導入し、遊技機案件で積極的に活用してきた。そんな同社スタッフに、MVNの使用事例を紹介して頂いた。
Excelに入力された仕様や絵コンテを確認しながら、次々にモーションを収録していく中西氏。時には、気になった点や、アニメーターへの申し送りをメモすることもある。MVNの着用、モーションの収録、データの確認など、全ての作業を1人で行えるため、非常にコンパクトな体制での運用が可能だ
▼About Company
株式会社ディレクションシーズ
パチンコ、パチスロ液晶ソフトの企画・開発を事業の柱としており、セルルックの作品を手がけることが多い。手付けアニメーションを得意とするスタッフが数多く在籍しており、クライアントからは外連味のある派手なアクションやカメラワークが高く評価されている。
アニメーションの責任者が
MVNのアクターを兼務する
CGWORLD(以下、C):ディレクションシーズさんがMVNを導入したのは4ヶ月前だそうですが、すでに相当使い込んでいるご様子ですね。
山口氏(以下、山):MVNの存在は以前から知っていましたが、頭身の低いキャラクターを扱うことが多い当社で活用しきれるかどうか疑問でした。ところが今年に入り、リアルテイストの案件を受注することになったのです。
中西氏(以下、中):この案件は作業量が多かったので、思いきってMVNを導入した結果、当社のワークフローとの相性が非常に良いことがわかりました。デフォルメテイストの案件でも、充分に活用できると感じています。
C:作業量の増加に対応するためのモーションキャプチャ導入だったわけですね。MVN以前にキャプチャを導入した経験はありますか?
山:当社は手付けアニメーション主体ですが、1度だけ光学式のキャプチャスタジオで収録したことがあります。しかし我々が思い描く動きをアクターさんに伝えきることができず、結局は中西が大部分を修正しました。
中:確かに精度の高いデータは収録できました。しかしアクターさんの動きには、我々が期待する外連味や個性がなかったのです。
山:中西が作るモーションには個性があり、当社ならではの価値になっています。これを手軽に量産するための最適解がMVN導入でした。
C:だからアニメーションの責任者である中西さんがアクターも兼務しているわけですね。
中:そうです。私がMVNを着用し、自分が理想とする動きを実演します。そして理想に届かなかった部分や、MVNの精度に問題があった部分は、社内のアニメーターたちに後から修正してもらいます。例えば「キックの足が上がりきってないから、もっとスタイリッシュに引き上げてね」といったお願いをするわけです(笑)。
圧倒的な効率化と
クオリティコントロールを実現
山:遊技機案件は全ての仕様が決定するまでに時間がかかるうえ、リテイクが多くなりがちです。仕様が確定した後で、光学式のスタジオでまとめて収録するというワークフローは現実的ではありません。
中:MVNがあれば、リテイクを受けた当日に収録し、翌日にデータを修正して再チェックに出すといった緊急対応も可能なわけです。
C:では連日MVNの収録を行なってきたと?
中:流石にそれはないです(笑)。実際には週1~2回、1回当たり1時間ほどのペースで収録してきました。集中して40~50カットのモーションを一気に収録しましたね。
C:1時間で50カットは多いですね。
山:アニメーション経験の豊富な中西ならではの仕事だと思います。仕様書や絵コンテを見れば、キャラクターの立ち位置や求められる演技、カメラの設定などを想像できるので、収録中に迷うことがないのです。
中:収録したデータはBVH形式で出力し、3ds Maxに読み込みます。この段階で使用するデータを選り分け、最低限の修正を行います。さらにBiped 用にBIP形式で出力し、アニメーターたちに最終調整をしてもらうのです。非常にシンプルなワークフローで、キャプチャの専門知識は必要ありません。
山:光学式の設備を社内に導入することも検討しましたが、機材がMVN以上に高価なうえ、熟練の技術者を雇用する必要もあります。現時点の当社のニーズであれば、MVNで充分に満たせると判断したのです。
C:MVN導入で、どの程度の効率化が実現しましたか?
中:日常芝居のモーションであれば、手付けの10倍の速度で制作できる場合もありますね。加えて、クオリティやテイストの統一が以前よりも容易になりました。
山:手付けだと1 週間以上かかるアクションであっても、MVNを使えば1~2日で終わります。スタッフの負担を増やすことなく、圧倒的な効率化が図れたのは嬉しいですね。
中:精度の点では光学式に劣りますが、MVNの手軽さは非常に魅力的です。今後はより広い貸会議室を使って、ダイナミックな演技も収録していきたいですね。
POINT 1
熟練アニメーターが
MVNを着用し身体に染み付いた
動きを効率的に収録
長年3DCGアニメーションに携わってきた中西氏の身体には、外連味のある動き、人目を引く動き、味のある動きの数々が染み付いている。加えて、仕様書や絵コンテを見ただけで、3DCG空間内におけるキャラクター、カメラ、ライトなどの位置関係が想像できる。そのため、短時間で数多くのモーションを効率的に収録できるという。「若手アニメーターには真似できない技術ですね」と山口氏は語る
POINT 2
普段は打ち合わせに使う
社内の会議室で手軽に
モーションを収録できる
[上]普段はスタッフやクライアントとの打ち合わせに使用されている社内の会議室。[下]モーション収録の際には、机と椅子を壁際に寄せてスペースを確保する。「収録したデータをサーバに格納し、隣室の私の席に戻って3ds Maxを起ち上げれば、すぐにCG制作を再開できる。この手軽さが最大の魅力です」と中西氏は語る
TEXT_尾形美幸(EduCat)