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ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(以下、SNC)は"ソネット"の愛称で親しまれたインターネットプロバイダであり、NUROというブランドで世界最速のインターネットサービスも提供している。 そのSNCが法人向けにデジタルマーケティングやクラウド、法人向けインターネット接続などのソリューションサービスも提供しているのはご存じだろうか? 今回、SNCが新たなクラウドサービスとして「レンダリングシェアードサービス」を2016年7月に開始したとのことで、技術検証を行なったアスピックワークスの阿部 司氏と、VCA開発元であるNVIDIAの柿澤 修氏にその使用感とVCAの魅力に関してお話を伺った。
高速なグラフィック処理と導入コストにメリットを感じる
GPUベースのレンダリングサービス
SNCのレンダリングシェアードサービスは、インターネット経由でNVIDIA Quadro VCAを使ったGPUベースのクラウドサービスだ。
プロジェクトをアップロードしたり、レンダリングされたファイルをダウンロードする手間がかからず、あたかも自社内サーバーのように扱える。
今後GPUベースのレンダラーを導入するのであれば、社内でシステムを構築するよりすぐに利用ができ、制作コストを抑えることができる、非常にメリットのあるサービスとなっている。
NVIDIA Quadro VCAは、CPUに20コアのXeon E5(2.8GHz)、またQuadro M6000相当を8基搭載した非常に高速なGPUレンダリングサーバーだ。
昨今のCG制作現場において、GPUレンダリングはCG制作中のプレビュー目的で使うことが多く、高速でプレビューしたいときはGPUで、本番のレンダリングはCPUベースで、と大抵は使い分けていると思う。
だが、CPUに比べてGPUの性能向上速度は目覚ましいものがあり、本番のレンダリングにおいても、今後非常に魅力的なリソースになると予測される。
いきなりCPUベースからGPUベースに完全に移行することはコスト的にも敷居が高く、個人でCG制作をしている方やフリーランスのCGクリエイターにとって、スピードのメリットは感じていても導入費用が高く、なかなか簡単に購入に踏み切れない費用だ。
それならば、そもそもレンダリングサーバーを自前でもつのではなく、レンダリングシェアードサービスのような外部リソースを使うことを前提としたワークフローを構築しGPUベースのレンダリングに移行するのが良いのではないだろうか。
ワークステーションの"3倍超"の速さ
対応ソフトの多さ、使い勝手の良さも魅力
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アスピックワークス 阿部 司氏 - 今回はアスピックワークスの阿部司氏にCinema 4DとIrayを用いて、実際のレンダリングシェアードサービスのパワーと使い勝手を検証していただいた。 「Cinema 4Dの開発元であるMAXONの担当者にSNCさんをご紹介いただいて今年4~5月にレンダリングシェアードサービスの技術検証に携わらせていただきました。 いままではV-Rayをメインで使っていたんですが、レンダラーを新規に導入しようかと思って何種類か試していて、その中にIrayも入っていたんです。 残りはArnordとCorona Renderer、OctaneRenderと計4種類のテストをしてどれが良いかなと。その時に偶然今回のサービスの検証のお話をいただいたので使わせていただきました」と阿部氏。
今回の検証結果をみてみると阿部氏のPC(グラフィックスボードはNVIDIA GeForce GTX 980×1基)の場合、レンダリング1回あたり約2時間かかるところが、レンダリングシェアードサービスを使うと37分と、おおよそ3倍超のスピードで処理ができた。
このサンプルシーンはおおよそ300万ポリゴンほどのデータと、4Kテクスチャ、HDRIとキーライトという構成であり、レンダリングサイズはA4サイズ350dpiなので4,093×2,894ピクセルとなる。
それをこのクオリティとスピードでレンダリングできてしまうのは驚きだ。
検証に使用されたシーン画像
またムービーのレンダリングの検証もしており、このシーンを1,500フレーム、30fpsで50秒分レンダリングしたところ、NVIDIA GeForce GTX 980が1基のPCで約100時間かかるところが、レンダリングシェアードサービスを利用したところ約38時間と、やはり大きく差が開いた。
静止画ほどの差がでなかったのはおそらくネットワーク環境と、ファイル数の差によるINPUT/OUTPUTによるスピードのためだとは思うが、それでもこのスピードは魅力的だ。
またお話を伺っていて筆者もかなりメリットに感じたのは、このレンダリングシェアードサービスはスピードだけではなく、対応力にも優れている点だ。
Iray、V-Ray RT、OptiXといったレンダラーに対応しており、またCG制作アプリケーションもCATIA、3ds Max、Maya、Revit、McNeel Rhinoceros、Cinema 4Dなど様々なアプリケーションに対応している。
使用方法としては各レンダラーの設定で、レンダリングシェアードサービスのサーバーのアドレスとアカウント情報を設定すれば、後はあたかもローカルのサーバーのように振る舞ってくれる。
つまり、プロジェクトファイルをアップロードしたり、レンダリング結果をダウンロードする必要のあるレンダリングサービスとは違い、レンダー結果がローカルドライブにつくられる。
多少ネットワークスピードの影響は受けるが、この手軽さも魅力だ。
レンダリングサービスを借りた時に良くある、更新したファイルのアップロード漏れや、ファイルのアップロード/ダウンロードの面倒もなく、ミスも減らすことができる。
SNCのインテグレーションサービス部ソリューション営業課の白井大祐氏曰く「ネットワークの接続スピードやアプリケーションの動作に不安があるようでしたら、技術検証をしていただけますので、お気軽にお問い合わせ下さい」とのことだ。
今後も進化し続けビジュアライゼーションの世界で
そのパワーを発揮するNVIDIAのGPU
もう1つの事例として、隈研吾建築都市設計事務所が制作したフィリピンの首都マニラで計画中の博物館のVR画像をご紹介しよう。こちらは3ds Max + Irayで制作されていて、EXRで4,096pixel×2,048pixelの解像度のものだ。
時間の比較をしてもらったのだがQuadro M6000を1基使用してレンダリングした場合、600分かかるところが、レンダリングシェアードサービスを使用してレンダリングすると76分と、およそ8倍のスピードでレンダリングされている。
VCAはQuadroが8基搭載されているのだから8倍は当然、と思うかもしれないが、CPUレンダリングの場合、搭載コア数が10倍になってもレンダリングスピードは10倍にはならないのが常識で、単純に8倍になっていたのは筆者にはカルチャーショックだった。
このシーンはおおよそ340万ポリゴンのシーンだが、ライトが60数個仕込まれており、レイトレーシングしたときにかなり高負荷になるシーンだ。 しかしながらVCA + Irayであれば、こういった高負荷のものも非常に綺麗にレンダリングできてしまうのが特徴だ。 IrayはNVIDIAが最も力を注いでいる物理ベースレンダラーで、近年普及しつつある非常に高品質なレンダラーだ。 とくに建築ビジュアライゼーションや自動車関係、またプロダクトデザインの分野で使われているレンダラーで、当然ながらVCAとの相性がとてもいい。 今後増えていくであろうVR分野においてもとても心強いレンダラーだ。 Irayは元々非常に高価なレンダラーだったのだが最近は各アプリケーションのプラグインレンダラーとしても販売されており、GPUレンダリングを導入してみようと思っている方々は是非一度使っていただきたい。
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NVIDIA 柿澤 修氏 - また、柿澤氏は「今後はレンダリング手法が変わってくると思います。 CPUレンダリングの場合、スピードを向上させようとするとクラスタを増やすということになり、レンダーファームによってはコストがかさみます。 GPUの場合、世代が代わることで、4割から5割くらいずつ処理スピードが上がっていきますが、価格は前の世代と同程度でリリースしておりますのでコスト面での負荷は小さいと思います。 また、CPUに比べて、GPUの方が画像解析には適しているという側面もあります」とGPUレンダリングのメリットを語ってくれた。 NVIDIAとしては物理ベースのレンダリング環境とシェーダを整備し、今急成長しつつあるVR分野でもVCAを活用できるように様々な開発を行なっているようだ。
「レンダリングサーバーはクラウドサービス化されていく」
そんな予感をさせるSNCのレンダリングシェアードサービス
筆者は普段の制作現場ではCPUベースのレンダリングサーバーを使うことがほとんどで、いままでGPUベースのレンダリングというものを本格的に使ったことは無かった。 だが今回、阿部氏と柿澤氏にお話を伺って、「時代に乗り遅れそう」という危機感を感じた。 一昔前のGPUレンダリングではアルファチャンネルも出ず、レンダーパスも出力できなかったため合成作業が困難というイメージがあったのだが、今回検証で使われたIrayはそういった点でもCPUレンダリングと比べて全く遜色がない。 そのため自分の環境に応じてCPUであれGPUであれ、どちらでもレンダリングができるし、結果もそれによって左右されるわけではない。 それであればより高速なGPUでレンダリングすればいいじゃないか、という思いに到ったが、やはりQuadroをそう何基も所有するわけにもいかない。 それならばいっそのこと、最初から最終レンダリングはこのレンダリングシェアードサービスにお任せしてしまう方がスピード、コストの両面においてメリットがあるのではないかと感じた。 レンダーサーバーを構築しても速いスパンでシステムを入れ替えなければならないし、電気代や、廃熱・騒音問題もある。 今はちょうど、CPUベースからGPUベースへの移行期でもあり、これを機にファイナルのレンダリングはレンダリングシェアードサービスにお任せするというのは有力な選択肢のひとつなのではないだろうか。
TEXT_草皆健太郎(BOW)
PHOTO_蟹 由香
■サービス情報
レンダリングシェアードサービス
・1週間コース:NVIDIA Quadro VCA(1台/1週間):20万円(税抜)
・1日コース :NVIDIA Quadro VCA(1台/1日):3万円(税抜)
※ご利用前に接続テストなどお試しいただく場合も、気軽にお問い合わせください。
詳しくは
同社サービス紹介ページをご覧ください。
■企業概要
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
〒140-0002
東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド TSタワー
URL:http://www.so-net.ne.jp/solution/
お問い合わせはこちらから
INFORMATION
柿澤 修/Osamu Kakizawa(NVIDIA)
阿部 司/Tsukasa Abe(アスピックワークス)
「レンダリングシェアードサービス」(ソニーネットワークコミュニケーションズ)
GPUベースのレンダリングサービスで、3万円(税抜)/1日もしくは20万円(税抜)/1週間でインターネット経由でNVIDIA Quadro VCAを使用してレンダリングできるサービスだ。VCAは1台につきQuadro M6000相当が8基搭載されている超高速GPUレンダーサーバーだ。
近年は、GPUの処理能力の向上が著しく、徐々にGPUベースのレンダリングの時代がやってきている。CPUベースのレンダリングからの移行を考えるとコスト的に躊躇してしまいがちだが、初期導入コストが抑えられ、かなり高速にレンダリングができるため、今後重要なサービスとなっていくことが予想される。
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