STEP 03:「炎の渦」を考える ~渦を形づくるメカニズムが大切だった~
VortexとFumeFX 4.0の新機能「Spline Follow」で火を形づくる
STEP 03は火災旋風による炎の渦を再現していきます。STEP 01で説明したように、火が渦状になるには周囲から空気の引き込みや上昇気流が大切な要素となります。
火が渦状になるには、空気の対流からの上昇を再現することが重要です
この要素を3DCG上で再現するためにFumeFX 4.0から追加された新機能[Spline Follow]を軸に制作します。この機能の主な特徴は、適用したシェイプに火や煙が沿うような動きをシミュレーションに反映できるようになることです。今までのようにレンダーワープなどの後処理で強制的に変化させるのではなく、シミュレーションから形をコントロールすることができるので破綻なく意図した動きを実現できるようになり、今回の火柱のような形状を目指すにはまさにうってつけの機能と言えます。
FumeFX 4.0の新機能[Spline Follow]は、適用したシェイプに沿って火や煙のシミュレーションを行うことができます
さて、さっそく[Spline Follow]を用いて火の渦となる部位の形状をコントロールしていきます。ランダムにうねり続けることを考慮し、シェイプのポイントを動画の火の動きに合わせてアニメーションを付けていきます。次にシェイプのながれがシミュレーションに影響するよう[Inf.Radius]、[Along Axis Force]の[Strength]の値を調整し、シミュレーション時に火がどれくらいシェイプに忠実に沿うか、シェイプ方向にどれだけ重力の影響を与えるかを設定します。そうしていったんシミュレーション結果を確認したものが下の画像になります。パラメータ調整によって結果が大きく変わるので、理想の形になるようトライ&エラーをくり返します。
Spline Followを用いて、シェイプの頂点を火柱の動きに合わせてアニメーションさせていきます
形状がある程度完成したら火に回転を加えていきます。渦を再現するために今回使用するのはスペースワープの[Vortex]です。このスペースワープは適用したものに対して渦状の動きを付けることができる機能です。普段はパーティクルの動きに使用することが多いのですが、FumeFXに適用することでシミュレーションの際、火や煙に渦状の動きを加えることができるようになります。主に調整するパラメータは3つ。[Axial Drop]では軸方向による速度、[Orbital Speed]は回転の速度、[Radial Pull]はアイコンの軸を中心に回転を行う距離を指定します。この[Vortex]と[Spline Follow]を組み合わせて微調整したのち、再度シミュレーションしたものが適用結果の画像となります。画像だけでは少し伝わりにくいかもしれませんが、柱状の形を維持したまま火にうねりを加えることができました
中心の火柱が完成したら地上付近で燃え上がっている火を制作します。こちらも同じくFumeFXを使用してパーティクルをベースにシミュレーションを行います。この地上で燃えている火も火柱と同様、火災旋風により引き込まれていますので柱状とはいかないまでも中心部に吸い込まれているような振る舞いをさせるため、先ほど火柱のために用意した[Vortex]を適用しておきます。
火柱、地上の火のレンダリングが完了したらコンポジット上で組み合わせ、モーションブラーをかければ火災旋風による火が完成となります。
火柱と地上で燃える火のレンダリング素材をコンポジットし、火の完成です
STEP 04:「砂煙」を考える ~引き込まれる砂煙を再現する~
発生ソースの特徴を活かして砂煙を再現する
リファレンス動画では炎の渦とは別に、砂煙が渦状に巻き上がっているのが見て取れます。STEP 04ではこの煙を再現していきます。この砂煙も炎の渦と同じように周囲の煙を中心部に引き込むことで巻き上がっているようです。さて、制作にあたって要素を2つに分けて再現することにしました。1つめは火災旋風に引き込まれて竜巻状になった煙。もう1つは中心部に引き込まれていく地上の煙です。
火柱の周囲に巻き上がる砂煙は、竜巻状の煙と地上の煙の2つに分けられます
両要素ともFumeFXで制作するのですが、竜巻状の煙は回転スピードやシルエットが調整しやすいオブジェクトべースで制作。地上から引き込まれる煙は自然な動きや質感を調整しやすいパーティクルべースで制作していきます。地上の煙は竜巻を中心に左右に流れる煙をシミュレーションし、コンポジット上で竜巻状の煙に挟み込むことで煙が中心部に集まっているように見せます。
竜巻状の煙はオブジェクトべース、地上の煙はパーティクルべースで制作します
最後に竜巻と地上の煙が馴染むようにカラー調整を行なったら完成となります。
完成
「火災旋風」いかがだったでしょうか。この自然現象の恐ろしいところは、竜巻と同じように一点に留まらず空気のある方へと移動をくり返すため被害が増す一方だということ。これが都市部に発生したらと思うと、身震いしてしまいます。遭遇する日が来ないことを祈りつつ、次回またお会いしましょう。
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近藤啓太(ジェットスタジオ)
エフェクトを中心に映像制作をしております
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JET STUDIO
ゲーム、映画、遊技機映像など幅広く制作を行う、3ds MaxをメインツールとするCGプロダクション。ベトナムにも支社を構え、大規模な制作体制を採っている
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