<3>キャラクター制作
キャラクター制作において、NHN PlayArtから提供された資料は原案イラストやゲーム内のカード、そしてゲーム内のキャラクターモデルだった。ゲームのモデルは様々なスマートフォン機種に対応させるため、ポリゴン数を抑えて構築されているが、映像作品に登場させる上ではブラッシュアップする必要があった。それでも「色や等身があらかじめ決まっていることが指針となり、とてもつくりやすかったです」(児玉監督)という。
ポリゴン数はまとい(成長後)が約15万ポリゴン、祖父や弟子は3万ポリゴン程度。キャラクターモデリングを担当したECHOESの下崎由加里氏は「原案のイラストに沿うように頭身を整えつつ、CGだからこそ表現できる情報量を盛り込みました」と語る。
●キャラクターデザイン
ゲームにおけるまといの全身設定画(左)と、武器の設定画(右)
ゲーム内のカードとして登場するまといの祖父(左)。また、別のカードには特に設定が決まっていない少年キャラクター(右)がおり、それを祖父の弟子という役回りで登場させた
●設定画本作のために描き起こされた幼少期のまといのキャラクターデザイン。場面転換の度に新たな衣装を着せることで、短編でありながらも映像にボリューム感を出している
まといの祖父や弟子の表情は本編より大きめ
●キャラクターモデル
NHN PlayArt から提供されたまといのゲームモデル(左)と、ECHOESで制作した短篇アニメ用のモデル(右)
幼少期のまといのモデル。成長後のモデルからの延長線上で頭身を縮めて可愛さを出していった。可愛さのポイントは瞳孔の輝き。設定上は5~6歳だが、絵面としては10歳ほどで、動きを引き立たせるために情報量を少なくしてある。「アップのシーンが多い作品なので、造形のときから顔の部分にはこだわっています。眼のハイライトは最初から入れたいと思っていました。髪の造形は後ろから見ても前から見ても、絵で描いたようなデザインのあるボリューム感にこだわりました」(下崎氏)
●ペイントオーバーによる修正モデルの修正は、下崎氏がCLIP STUDIOを使用し、ペイントオーバーで方向性を描き入れるかたちで行われた。ECHOESにおいて作画作業も担当する下崎氏ならではのやり方と言える。CLIP STUDIOを使用しているのは、「線を補正したりブラシをコントロールしたりするインターフェイスが使いやすく、入り・抜きの設定や濃さが制御しやすい」(下崎氏)と、使い勝手の良さが大きな理由だという
●ノイズテクスチャによる髪への質感追加
本作のキャラクターはセル調で描かれているが、NHN PlayArtのリクエストにより、鉛筆のようなタッチが追加されている。当初はテクスチャで試みたが、数が多く全てを描ききれないと判断し、3ds Maxのノイズテクスチャを引き伸ばしてグラデーションを乗算することでタッチを加えていった。これは本作ならではの試みだったという
<4>リグ&アニメーション
セットアップは児玉氏とともにECHOESを設立当初から支えるモデラー・CGアニメーターのたかあき氏が担当した。リギングはまず3ds Maxで最小限の骨入れを行い、MotionBuilderで整え、3ds Maxに戻して最後の微調整を行うという手順で進められた。
アニメーションにおいてはモーションキャプチャを使用せず、全て手付けで制作している。「実際に自分で動いて演技を確認しました。日常芝居は良い動きになるまでに時間をかける必要がありました。指先の動きと表情は、特に視聴者が注目する部分なので丁寧につくりましたね」(たかあき氏)。
●リグ
大人まとい(左)と子どもまとい(右)のリグ。児玉監督からは「今回アクションが多いわけではないので、キャラクターの重心や姿勢が映える絵面で、ムダに動きすぎないように」という指示があったという
●フェイシャル
大人まとい(左)と子どもまとい(右)のフェイシャルリグ。表情はMotionBuilderのスライダで骨を1本ずつ制御している
まといの祖父は表情を動かしすぎるとシワが目立つため、表情の変化が少ない。怒る場面ではボーンではなくポリゴンをつくり直すことでシワを増やしている。左:シワの調整前、右:調整後。影は四角のポリゴンを三角に繋いで見せている部分も
●揺れもの
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髪、服などの揺れものは、MotionBuilderでボディモーションを作成した後、3dx Maxのスクリプトで揺らしている。その後MotionBuilderに戻して修正を行い、さらに3ds Maxで調整する。布地が突き出してしまう部分はポリゴンを編集して直す必要があったという
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- たかあき氏がこだわったカットは、先ほど藤田氏が絶賛していた「花火の玉を回すカット」。「火薬の粘土的な硬さが表現できているか」が、地味ながら苦労したポイントだったという。実際の工房では1色ずつ火薬をつくっていくそうだが、演出上の意図からカラフルにしている。それまで日常芝居を丁寧に積み上げてきたからこそ、派手な色合いが大きく映える画面となった