トピック8:子供に勧めたい作品、与えたいもの
南家:最後に、皆さんが子供の頃に見て感銘を受けた作品や、子供に勧めたい作品、与えたいものをお聞きしたいです。その人の創造性のルーツや、子育ての考え方が見えてくるので、大変興味があります。
箱崎:すごく悩ましいです。思い浮かぶ作品は本当にたくさんあるのですが、なんとか2つに絞りました。1つめは漫画の『聖闘士星矢』(1986〜1990/作者:車田正美)です。私自身は、親の影響で子供の頃は漫画をほとんど読んでおらず、大人になってから読み始めました。でも自分が読んで面白かった作品は、子供にも読んでもらいたいなと思っています。小学生になったらこれ、中学生になったらこれ、というように子供の年齢に合わせて徐々に勧めていきたい作品がたくさんあるので、それらを集めた「こども文庫」を自宅に設けたいと考えています。その中に入れたい作品の筆頭が『聖闘士星矢』です。
余談になりますが、息子は蟹座なんですよ。出産予定日は7月後半だったので獅子座になれると思ったのですが、出産が早まることになり「蟹座と獅子座とでは、全然ランクがちがう!」と焦ったものの、妻には「まったく意味がわからない」と一蹴されました。
南家:デスマスク(蟹座)は、台詞が「い~かげんにしろっぴ!」や「あじゃぱー!」だったり、黄金聖衣に見放されたりと、散々な扱いでしたからね(笑)。
箱崎:ただ、スピンオフ作品の『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』(2006〜2011/原作・原案:車田正美/作画:手代木史織)のマニゴルド(デスマスクの先代)は、同じ蟹座でも扱いがすごくいいので「蟹座でもいいじゃん!」と思い直したんです。後日、妻から「蟹座のことはもういいの?」と聞かれたときには、「全然いいんだよ。だって教皇の直弟子だからね」という、通じない返答をしました(笑)。本作の黄金聖闘士は、大人の目線で見ても格好良いと感じるし、夢中になれると思うんです。私が根っから好きな本作を、息子が読んだらどう感じるのか、聞いてみたいと思っています。
南家:私、なんだかすごく面白いものを引き出してしまった気がします(笑)! 2つめはなんですか?
箱崎:『スーパー戦隊シリーズ』です。でも、私の幼児期に放送していた本作は、怖くて見ていませんでした。出渕 裕さんが参画され、デザインがシュッとしてきた『超電子バイオマン』(1984〜1985)の頃から見られるようになったんです。すでに小学生になっていましたが、自分もやっと同年代の友人たちの仲間入りをしたような、嬉しい気持ちでした。
その後、大人になってからは見なくなっていたのですが、友人が「最近のスーパー戦隊は変身シーンのCGがすごいよ」と教えてくれて、30歳くらいから再び見始めたら面白くて、今は息子と一緒に見ています。まだ息子は2歳なのでストーリーが理解できていませんが、わかる年齢になったら、一緒に見ながら話をしたいなと楽しみにしています。ヒーローショーにも連れて行ったことがあり、今は女の子のファンも結構来ていますね。
南家:そうみたいですね。『忍者戦隊カクレンジャー』(1994〜1995)で鶴姫(ニンジャホワイト)が初の女性リーダーとして登場したり、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013〜2014)で白人男性のロバート・ボールドウィンがラミレス(初代キョウリュウシアン)を演じたりしたのを見て、スーパー戦隊の世界にも多様性がやってきたなと思いました(笑)。
箱崎:ブルーを女性が演じることもありますしね。同じ放送枠で長年継続してきた番組なので、今年はどういうアイデアを出してくるのか? と期待できて楽しいんです。いつも突き抜けた斜め上の発想がすごいなと思っていて、大好きなので、今後も息子に勧めたいです。同じ特撮番組でも『仮面ライダーシリーズ』は、子供が怖がって泣いちゃうこともあると聞きますよね。『仮面ライダーシリーズ』は『スーパー戦隊シリーズ』よりもターゲットの年齢層が高いので、小さい子供にはちょっと難しいんだと思います。「作品にはそういう事情もあるんだよ」というような制作者側の話も、息子が理解できる年齢になったらしてみたいですね。
南家:中西さんは、息子さんに勧めたい作品はありますか?
中西:私は「特にこれを見せたい」と思うような映像作品はないんです。息子自身の自発的な興味を引き出したいと思っているので、息子が気になっているものや、好きなものがわかったら、それを徹底的に与えてみて「さてどういう反応をするのかな?」と観察するようにしています。今は、映像作品ではなく、ブロックや、型はめパズルなどの玩具を集中的に与えています。息子は『アンパンマン』が好きなので、ブロックを一生懸命に組み上げて、「アンパンマン」や「ばいきんまん」をつくっちゃうんですよね。
南家:すごいですね! 2歳ですよね?
中西:さすがに立体的な形はつくれないのですが、「アンパンマン」や「ばいきんまん」と同じような配色になるよう、たくさんあるブロックの中から自分で色を選んで、並べる順番を考えて、それっぽいものをつくる作業に熱中しています。そうして出来上がったら、「これは『アンパンマン』、これは『ばいきんまん』」と教えてくれるんです。息子のその発想力を見ていると、息子だけでなく、私自身もすごく楽しくなります。
なので、息子が自分で考えてクリエイションできるものを与えるようにしています。最初から「これがいいよ」と決まったものを与えるより、素材だけがたくさんある状態を用意してあげて、「さあ自由に遊べ!」という環境をつくるよう心がけています。
南家:なるほど。それはとても素敵なことですね!
中西:ひょっとしたら、将来キャラクターモデラーになれるかもしれませんね(笑)。ちなみに、プログラミングは英才教育をする予定です。夫がプログラマーですしね。たぶん小学生になる頃には、自分でゲームをつくれるようになっているんじゃないかと思います! プロシージャルモデリング(※)なんかも使ってね。
※数式などを利用して3Dモデルを生成すること。植物、建築物、流体など、何らかの規則性をもった物体や現象の表現に適している。
T:自分の学費を自分で稼げるくらいになってたらすごいですね! 「あ、ちょっと納期なんで」みたいな会話をしてそう(笑)。
箱崎:ひえー、レベル高ぃ〜。
南家:Tさんの息子さんは、どんなものに興味がありますか? 勧めているものはありますか?
T:私の息子もヒーローものが好きで、夫と気が合うようで、半世紀くらい前の、父親世代の作品の主題歌を2人でお風呂で熱唱していますね(笑)。実は、私自身が子供の頃に影響を受けた作品をあまり思い出せないんです。ただ、絵本の『モチモチの木』(1971/作:斎藤隆介作/絵:滝平二郎)が怖かったというのは記憶しています。でも名作なので購入して息子にも与えましたが、やはり息子も怖かったようで「これはいらない」と言われました(笑)。
小説に関しては、星 新一が好きだったので、息子も興味をもったらいいなという気持ちはあります。でも、自分の趣味を押し付けたくないんです。だから家のどこかにそっと置いておこうかなと。いつの日か息子がそこにたどり着き「面白かったよね」と感想を共有できる日が来たらいいなと思います。
南家:そんな日が来るといいですね。本日はいろんなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
プロフィール
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南家 真紀子
アニメーションアーティスト
アニメーションに関わるいろいろな仕事をしているフリーランスのアーティストで、3人の息子をもつ親でもあります。
〈仕事内容〉企画/デザイン/アート/絵コンテ/ディレクション/手描きアニメーション。アニメーションとデザインに関わるいろいろ。
makiko-nanke.mystrikingly.com
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