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第4回:背景美術が紡ぎ出す美しいMVの世界

第4回:背景美術が紡ぎ出す美しいMVの世界

美術監督が解説する『Mr.AFFECTiON』の舞台

ここからはメイキングパートとして、本作で使用されている背景美術を、実際の素材や場面カットと共に詳しく紹介していく。背景の作成のながれから、赤木氏が誇る背景描画の技術まで徹底に解説したい。あのシーンやこのシーンに隠された職人の技をご覧いただこう。ボリューム満点でお届けする後半戦、ぜひお見逃しなく! なお、この先はイメージを損なう表現が出てくる可能性もあるため、ご理解をいただいた上で読み進めていただきたい。

MVの舞台となる古城外観の美術設定

▲ノースメイアのある北欧のイメージというオーダーを受けた赤木氏が、実際の背景美術を描く前に用意した美術設定。「背景美術の良さは "絵の嘘"がつけるところだと思います。この古城は架空のもので、実際には北欧にこういうお城はないので、見映えが良いようにイメージを膨らませて描きました」と赤木氏。ここで意識しているのは、実際の建築様式をベースにしつつも、それだけに縛られすぎてしまわないこと。下調べした中で良いところをピックアップしたり、赤木氏のアイデアを混ぜ合わせたりと、今回のMVだけのカッコ良いデザインを構築した

カメラの寄りに耐える描き込み

▲MV冒頭カットにおけるカメラワークの指示。ここでは大きな外側のフレーム(A)から、扉上部を捉える小さなフレーム(B)へとトラックアップしていくという指示がされた



  • ▲美術素材。この城門は3Dモデルが作成されていたため、その背景モデルに貼り込むために美術素材が用意された。城門の扉に寄っていくカメラワークのため、アップになった際にも耐えられるように、扉部分のみ1,200万画素の解像度という大きなサイズで描画されている



  • ▲実際の場面カット。寄りにも耐えられるクオリティだ

ふたつの表情を見せるコンセプトアート

今回はスタジオ撮影で後から背景を合成する手法が採られていたため、古城へ続く橋と城壁は3DCGで作成することが決まっていた。そこで美術設定を基に作成された背景モデルを事前にもらい、それに合わせて赤木氏がラフボードやコンセプトアート描いていったそうだ。

▲ラフボード。制作の初期段階でMV全体の方向性を示す

▲CGレイアウト。古城のコンセプトアートを描く基となった

▲古城のコンセプトアート①。楽曲序盤の寂しさをイメージして、全体的に暗めの設定となっている。色数を少なくして、雪が降っていることで視界も悪くなり、曲の不安感を助長させる雰囲気だ

▲背景美術。【古城のコンセプトアート①】を基に赤木氏が描いた

▲古城のコンセプトアート②。楽曲ラストの力強さをイメージして、全体的に明るく表現している。「暖色を織り交ぜることで、メンバーの元気な一面を引き出すような空間をつくりました」(赤木氏)

▲背景美術

▲楽曲序盤とラストの場面カット。同じ場所でも、基となるコンセプトアートがちがうと背景も異なる印象となる。背景による演出の効果は大きい

カメラワークを支えた遠景背景

MV初期の360度ぐるっとカメラワークするカットを解説しよう。こちらのカットの背景は、実は一枚絵で描かれている。

▲セル参考と背景美術。背景を描く前には、セル参考を必ずもらうという。今回の場合は背景モデルが映る箇所を黒塗りで表しているが、他にもメンバーがどのように移動するかなどをあらかじめ把握しておくことで、カメラに映らない部分の描き込みを抑えることができる。また、カメラワークが速いところは、ディテールよりも見えやすさを重視して、木炭デッサンのようにざっくりと明暗の表現だけに留めるなど、面で見る描き方を意識しているそうだ

▲背景美術。限られた制作期間の中でも、セル参考を基に描く箇所を絞って力を注ぐことで、効果的に背景を仕上げることができる

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▲場面カットの連番。四葉 環さんや和泉三月さん、六弥ナギさんらメンバーの切なげな表情を後押しするような空気感をつくりつつ、暗い中でもメンバー全員の姿が見やすいように、背景美術にも詰まっている。本来であれば黒い衣装が映えるように背景も明るさを持ち上げたいところだが、夜という設定に加え、石などの素材はどうしても暗い色になってしまう。そこで、セル参考のメンバーが映る位置に合わせて、雪やオーロラといった白いものを配置して、メンバーを引き立てているのだ

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煙に飲み込まれる七瀬 陸さん

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