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第4回:背景美術が紡ぎ出す美しいMVの世界

第4回:背景美術が紡ぎ出す美しいMVの世界

煙に飲み込まれる七瀬 陸さん

▲七瀬さんが煙に包まれていくカット。美術監督の仕事は、まず企画などの初期段階でコンセプトアートを描き、絵コンテを基に美術設定を作成して、ラフボードや美術ボードを手がけ、カットごとの背景美術を仕上げていく。中でも最初の色を決める工程や設定を考える工程に時間がかかるそうだ。その映像がどのような環境で観られるかという点は強く意識するという。本MVはスマートフォンや家庭用のモニタなど明るい環境で観られることを想定して、ベースは完全にブラックにはしていない。一方で映画のような暗い空間で観る作品は、暗い背景も細部まで視認できるため密に描くそうだ。各シーンのイメージが固まれば、その後はどんどん背景を描いていくので、後半はスピードが上がっていくとのこと。赤木氏は「背景美術はたくさん絵を描くので達成感がありますよ! それとギャラリーなどの限られた会場で展示する絵の良さもありますが、映像作品は日本全国のTVや映画館でながれることもありますし、ネットで配信されれば全世界の人が映像作品を通して自分が描いた絵を観ることになります。会ったこともないいろいろな国の人と感動を共有できるのは、この仕事最大の魅力ですね」と話す

コンテンポラリーダンスの演出が光る石壁の部屋

▲石壁の部屋の美術設定。武田考代氏が英訳した歌詞が投影される演出もあり、「プロジェクタを壁面のどこに埋め込みますか? という話し合いもしました」(半澤氏)とかなり設定が練られたそうだ。実際にはスタジオで撮影しているが、この場所が現実にあると想定してリアルサイズで設計している。壁のヒビの間にプロジェクタが埋め込んであるのもポイントだ

▲ラフボード。【石壁の部屋の美術設定】を基に彩色を施すことで最終的なイメージに近づけていく

▲美術素材。線画の美術設定を基に背景モデルを作成し、背景美術で描いたこの壁の素材を貼り込む。四方の壁で全て異なる素材を用意しており、よく見ていただくとプロジェクタが埋まっている穴も描かれている

▲光受けフィルタ処理後の美術素材。プロジェクションの光を受けたときなど、カットに合わせて調整する



  • ▲床の背景美術



  • ▲和泉一織さんの足が水面を撫でていくという完成カット。ひび割れや欠けた表現が本物の石のようだ

▲石壁の背景美術。明るい部分はプロジェクタが投影されている部分だ

▲一織さんのシーン【上】と二階堂大和さんから六弥ナギさんのシーン【下】で投影されるプロジェクション動画。『Mr.AFFECTiON』の歌詞(英訳したもの)を1910年代の映画の字幕風にして壁にプロジェクションする。過去をふり返り苦悩しているメンバーのコンテンポラリーダンスをオールドフィルムの演出で表現した

▲完成した一織さんと二階堂さんのワンシーン。背景美術による石壁の部屋が、メンバーのダンスを視聴者の心により印象づけている

透明感のある凍った湖の舞台

メンバーがひとりずつ消えていく氷の湖のシーン。湖の氷面、山、空など、パーツで別れている美術素材を、球状の3D空間に配置して360度の空間を表現している。ここでは、細かな構成素材までドドッと一挙公開する。

▲美術設定

▲美術ボード。昨今、背景美術はデジタルツールの使用が主流だが、こうした氷のヒビや遠景の木々のような有機的なものについてはアナログで描くことも多いという。にじみや筆先の割れ等、アナログの筆ならではの偶然性や勢いがプラスに働き、結果的に作業も速く綺麗な仕上がりになるとのこと。一方で、人工物は正確な線が簡単に引けるデジタルが最適だという。試行錯誤しながら、デジタルとアナログを上手く使い分けているそうだ。「最終的に視聴者にとって最高の絵になれば、手段にはこだわりません」と、赤木氏は背景美術の矜持を語る

▲氷の表面素材

▲湖表面のヒビ素材。大量に描かれた。こちらは紙に筆で描いたもの

▲ヒビの断面素材。こちらも筆で描かれた

▲様々なパターンのヒビの断面素材

▲氷表面のヒビとヒビの断面素材を並べた素材。比較すると表現によって筆遣いが異なることがわかる

▲氷素材に【氷表面のヒビとヒビの断面素材を並べた素材】を重ねた状態。氷の色味がつくと寒々しい氷の雰囲気が一気に増す

▲【湖表面のヒビ素材】を統合した素材

▲ヒビのフレア素材。フレアは現実空間で撮影した画像が白っぽくなったり、光がにじんだりする現象のこと。その現象を再現した

▲【氷の表面素材】の上に【ヒビのフレア素材】と【湖表面のヒビ素材を統合した素材】を重ねた氷表面のヒビ素材。こちらは上下左右でリピートできるように工夫したつくりになっている

▲氷の湖のワンシーン。表面のヒビはもちろん、下方向の断面まで丁寧に描くことで、寒々しい現実感が増している


▲空の素材

▲氷原の素材

▲島(小)の素材①

▲フレア素材①

▲【空の素材】~【フレア素材①】を合成した状態

▲島(中)の素材①

▲フレア素材②

▲【空の素材】~【フレア素材②】を合成した状態

▲島(中)の素材②

▲フレア素材③

▲【空の素材】~【フレア素材③】を合成した状態

▲島(大)の素材

▲島(小)の素材②

▲島(小)の素材

▲最終的な背景美術。この背景にたどり着くまでに、上記の数多くの素材が描かれた

▲アナログで描かれた素材の一部。上のモノクロの3点はオーロラ、青い1点は星空、下2点は樹木だ。先にも紹介した通り、赤木氏はアナログ技法も上手く駆使している

▲氷の湖のシーン。背景美術で作成した美術素材をCGチームが配置し、撮影チームがコンポジットすることで、最終的な完成映像となる。「全てのセクションの力が合わさり、イメージボードに合わせた想像通りの舞台が出来上がり、私も嬉しくなりました」と赤木氏。バストアップのカットでは、綺麗なオーロラが背後に輝き、美しい背景に四葉 環さんの躍動感あふれるダンスがよく映える

▲全身が映るシーンでは、輝く湖の氷により黒いズボンも映え、本当に凍った湖の上でダンスをしているようだ

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変身シーンを盛り上げる背景たち

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