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    本誌『CGWORLD vol.258』の特別企画から始まった大人気アイドルグループIDOLiSH7の新曲『Mr.AFFECTiON』MVの舞台裏に迫る本短期連載(全7回)。いよいよ最終回を迎える今回は、「音楽」をテーマにお届けする。作詞を担当した安藤紗々氏、作曲を担当したkz氏にご協力いただき、特別にメールでの取材を敢行。「Mr.AFFECTiON」の生みの親であるお二人が楽曲に込めた想いとは。今回はQ&A形式でダイレクトにお伝えする。

    TEXT_野澤 慧 / Satoshi Nozawa
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
    企画協力_斉藤美絵 / Mie Saito

    • IDOLiSH7 ニューシングル『Mr.AFFECTiON』
      好評発売中
      価格:1,200円(税抜)
      www.lantis.jp

    • 『アイドリッシュセブン』
      ジャンル:音楽・AVG(アドベンチャーゲーム)
      発売:バンダイ ナムコオンライン
      価格:無料(一部アイテム課金あり)
      対応OS:iOS・Android
      idolish7.com

    「7人であることを常に考える」IDOLiSH7の"愛"を詞で表現

    まずは作詞を担当した安藤紗々氏にフォーカス。これまでも多くのアイドルたちに歌詞の提供を行なってきた安藤氏だが、そんな同氏でも今作の作詞にあたっては「i」を冠する重みを感じたという。ここでは安藤氏流の作詞法から本作の歌詞のポイントまで余さずお伝えする。

    Q:安藤さんのご経歴についてお教えください。

    東京都生まれ、明治学院大学卒業。歌手や、アイドル音楽に関わる活動をしながら2017年8月に作詞家としてデビューしました。

    Q:ご自身の代表的な作品をいくつかお教えください。

    『ローリング△さんかく』/周防桃子(CV.渡辺恵子)
    (『アイドルマスター ミリオンライブ!』より)

    『アイドリッシュセブン』関連では
    『Treasure!』/TRIGGER
    『Re-raise』/Re:vale
    『Mr.AFFECTiON』/IDOLiSH7

    アイドリッシュセブン『Re-raise/Re:vale』MV FULL

    Q:現在のお仕事に就くきっかけは何でしたか?

    自分の歌以外に初めて歌詞を提供したのはアイドル音楽プロデュースの仕事をしていたときです。自分で書けば費用が浮く、と思い書き始めました...!(笑)。その後歌詞を見ていただく機会があり、今のお仕事ができております。


    《作詞の仕事について》

    Q:作詞をされる際の、完成までの流れをお教えください。曲が先にできていることが多いですか? 詞を先に制作されることが多いですか?

    曲ができていることが多いです。歌詞の後にアレンジが変わったりすることはありますが、基本的には曲先です。できるだけタイトルから決めるようにしています。

    Q:1曲の作詞にはどのくらい時間がかかりますか?

    曲によるのですが、聴き込んだあとスラスラといけば数時間で大枠を完成させ、調整に数日かけます。調整しているうちにテーマから変えよう、と思ったら振り出しに戻ります。

    Q:作詞をされる際、心がけていること、必ずするようにしていることはありますか?

    歌う方がどのような表情で歌うのか、シミュレーションしています。ライブだったらここで客席からの反応があって......MVだったらここはアップで映って......など。

    Q:作詞をされる際に、資料としてどういうものを活用されますか?

    できる限りのものを見ます! 本人たち同士の会話が知りたいので、今回はラビチャ等を拝見しました。


    Q:作詞の作業をされる中で良く使用されるツールやアイテムがあればお教えください。

    書きたいイメージに近い場所をふらふらと歩きながら書くことが多いので、スマホのメモ帳に打っています。その後に歌詞カードに載ったときのバランスを考えて表記を調整します。

    Q:制作中に作曲担当の方とやりとりをされることはありますか?

    作曲家の方の要望を事前にいただくことはありますが、制作中にやりとりをすることはあまりないです。

    Q:キャラクターソングやアニメ主題歌などを多く手がけていらっしゃいますが、楽曲のジャンルごとに作詞の方法や意識することは変わりますか?

    言いたいことのオチをつけるか、聴き手にゆだねるか、は作品や楽曲のジャンルによって選んでいます。あとは言葉のイメージ、作品全体の雰囲気がほんわかしていたらひらがなでやわらかく、などです!


    《IDOLiSH7、『Mr.AFFECTiON』の作詞について》

    Q:作詞のオファーがあったのは具体的にいつごろでしたか?

    2018年の夏です。ソロ曲では歌詞を書かせていただいていたので、ついにIDOLiSH7が......と気合が入りました。

    Q:『Mr.AFFECTiON』の作詞にあたっては、どういったオーダーを受けましたか?

    今までの楽曲を経てさらにアイドルとして大きくなった彼らが次に歌う曲であり、背中を押すような曲にしたい......というようなオーダーだったかと思います。

    Q:先ほど完成までの流れについてお聞きしましたが、『Mr.AFFECTiON』の場合はどのような流れで進められましたか?

    楽曲が最初にしっかりとあり、どんなシーンでの歌なのかもわかりやすかったので、歌ってほしいことのあらすじをざっくり決めてから進めました。

    Q:IDOLiSH7の楽曲の作詞の際、特に心がけていること、意識されていることはありますか?

    アイドルなので「希望や勇気を与える」は大前提に置きたいと思っています。その中で彼らが一緒に越えてきたものが魅力になっていると思うので、7人であることを常に考えています。


    Q:『Mr.AFFECTiON』のタイトルはどういった経緯で決まったのでしょうか。

    ストーリーを重ねるごとにそれぞれにあった動機は次第に解決し、では何のために今ここにいるのか。原動力となっているのは当たり前にある愛なのかなということで"AFFECTION"を。今までの表題曲にならって小文字のiを入れましょう!ということだったので、iを小文字に。タイトルをつけた瞬間、重みが増しました。

    Q:これまでに作詞をご担当されたIDOLiSH7の楽曲と、今回の『Mr.AFFECTiON』では楽曲のテイストが大きく異なりますが、作詞において異なるところはありましたか?

    カッコいい曲に、強いメッセージを含んだカッコつけた言葉を使うと彼ららしくならないので、わかりやすい言葉を組み合わせるようにしました。等身大の喋り言葉のようなイメージのものを多く使いました。

    Q:パート分けに応じてそれぞれのアイドルのイメージに合わせた言葉選びをされることはありますか?

    パート分けは基本的には歌詞を提出した後から決まるのですが、この部分はこのメンバーがこのように歌ってくれるんだろうな、などはイメージしております。予想外の部分もあり、メンバーの新しい面を見ることができていつも完成が楽しみです。

    今回は「しがみついたって、ダサくもがいても」の部分がクールなイメージのメンバーだったので意外だったのですが、その分深みが増すように思い、唸りました!


    Q:『Mr.AFFECTiON』の歌詞において、安藤さんオススメの箇所をいくつかお教えください。

    「-ダレカ-の為の強さが-ジブン-の背中を押した」
    IDOLiSH7は、いつも誰かのためを想って、行動して、強くなる。現実世界でもありえることで、ふと耳にしたとき、自分に重ねてハッとすると思うのです。


    「守りたいよ君と 最高のラストシーン AFFECTiON いつまでも」
    ソロ楽曲を書かせていただいたり、ストーリーを読み進め、IDOLiSH7の行く末として最も悲しいことは7人でいられなくなることではないかと思いました。ラストシーンなんて来てほしくはないのですが、"たとえ今終わったとしても悔いのない最高"を7人でいつまでも更新し続ける、そんな願いも込めて楽曲の締めである大切な部分に置きました。


    Q:完成した楽曲をお聴きになって、最初の印象はいかがでしたか。

    疾走感あふれるクールな楽曲を見事に乗りこなしていて、IDOLiSH7の覚悟を感じました。誰かに影響を及ぼす存在である覚悟ってなかなか難しい。あ、一生ついていこう。と思いましたね!

    Q:完成したMVをご覧になった感想、印象に残ったカットなどあればお教えください。

    まるで映画!
    特に好きなのはIDOLiSH7のメンバーが横並びのシーン、スロウリップのシーン。曲中にメンバーが目を合わせる箇所、ずっとお互いのことを想いながらIDOLiSH7でい続けてほしい、という気持ちが伝わったようで感動しました。ラストの「走り出した運命に」、の揃ったダンスに切り替わる部分も大好き。振り付けやカットや動き全てにIDOLiSH7への愛情を感じました。

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    IDOLiSH7の楽曲は複雑さよりもストレートさを重視

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    IDOLiSH7の楽曲は複雑さよりもストレートさを重視

    続いて、作曲を担当したkz氏に視点を変えて見ていく。ポップスからダンスミュージックまで幅広いジャンルの音楽を手がけており、IDOLiSH7に対してもデビュー当初から楽曲を提供し続けてきた。IDOLiSH7の道程をともに歩み、成長を見届けてきた同氏は、今作にどのような想いで向き合ったのか。

    Q:kzさんのご経歴をお教えください。

    2007年からインターネットを拠点に音楽活動を始め、そのまま現在に至ります。アニメ、ゲーム、ダンスミュージックなどで主に活動してます。

    Q:ご自身の代表的な作品をいくつかお教えください。

    『Tell Your World』/livetune feat.初音ミク
    『Irony』/ClariS
    『SEVENTH HAVEN』/セブンスシスターズ
    『MONSTER GENERATiON』/IDOLiSH7

    アイドリッシュセブン『MONSTER GENERATiON』MV FULL


    《作曲の仕事について》

    Q:作曲をされる際の、完成までの流れをお教えください。詞が先にできていることが多いですか?曲を先に制作されることが多いですか?

    100%曲先です。自分で作詞するときもそうですが、『アイドリッシュセブン』のように作詞家さんとお仕事をするときも基本的にはメロディを作ってからお渡しして作詞していただいています。

    Q:1曲の作曲にはどのくらい時間がかかりますか?

    そのときのバイブスにもよりますが短いときで1日、長いと1週間くらいかかったりしますね......。『アイドリッシュセブン』は結構慎重に考えることが多かったりするので時間をかけて作ることが多いです。

    Q:作曲をされる際、心がけていること、必ずするようにしていることはありますか?

    何かしらのコンテンツに対して曲を作ることが多いので、そのコンテンツが好きな人がどれだけその曲の感情になれるか、を軸に制作するように心がけてます。曲を聞いてそのバックボーンを想起できるようなものになっていれば幸いだなぁと。

    Q:作曲をされる際に、資料としてどういうものを活用されますか?

    作曲のみの場合はそこまで資料を読み込むということに重点は置いていないです。そこの部分は作詞家の方にお任せするところが大きくて、曲の方はもっと大枠の、作品の方向性を定めるものに留めることが多いですね。作詞・作曲の場合はめちゃくちゃ読み込んで感情になってから作ることがほとんどです。


    Q:作曲の作業をされる中で、良く使用される機材やアイテムがあればお教えください。

    メインスピーカーのBAREFOOT SOUND MicroMain27ですかね。それほど機材を多く使う人間ではないので、良いスピーカーがひとつあることが一番大事だなと思ってます。

    Q:制作中に作詞担当の方とやりとりをされることはありますか?

    完全にお任せしているので今まで一度もありません。僕自身も作詞をするので、細かい話をしようと思えばできなくはないですが、そこはその人の領域だと思っているので。

    Q:幅広いジャンルの楽曲を手がけていらっしゃいますが、ジャンルごとに作曲の方法や意識することは変わりますか?

    基本的には変わらないですね。あるとすれば、そのジャンルに対しての理解を深めることと、そのジャンルそのままのものを作らないようにすることです。なので割とエッセンスだけを拝借したりすることが多いです。


    《IDOLiSH7、『Mr.AFFECTiON』の作曲について》

    Q:作曲のオファーがあったのは具体的にいつごろでしたか?

    めちゃくちゃに昔なので改めてメールを確認したら2018年の5月頃っぽいですね......。

    Q:『Mr.AFFECTiON』の作曲にあたっては、どういったオーダーを受けましたか?

    今までのIDOLiSH7とは違う、「かっこよさ、クールさ」を軸にしたもの、というお話はいただきました。打ち合わせではシナリオの大枠の部分をお話いただいたのであとはそれを基に、という感じだったと思います。

    Q:先ほど曲の完成までの流れについてお聞きしましたが、『Mr.AFFECTiON』の場合はどのような流れで進められましたか?

    最初に1コーラスのデモを作らせていただいて、そこから意見をいただいて修正があれば対応、という感じで進めていきました。今までに制作したIDOLiSH7の楽曲ではそこまで大きなリクエストをいただくことはなかったんですが、今回はガラッとイメージを変えた楽曲ということもあって、最初に作ったものから結構作り直しました。ドラスティックな変化を求められる作品の場合は良くあります。どこまで振り切るかのボーダーラインがちがうこともあるので。そこを確認できてからはスムーズだった気がします。

    Q:IDOLiSH7の楽曲の作曲の際、特に心がけていること、意識されていることはありますか?

    複雑さよりもストレートさですね。それとライブのときにどういう画になるだろう、というところを考えながら作ることが多い気がします。IDOLiSH7の曲は掛け合いやガヤがめちゃくちゃ多いのですが、これもそういうところから来ています。

    Q:これまでに作曲をご担当されたIDOLiSH7の楽曲と、今回の『Mr.AFFECTiON』では楽曲のテイストが大きく異なりますが、作曲の工程において異なるところはありましたか?

    今までは割とシンプルなシーケンスが多かったんですが、クールさを出すためにComplextro(※)の要素を絡めたりしたので結構細かいトラックが多くなりました。主にベースですね。それと普段ダンスミュージックの要素が強い曲で使う音色をいつもよりも多めに使用しています。

    ※Complextro(コンプレクストロ):エレクトロ・ハウスから派生した音楽の1ジャンル。入り組んだベースラインやグリッチノイズを特徴とする

    Q:7人それぞれのイメージに合わせてメロディを制作されることはありますか?

    歌の割り振りは作詞家さんにお任せしているのでこちらからそれを押し出すことはしません。そういったところで自由度を下げてしまうと作品に響くので......。もちろんそういったオーダーをいただいた場合は考えて作ることもあるかと思います。


    Q:『Mr.AFFECTiON』の楽曲において、kzさんオススメの箇所をいくつかお教えください。

    箇所というかこれは全部なんですが、今までと違う曲調ということもあって、ヴォーカルがどこをとってもめちゃくちゃにかっこよくて最高なのでもうそこを聞いてくださいとしか言いようがないです。

    Q:完成したMVをご覧になった感想、印象に残ったカットなどあればお教えください。

    あまりにかっこよすぎるしクオリティが超絶だったので終始変な笑いが出っぱなしみたいな感じでしたが、個人的に好きなカットというなら1サビ後半の環さんの蹴りから歌への一連の動きのグルーヴがめちゃくちゃすごくて感動しました。その少し前の陸さんのバックステップもビートへの理解度が完璧で好きです。



    全7回にわたってお送りした本企画も今回で終わりを迎える。本MVは時間にしてわずか4分弱の映像ではあるが、そこには無限とも感じられるほどの制作陣の愛が詰め込まれていた。アイドルとは、ファンと、スタッフと、アイドル本人で作る、作品――。この短期連載の最後に、フッとそんな言葉が頭に浮かぶ。表には出ることのない裏方のスタッフたち。しかし、彼らは間違いなくアイドルの一端を担っているのだ。たくさんの愛に支えられ、さらなるステージへと進むIDOLiSH7。これからも目が離せない。



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      発売日:2020年1月10日