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第4回:コミュニティの力が働き方を変える(前篇)

第4回:コミュニティの力が働き方を変える(前篇)

トピック2:【行動】「産休育休ロードマップ」「働き方タスクフォース」

南家:鈴木さんの【悩み】は、その後どんな【行動】につながりましたか?

鈴木:ワーキングマザーグループ内での話し合いの結果、後輩のための「産休育休ロードマップ」(以下、ロードマップ)をつくり、社内のネットワーク上で公開することになりました。例えば「産休とは何か?」「育休取得に必要な準備とは?」「税金はどうなる?」「保育園入園準備とは?」など、私たちが誰にも相談できなくて困った事項をまとめていきました。ロードマップの情報はどんどん充実していき、「引っ越すなら〇〇区がおすすめ!」など、各地域の子育て支援情報なども網羅するようになりました。ワーキングマザーだけでなくワーキングファーザーにも役立ち、意外にも男性社員の育休取得の参考になったようです。

南家:社員の誰もが簡単にアクセスでき、経験に基づくロジカルな情報が視覚化されていたロードマップは、子育て情報が届きにくい男性にとって特にインパクトが大きかったのでしょうね。開発者フレンドリーな「ロードマップ」という単語を使ったことも、多くの人に受け入れられる要因になったのではないでしょうか。

鈴木:確かに、私たちゲーム開発者にとっては馴染みのある単語ですからね(笑)。そして「社員の誰もが簡単にアクセスできる」という点は、思いのほか男性に歓迎されました。男女を問わず「直接質問しづらい」「相談するタイミングが図れない」「話すのが苦手」という人はいて、そういう人でもほしい情報を得られたことは、かなり有効だったようです。当面は出産予定がない若い世代からも「将来をイメージして事前に知識を得られる」という声をもらいました。このロードマップの評判は同業他社の開発者さんにまで広がり、「共有してほしい」という依頼を受けるようにもなったんです。その後、複数社に共有させていただき、今にいたります。

▲鈴木さんが社内の後輩ワーキングマザーたちと一緒に作成した「産休育休ロードマップ」の抜粋


南家:4人で始めた活動が、会社の枠を越える大きな力に成長したんですね。素晴らしいです。

鈴木:セガサミーグループにMicrosoft Teams(以下、Teams)が導入されたのを機に、私たちの活動はグループ各社にも広がっていきました。各社のワーキングマザーと合流し、Teams内にワーキングペアレンツコミュニティを立ち上げたら、情報共有の輪が一気に広がったのです。現在、私たちのコミュニティには約180人が参加しています。Teams内で出産や育児にまつわる相談をすると、誰かが回答してくれますし、コロナ禍の昨今はビデオ会議システムを使ったランチ会も行なっています。

南家:さすが規模が大きいですね(驚)!

▲セガサミーグループのMicrosoft Teams内にある、ワーキングペアレンツコミュニティの様子(プライバシー保護のため、部分的にモザイクをかけてあります)


鈴木:一連のながれは、次の活動につながっていきました。私を気にかけてくださった本部長が、セガサミーグループ内の「働き方タスクフォース」(以下、タスクフォース)の一員として私を推薦してくれたのです。当時も今も、政府は「働き方改革」を推進しています。それに則り、里見社長(※2)の肝入りでタスクフォースが立ち上がったのです。推薦された当初、私は「なんですかそれ?」と、ポカーンと聞いてしまいました(笑)。当時のタスクフォースにはグループ各社から40人弱のメンバーが集められており、その多くは人事と営業職で、開発職の社員は少なかったのです。しかも女性はほとんどいなかったので、私には多様性をもたらす役割が期待されました。「鈴木さんがタスクフォースに参加することは、とてもいいことだと思います。行ってみませんか?」と本部長に背中を押され、「いいんですか? じゃあ行ってみます〜」と参加することになりました。

※2 現セガサミーホールディングス 代表取締役社長グループCEO 里見治紀氏のこと。当時はセガゲームス 代表取締役社長CEO。


南家:そもそも、ゲーム業界もCG映像業界も、女性の割合は少ないですからね。

鈴木:そうですね。部署によって若干のバラツキはあるものの、当社でも女性の割合は少ないです。

南家:そんな中で、鈴木さんが意見を言う機会を得たのは、とても大きな一歩でしたね。

鈴木:嬉しかったですね。本部長がとても理解のある方だったんです。私は「開発職」に加え、「ワーキングマザー」としての立場からも意見を提出することになりました。そこで開発メンバーに加え、ワーキングペアレンツからも広く意見を募りました。最終的に、ワーキングペアレンツコミュニティからの意見として「時短勤務にもフレックスタイム制を適用してほしい」「開発職にも在宅でのリモートワークを認めてほしい」の2つを伝えることができました。

南家:鈴木さんは新しい行動を始めるとき、常にポジティブに取り組んでいますね。例えばタスクフォースへの参加には「貴重な仕事時間を削られる」というマイナスの側面もあったと思います。そういう点は気になりませんでしたか?

鈴木:もちろん時間は削られてしまうので、あらかじめ上長に相談して、開発とタスクフォースに割く時間の割合を9:1に設定し、業務時間内で両立できるよう調整していただきました。開発チームのメンバーに迷惑をかけてしまうと、いろいろとやりにくくなるだろうと思いましたし、お互いに気持ちよく仕事を続けたいですからね。先のような割合を明示しておかないと、メンバーは「いつよもり仕事が進んでないけど、何をやってるんだろう?」と不審に思うでしょうし、私は「開発の仕事が遅れてしまい、申し訳ない」とストレスを感じたと思います。新しい行動を始める場合は、最初に時間の使い方を考え、周囲の理解も得ておくことが大事だと思います。

新しく何かを始めるときには、私も悩むことはありますが「1人で悩むより、ほかの人に聞いちゃおう」「とりあえず行動してみよう」という思考に自然と切り替わっていきますね。その方が、私にとっては楽なんです。

南家:自分1人で負担を背負うのではなく、きちんと周囲の人に相談し、数字でもって明示し、ロジカルに解決しようとする姿勢が大切なんですね。


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【変化】「時短勤務にもフレックスタイム制を適用」「在宅でのリモートワーク」

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