画にプラス要素を。

画には法則があります。

それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。

そして願わくば貴方の人生に+画を。

今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。

【ダイジェスト】vol.017:Valais Blacknose/「頭身とバランス」でデフォルメする
【+画 ONLINE】vol.017:Valais Blacknose/「頭身とバランス」でデフォルメする

“好き” を仕事にする

ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?
本稿を執筆しているのはまだ4月なので、2年ぶりのまともなゴールデンウィークにワクワクしています。ちなみに、例年ゴールデンウィークは「ゴールデンワーク」です。

連載では背景の作例が続いていたので、このあたりで少し脇道に逸れて動物系CGを。検索していてふと目に留まったもので。世の中は情報量がとても多く、出会ったものに再び巡り合うことは難しいですよね。

情報の集め方としては、街で見かけたちょっとしたもの、雑誌、ネット、映画の1シーン、思い浮かんだもの etc…は、すかさずメモしておくようにしています。「自分ノート」みたいな感じですが、社会人になったときに先輩に教わったことです。「日々、”格好良い”、”素敵” と思ったものを切り貼りして集めておいてごらん」と。

そう教えてくれた先輩が誰だったかは忘れてしまいましたが、いまだに続けています。良い勉強になりました。会社では様々なことが起こりますが、素敵な記憶だけは大切にしていきたいですね。

当時を思い出してみれば、CGを始めた頃は「毛のツール」などなかったので全てポリゴンやスプラインで作っていました。今思うとすごい……。

しかし基礎的な部分や「力技(ちからわざ)」では、追い詰められたときにこそ古い知識が本領を発揮してくれたりします(CGの場合は疑問に思うこともありますが)。志半ば(こころざしなかば)でCGをやめてしまう方も多いかと思いますが、いろいろと事情はあるにせよ、CGにとっては「何となく長く続けること」がとても+(プラス)になっていると30年CGを続けていて思ってきました。

とにかく「 “好き” を仕事にする」ということは、生涯を通してとても素晴らしいことです。CGに限らず本当に好きなことを仕事にしている人たちは素晴らしい。歳をとっても毎日夢中でいられることでしょう。

3DCGの変遷を羊でふり返る

さて、本題に入っていきましょう。
羊関係の作品を制作したのは過去4回! 多いですね(笑)。今回でなんと5回目です。私は結構な羊好き、ということが判明しました……。

こちらは21年前(2001年)の作品です。2001年生まれの方はもう成人されていますね。

スプラインで作成している初期の作品で、どこか『2001年宇宙の〇』的な感じですね。この作品の被毛ですが、まだファーを生成してくれるツールがなかった時代なので「板ポリ」で作っているんです。板ポリ技術ってこんな昔からある素晴らしい技術なんですね。

続いては、その1年後の2002年に制作した作品です。

「毛のツールを手に入れて制作してみようと思ったら、突然PCの不具合が発生してしまい結局は板ポリで制作しました」と記事に書いていました。この頃からシンメトリーを使用した「画創の法則」を多用していますね。

2014年の作品です。これもシンメトリーですね。「シンメトリーはつまらない」という人もいますが、私は安定感のあるとても良い構図だと思います。

この頃はすでに毛のツールがあったはずなのに、なぜか骸骨にして地面の絨毯をファーで制作しています。確か、調べものをしていたときに見かけた博物館の標本がとても格好良かったので、それにインスパイアされて制作したように記憶しています。

もうお気付きかもしれませんが、今回の作品の角はこれを応用しています。ワインでいうと「2014年物」。じっくりと寝かせてコルクを開ける気分です。

そして同年、2014年にはついにZBrush と煙のツールを手に入れてレベルアップ!
チャンチャカチャーン(笑)

中心からずらす「構図の画創」、そしてよく見ると「S字の構図」。

Valais blacknose」はスイスのヴァレー地方に由来する国内の羊の品種で、顔がどこだかわからないくらい真っ黒の毛に覆われています。顔がわからないのに何だか可愛いですね。画創にも通じる「隠す法則」なのでしょう。

隠して怖くしたり創造したりという表現は考えてましたが、まさか「隠して可愛くする」とは。世界は広いですね。

Design

今回は画創の法則「バランス」、「プロポーション」です。画においてバランスをとるのは究極の技の1つですが、その中の「プロポーション」は人物や動物に応用できる法則ですね。

人物は頭身と言われますが、これは「なぜそう見えるのか」ということ。「身長と頭部の長さの割合を表す」のが通例ですが、少し難しく言うと「人体比率」ということですね。

一般的に、年齢によって人の頭身は変化するとされており、1歳が4頭身、4歳が5頭身、8歳が6頭身半、12歳が7頭身、16歳が7頭身半、成人で8頭身、老人で7頭身であるとのこと。

さてここで調べてみると、人体比率も黄金比率が美しいとされていますね。

黄金比と人体比率




古代ギリシアの彫刻家ポリュクレイトスは 人体の理想的比率を理論化した『カノン』を著し、古代オリンピックの優勝者ドリフォロスをモデルとして理想の人体立像を造った。頭部の大きさが身長の7分の1であるカノンの人体比率はギリシア彫刻の美の規範となり、カノンの法則と呼ばれた[5]。その後、彫刻家リュシッポスは頭部比8分の1の人体比率を作り、以来、8等身は近世に至るまで西欧美術の理想的な人体比率の基準となった[5]と主に日本人学者によって主張される。


古代ギリシアでは黄金比(黄金分割)に基づいたプロポーションの造形を、数理的に均整のとれた美の原理として建築や彫刻などに用いた[5]。黄金比とは数学的にはAとBの割合がA:B=B:(A+B)の関係をいい、A:B=1:1.618…(整数比では55:89)という分割となる。8等身の人体比率は、へその位置が全身を黄金比の近似値3:5:8で分割する中心の位置となる。頭頂からへそまでを1とすると、へそから足底までが1.6となり、黄金比と近似する。また、へそから足底までを1とすると、上に挙げた手からへそまでが1となり、足底から頭頂までが1.6となる。(Wikipediaより)

なかなか長い歴史です。こういった「構図に対する考え方」は古代から研究され続け、現代に脈々と引き継がれているんですね。

「頭身の常識」の面白いところは、八頭身を基準にして見るに「そのまま縮小すると小人に見えるけれど、頭を大きくすると子供に見える」ということです。背の高さは一緒なんですけどね。つまり「頭の大きさ」が年齢を判断する基準の1つということになります。

ではさっそくやってみましょう。

今回はこの羊を……

こんな羊に変えていきます。


スタッフや外注先に依頼したモデルやデータに磨きをかけて仕上げていく。これもジェネラリストの仕事の1つで、こういった作業は日常的にあることです。

今回の作品は仕事ではありませんが、意図的にデータをコントロールしていく一例ですね。

左が基となるモデルで右がデフォルメしたモデルです。今回は子羊化するので「デフォルメ」という言葉を使います。見てのとおりポリゴン的にはまったく同じですが、バランスを変えています。

最も大きいのはやはり顔ですね。頭部の大きさや縦横比は変わっていないのですが、外側を大きく広げることで顔が小さく見えるようにしています。また、目の位置と口の位置を調整して額を大きくし、チャームポイントである耳を調整。

一般的に足は短い方が可愛く見えるので足を短くしているのですが、今回は画的に必要ないため作業は途中で止めています。

画創の「バランス変更」になってきますが、同じものでもちょっとしたバランスの変更で印象が大きく変わってくるものです。

この犬のシルエットはまったく同じ画を使用しており、単に切り貼りしてバランスを変えただけです。年齢のみならうず犬種までちがって見えますよね。動物以外に、昆虫、植物、果物などでもバランスのとり方で様々な見え方をしてくるものです。

チュートリアルではさらに具体的な解説をしておりますのでぜひご覧ください。

Composite

今回はかなり大きめにレイアウトしてトリミングする予定で制作しました。

最終的にはこのようにトリミングして使用しています。キャラクター色を強調したかったので、小手先のテクニックは使用せず王道でドーンと載せてみました。

CGにはいつも夢があります。

全ての望む方が素敵なCGに触れられるよう、オンラインで活動の幅を広げております。オンラインセミナーやオンライン教材を用意しているほか、講演なども承っておりますのでお気軽にご連絡ください。

本来の画をつくる楽しさをいつまでも忘れずに。

【ダイジェスト】vol.017:Valais Blacknose/「頭身とバランス」でデフォルメする
【+画 ONLINE】vol.017:Valais Blacknose/「頭身とバランス」でデフォルメする

3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)

CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。
online.dhw.co.jp/course/3dcg

3ds Max『画龍点睛オンライン』講座

文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
tutorials.cgworld.jp

早野海兵/Kaihei Hayano

画龍 / Garyu
ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
#3dsMax, #adobe aftereffects, #zbrush, #substancepainter

<代表作>
ゲーム『鬼武者』シリーズ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
連載「+画」、「画龍点睛」

早野海兵公式サイト:kaihei.net
画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
Twitter:@Kai_ryu_Kai

TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano@Kai_ryu_Kai
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE