CGクリエイターを目指す学生にとって、ポートフォリオは自分の魅力を企業に伝える最も重要な手段だ。では、どのような工夫や視点があれば、その魅力をより効果的に示せるのだろうか。


本連載では、12月発売予定の書籍「CGクリエイターになるためのポートフォリオ実例集」を基に、VFXディレクター/デザイナーの佐藤智幸氏が指導する受講生が実際に内定を勝ち取ったポートフォリオを取り上げ、その制作のPOINTを紹介していく。


記事の目次

    ※本連載は、書籍「CGクリエイターになるためのポートフォリオ実例集」の内容をベースにCGWORLD.jp向けに再構成したものです。

    書籍情報

    CGクリエイターになるためのポートフォリオ実例集 <内定を決めたポートフォリオから学ぶ作品づくりと見せ方の秘訣>


    定価    3,520円(本体3,200円+税10%)
    発行・発売    株式会社 ボーンデジタル
    ISBN    978-4-86246-657-0
    総ページ数    304ページ
    サイズ    B5正寸、オールカラー
    発売日    2025年12月下旬

    詳細・購入はこちらから(Amazon)

    佐藤智幸 / Tomoyuki Sato

    VFXディレクター/デザイナー。音楽活動を経てCGデザイナーへ転身。TV局内にて活動後フリーランスへ。白組、デジタル・フロンティア、オムニバス・ジャパン、NHKなどでVFXディレクター/VFXデザイナーとして映画・ドラマのVFXを中心に活動し、LIVE映像やCDのアートワークなども手がける。C&Rクリエイティブアカデミーにて後進の育成・指導も行なっている。

    note.com/vfx_sato

    今回のポートフォリオ

    ケルベロスが召喚されたシーンを、木彫りテイストで表現した作品。

    ●ページ構成
    A3[横]6ページ(A4[縦]12ページ)
    ●使用ツール
    Maya/Substance 3D Painter/After Effects/ZBrush

    ケルベロスは、ギリシャ神話に登場する冥界の番犬だが、犬ではなく「狼」にすることで、野性味と恐怖感が強まったデザインになっている。 また木彫りで表現するアイデアも面白く、狼の表情、炎の揺らめき、一瞬を捉えた静止画から力強い躍動感が感じられる。

    <1>完成画像:レイアウトによる演出

    POINT 1:さまざまな角度から見せたいということと、一つ一つをできるだけ大きく見せたいということから、ページ全体を使った大胆なレイアウトになっている。

    POINT 2:完成のレンダリング画像と共に、シェーディングが確認しやすいアンビエントオクルージョンも掲載。さらに、レンダリング画像とアンビエントオクルージョン画像、それぞれの画像をしっかりと同ポジでレイアウトしているため、上下に視線を移動させても違和感なく見ることができる。

    <2>モデリング:造形力をしっかりと見せる

    POINT 1:全身ビュー
    ケルベロス本体の造形やディテールを分かりやすいアングルで掲載している。

    POINT 2:顔の造形
    三つの頭をすべて見せるとややうるさくなるため、メイン一体の顔をピックアップして、その表情がしっかりと確認できるようにしている。

    POINT 3:毛並み
    木彫りでの毛並みの表現は、荒々しさと美しさを意識してスカルプト。手彫り感を出すためにランダムにしつつも、全体的にまとまりのある毛並みに仕上げている。

    POINT 4:土台&炎の造形
    土台、炎、それぞれの造形を拡大して解説。赤い囲みと矢印を使用して拡大図への視線誘導を行っている。全体図と拡大図があるので、位置関係が分かりやすい。

    POINT 5:統合した時のシルエット
    続いて、土台と炎を統合した状態の背景を掲載。背景とキャラクターを分解して掲載しているので、とても見やすい。また背景のみのシルエットも掲載しており、背景オブジェクトの美しさも伝わってくる。

    <3>テクスチャ:時間経過を意識した酸化表現

    POINT:油脂や埃の酸化表現
    酸化表現は、時間経過を意識してテクスチャで表現。堆積した汚れの酸化は、 Ambient OcclusionやCurvature Mapを活用し、ジェネレーターを使用しつつ、仕上げはブラシで行っている。

    <4>コンセプト:スケッチによるアイデア出し

    POINT:スケッチ
    いきなりモデリングを始めるのではなく、アイデアスケッチを行うことで、デザインの検討や構造の理解などの曖昧な状態のものを具現化。犬や狼の表情の研究から始まり、骨格・筋肉のしくみを踏まえながら、三つ首の姿へと発展していく過程が描かれている。

    アイデアを頭の中だけに留めずアウトプットすることはとても重要であり、それをしっかりとポートフォリオに載せ、アピールしている。 採用担当者は、完成形だけではなく、完成までのプロセスや試行錯誤も見たいと考えている人も多い。

    いかがだったでしょうか。 今回は、キャラクターモデラーとして内定を獲得した生徒作品の解説でした。デザインの検討や造形へのこだわり、作品の見せ方など、日々のCG制作やポートフォリオ制作の参考になれば幸いです。

    次回は、背景モデラーとして内定を獲得した生徒作品の解説を行いたいと思います。

    書籍情報

    大手ゲーム会社の内定を勝ち取った21作品のポートフォリオ実例を、「キャラクターモデラー」「背景モデラー」「レベルデザイン」の3つのカテゴリに分け、現役クリエイター兼講師のポイント解説付きで紹介!

    CGクリエイターになるためのポートフォリオ実例集 <内定を決めたポートフォリオから学ぶ作品づくりと見せ方の秘訣>


    定価    3,520円(本体3,200円+税10%)
    発行・発売    株式会社 ボーンデジタル
    ISBN    978-4-86246-657-0
    総ページ数    304ページ
    サイズ    B5正寸、オールカラー
    発売日    2025年12月下旬

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    TEXT_佐藤智幸 / Tomoyuki Sato
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、堀越祐樹 / Yuki Horikoshi