Xiaoxiang Zhu教授率いるミュンヘン工科大学(TUM)の研究チームは12月2日(火)、世界中27.5億の建物を3Dモデルとして利用可能にしたデータセット「GlobalBuildingAtlas」を公開した。本プロジェクトは都市化やインフラ計画、災害管理といった地球規模の課題に対して、高精度のデータ基盤を提供するためのもの。GitHubおよびTUMのメディアサーバ(mediaTUM)を通じてデータとコードが公開されている(MITライセンスを基本とし、「販売」のみを禁じた独自ライセンスで提供)。また、公式Webビューアを利用して自由に閲覧することも可能だ。

GlobalBuildingAtlasは、既存の最大規模のデータベース(約17億件)を上回る27億5000万件もの建物モデルを収録。2019年の衛星画像から抽出された建物モデルのうち、97%にあたる26億8000万件が「詳細度1(LoD1)」の3Dモデルとして提供されている。これらのモデルは建物の基本的な形状と高さを捉えたもので、解像度は3×3m。同種のデータベースと比較して30倍細かい。

また、従来のデータセットでは欠落しがちだったアフリカや南アメリカ、あるいは農村部といった地域も網羅し、よりグローバル視点での分析が可能となっている。

▲公式Webビューアで皇居周辺を表示した様子
▲同じく公式Webビューアで渋谷駅前スクランブル交差点周辺を表示

研究チームを率いるXiaoxiang Zhu教授は、3D化によって得られる建物の「体積」に着目。新たなグローバル指標として「ひとりあたりの建物体積(building volume per capita)」を提唱している。これは、従来の2D地図では把握できなかった居住環境の実態を浮き彫りにし、人口に対する建物の総質量を測定することで、住宅事情やインフラの整備状況、ひいては社会経済的な格差を可視化する。

▲遠景ではボリューム表示に切り替わる

■All the world's buildings available as 3D models for the first time(TUM公式ニュース、英語)
https://www.tum.de/en/news-and-events/all-news/press-releases/details/all-the-worlds-buildings-available-as-3d-models-for-the-first-time

■GlobalBuildingAtlas LoD1(公式Webビューア)
https://tubvsig-so2sat-vm1.srv.mwn.de/

■GlobalBuildingAtlas(GitHub)
https://github.com/zhu-xlab/GlobalBuildingAtlas

■GlobalBuildingAtlas: An Open Global and Complete Dataset of Building Polygons, Heights and LoD1 3D Models(mediaTUM)
https://mediatum.ub.tum.de/1782307

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