これまで首都圏を中心に都市部への集積が続いてきた日本のCG業界だが、近年、地方行政における誘致活動の動きと相まって、新拠点を検討をするコンテンツ企業・クリエイターも増加中だ。本連載では、自分たちが好きな場所で働くクリエイターにフォーカスし、その暮らし方や業務スタイルを紹介する。
第2回は静岡市在住のCGクリエイター・渡辺一基氏を取材。静岡市を選択した理由から静岡市独自の魅力、日々の暮らしまで、様々な観点から静岡市の魅力を語っていただいた。
なぜ静岡市に移住?
――まずは、自己紹介をお願いします。

渡辺一基氏(以下、渡辺):モグ株式会社の渡辺一基と申します。これまでゲームのムービー制作やCM、ミュージックビデオのCGディレクター、3DCG映画の制作などを手掛けてきました。近作ではフルCG映画「バイオハザード デスアイランド」のアニメーションスーパーバイザー、リードレイアウトアーティストを務めました。
――静岡市へ拠点を移された理由についてお聞かせください。
渡辺:実家がある場所だという理由に加えて、子育てに適した環境と、安心できる生活基盤を得たかったからです。首都圏に住んでいた頃は、子供の通院に片道1時間以上かかっていたのですが、静岡市では同水準の医療を受けられる病院が車で20分圏内にあるので安心なんです。
また、自然が身近にありながら都市機能も十分に揃っていて、子供がのびのびと成長できる点に魅力を感じました。僕は現在、自宅で仕事をしているため通勤はしていないんですが、生活全体のバランスが整うことが静岡市の移住の決め手になりました。
――静岡市に移住したことで、生活はどう変わりましたか?また、どんな点が良かったですか?
渡辺:所沢に住んでいた頃は、東京湾まで釣りに行くのに車で1時間半以上かかっていました。今は静岡に移住し、車でわずか10分で海へ行ける環境に。釣り好きにとっては理想の暮らしを実現できています。
――釣りが趣味なんですね。静岡市は釣りに適しているんですか?
渡辺:はい、私のエネルギーチャージの場所は、清水港を中心とした海なんです。ボートアジングやタチウオジギング、折戸湾でのかかり釣りなど、船に乗ればすぐ豊かな釣り場に出られ、多種多様な魚に出会えるんです。また、三保まで足をのばせばショアジギングの名所で、大物を狙えるのも魅力です。

渡辺:それに海だけでなく、自然が豊かなので、子供と山道を散歩するのもリラックスタイムになっています。山道を抱っこして登る大変さも、家族の思い出として楽しんでいます。

――静岡市でのおすすめグルメスポットがあれば教えてください。
渡辺:清水駅近くの「RAINBOW」と「Bar ROBUSTO」とがお気に入りのハシゴコースです。RAINBOWで本格ハンバーガーやジャークチキンを楽しみ、お腹を満たした後、Bar ROBUSTOでレモンサワーを片手に過ごします。Bar ROBUSTOはカジュアルで気取らない雰囲気の中、同姓同名の陽気な店長が迎えてくれ、店内はにぎやかで笑いが絶えません。夜遅くまで開いていて、仕事が遅くに終わった時でも立ち寄れます。静岡市の街についての情報収集は大体ここでしています。

移住後の仕事の変化は?
――静岡市に移住して、仕事関係について変わったところはありますか?
渡辺:CGの仕事は家の中でやっているので、東京とほぼ変わらないんですが、AIの事業のように新しい仕事を始めてみたり、釣りや飲み会のスケジュールが増えたりして、毎日忙しくなったと感じます(笑)。静岡市移住後も、以前から付き合いのあるお客さんから仕事は引き続きいただけているので、その点については全く困ってないですね。
――移住したことで、新しく仕事を獲得するために営業しなければとは思いませんでしたか?
渡辺:それが、静岡市にいて釣りをしていることが営業の代わりになっているんです(笑)。釣り友に社長さん方が多くて、静岡市で釣りや飲み会をしているうちに、それが自然と人と人との繋がりになって、結果として営業になっているような感じです。僕はもう静岡の海には詳しくなってるので、CG業界で釣り好きな人が静岡市に来たら、任せてくださいよと。
――趣味の釣りが仕事にもいい影響を与えてくれるなんて最高のサイクルですね。それでは最後に、これから地方へ移住を考えているクリエイターにアドバイスをお願いします。
渡辺:地方に移住すると、行政から賃料を補助して貰えるとか、そういうところに目が行きがちですし、それもありがたくはあるんですが、そういったことに魅力を感じて移住してくるよりも、地方の特性を活かした新しいビジネスをつくり出せるような人や企業さんに来て欲しいですね。
例えば静岡市なら、お茶で何かできないかとか、清水港のマグロとコラボして何かできないかとか……。単価の高い東京の仕事を家賃が安い地方で請け負うだけの「東京の工場」として終わってしまうような仕事だと、結局は長続きしないと思うんです。それよりも、地方に根付くような新しいビジネスをやりたいから地方に移住する、といったような志を持った人たちに来て欲しいですね。
――今回はありがとうございました。
TEXT_オムライス 駆
EDIT_池田大樹(CGWORLD)