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    CGWORLD20周年を記念した3ヶ月連続新連載の第2弾は、長年インタラクティブコンテンツの制作を手がけ、様々な有名作品とのコラボレーションにも携わってきたCodelightの高田稔則氏が、Unityを用いたインタラクティブコンテンツの開発手法を基礎から丁寧に紹介していきます。

    TEXT_高田稔則 / Toshinori Takata(Codelight
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

    インタラクティブコンテンツとはどういうもの?

    はじめまして、Codelight株式会社の高田といいます。今回から「Unityでつくるインタラクティブコンテンツ」と題して、インタラクティブコンテンツのつくり方を紹介していきます。

    「インタラクティブコンテンツ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ものすごくざっくりというと「様々なセンサーを利用して、人の動きに反応するコンテンツ」のことです。実例としては弊社でも導入しているLumoPlayのサイトをみるとわかりやすいと思います。これは赤外線カメラを利用して人の動きを検知し、それに合わせた映像をプロジェクタで投影するシステムです。

    Lumo Play Demo Reel 2018 from LUMO Interactive on Vimeo.

    このようなコンテンツは「展示コンテンツ」「デジタルサイネージ」「デジタルアート」とも呼ばれ、様々な博覧会やイベント、展示施設で利用されています。弊社もキッザニア東京赤坂サカス、施設の展示スペースなどに設置されているコンテンツの開発に関わっています。近年インタラクティブコンテンツに対する注目は非常に高く、今年6月には東京・お台場に「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」という巨大なデジタルアートミュージアムがオープンしました。

    teamLab Borderless, Digest Movie / チームラボボーダレス、ダイジェスト映像

    「人の動きを検知してプロジェクタでアクションを返す」という基本的なシステムはLumoPlayと変わらない部分もありますが、大規模かつ高度につくり込まれています。ここまで複雑なものでなくても、タッチパネルを使った情報端末、人気キャラクターとの記念撮影、新商品の発表イベント、運転体験コーナーなど魅力的なコンテンツをいたるところで目にします。皆さんの中には実際にこういったコンテンツをつくりたいけれど、どうすればよいのかわからない人もいるのではないでしょうか。そのような方のために本連載ではUnityを利用して具体的にインタラクティブコンテンツのつくり方を紹介していきますので、お付き合いいただければと思います。

    弊社が手がけるインタラクティブコンテンツは、ほぼUnityで作られています。ここで改めて簡単にUnityに触れておくと、UnityとはUnity Technologiesが開発しているゲーム開発環境です。わかりやすい入門書籍が多数出版されていますし、Webで高度な応用事例も紹介されていて学習しやすい環境が揃っています。

    実際の制作ではモデル、アニメーション、拡張機能などコンテンツをつくるときに必要な豊富なデータ(アセット)が提供されているアセットストアを利用することで、短期間でクオリティの高いコンテンツをつくることが可能になっています。さらに同じソフトを使うことで他の会社さんとの共同作業を行いやすくなるメリットも大きいです。今後は3D制作の共通プラットフォームとしてデザイナー、エンジニア、プランナーの区別なく利用する場面が広がっていくのではないでしょうか。

    定番ですが、情報源として以下のTwitterアカウントはフォローをオススメします。
    凹みTips:https://twitter.com/hecomi
    テラシュールブログ:https://twitter.com/tsubaki_t1
    高橋啓治郎:https://twitter.com/_kzr

    Unity以外の開発環境はどんなものがあるの?

    ここでUnity以外のソフトも紹介しておきましょう。

    Unreal Engine 4

    Epic Gamesが開発しているゲーム開発環境です。多機能でレンダリングが美しく、映像制作のレンダラとして使われることもあります。ブループリントと呼ばれる機能を使えばコードを書かなくてもゲームロジックを組んでいくことが可能です。AAAのゲームタイトルによく利用されています。

    GDC 2018 Features Reel | Unreal Engine

    TouchDesigner

    Derivativeが開発しているビジュアルデベロップメントプラットフォームです。ブループリントと同じようにノードを組み合わせてプログラムを組むことができ、さらにその処理過程がリアルタイムに可視化されます。開発過程のそのものを作品として楽しむことも出来る面白いソフトです。

    TouchDesigner Tutorial 01: A Simple Audio Reactive Sphere .jp from Derivative on Vimeo.

    Max

    Cycling'74が開発しているマルチメディア向けの統合開発環境です。音の処理にとても強いソフトです。これもノードベース(パッチと呼びます)で処理を組んでいきます。

    Max 8 First Look: Max Console

    openFrameworks

    これまで紹介したソフトとはちがい、OpenCV(画像処理ライブラリ)、OpenGL(レンダリングライブラリ)などのよく使うライブラリをまとめてC++で開発できるようにしたプログラマー向けのソフトウェアです。使用にはC++での開発知識が必要になります。openFrameworksのAPIデザインはProcessingがベースになっているため、プログラムに慣れていない人はProcessingから入ると理解しやすいと思います。同様のライブラリにCinderがあります。

    また、以下のサイトでは世界中の様々なコンテンツのメイキングが紹介されています。ここで紹介した以外のソフトもたくさんありますのでいろいろ調べてみてください。

    Creative Applications Network

    実際に、Unityでコンテンツづくりを体験していくために少し準備をします。インタラクティブコンテンツはマウスとキーボード以外のデバイスを使った方がそれっぽくなるので、今回は手軽に雰囲気を感じてもらうために有料アセット「OpenCV for Unity」を使います。

    FaceTracker Example using OpenCV for Unity

    OpenCVは画像処理を行うときのデファクトスタンダードなライブラリで、それをUnityで使えるようにしたものがこのアセットです。価格は$70と高めですが、使う場面も多く良質なサンプルが提供されているので購入しても決して無駄になることはありません。

    では次回、OpenCV for Unityのサンプルを使い、簡単な顔認識コンテンツをつくっていきます。お楽しみに。



    Profile.

    高田稔則/Toshinori Takata(Codelight)
    Codelight株式会社 代表取締役・インタラクションエンジニア
    フリーランス、株式会社TBSテレビ等で映画CG制作、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(現 ソニー・インタラクティブエンタテインメント)でPS4のOSD開発などを経て2006年にCodelight株式会社を設立。インタラクティブコンテンツの制作を中核として、製造業向けのプロトタイプ開発なども行う
    www.codelight.co.jp