モーショングラフィックスデザイナーのヨシダタカユキがSENSE∞の第12世代インテル® Core™ i9プロセッサー 搭載モデルを徹底チェック!
性能の異なる2種類のコアで構成されたハイブリッドCPUを採用し、さらなる高速化と電力効率の向上を実現したインテルの最新CPU「第12世代インテル® Core™ プロセッサー」。その優れたパフォーマンスが、さまざまなクリエイターに大きなメリットを与えてくれるはずだ。
そこで今回は、第12世代インテル® Core™ プロセッサーのハイエンドモデル「インテル® Core™ i9-12900K プロセッサー」や高性能GPU「GeForce RTX 3080」などを搭載したパソコン工房のクリエイター向けPC「iiyama PC SENSE∞(センス インフィニティ)」を、モーショングラフィックスデザイナーのヨシダタカユキ氏が検証。その実力をチェックしてもらうとともに、インテルが取り組むクリエイターの創作活動支援プログラムについても語ってもらった。
大学で培ったスキルを映像や3DCGで表現、スキルの融合によって一気に面白くなった
フリーランスのモーショングラフィックスデザイナーとして、多彩なコンテンツを生み出しているヨシダタカユキ氏。映画やテレビ番組、CM、イベントなどの映像をメインに、デザインから制作までを一括して手掛けるスタイルで、多彩な案件に取り組んでいる。さらに現在は魅力的な自主制作作品も生み出し、世界に向けて発信中。今回はそのヨシダ氏に、実際の制作作業を踏まえた検証をお願いした。
ヨシダタカユキ 氏
武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科を卒業後、テレビ・イベント系の映像を手掛けるCG制作会社に入社。アートディレクションを担当する一方でモーショングラフィックスにも興味を持ち、そのスキルを独学で習得する。現在はモーショングラフィックスデザイナーとして独立し、自主制作にも力を入れる。
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大学時代、ヨシダ氏は舞台美術やインテリアデザイン、アートファッションなど、総合芸術を幅広く学んでいたそうだ。しかし、授業では基本的に複数人のチームで1つの大きな作品を作っていたため、ヨシダ氏は徐々に「自分の手だけに収まるようなサイズ感のデザインをやってみたい」という思い抱くことに。その思いからグラフィックデザインに関心を示し、ポスター制作のアルバイトや知人とのフリーペーパー制作などから、そのスキルを独学で学んだという。
さらに、大学卒業後に入社したCG制作会社では、3DCGなども使った映像を制作する部署に配属。ここでアートディレクターとして映像制作のスキルを学んでいくなかで、3DCGにも興味を持ったそうだ。ヨシダ氏によれば、元々3DCGの制作は別の専門の人に任せていた業務であり、本来であれば「ヨシダ氏自身が担当すべき業務ではなかった」という。しかし、ヨシダ氏はそこに楽しさを見出し、3DCGやモーショングラフィックスのスキルも独学で習得し、制作を手掛けるようになったそうだ。「大学ではグラフィックや空間デザインに関するスキルを培ってきたが、就職して映像や3DCGに出会ったことで、“それらをまとめて形にするスキル”を手に入れることができたと強く実感。そのスキルの融合があったからこそ、一気に面白くなった」と、当時の心境を説明する。
ShowReel2022 from Takayuki Yoshida on Vimeo.
画面が“弾む”ことで映像に命が吹き込まれる
モーショングラフィックスの“面白さ”について、ヨシダ氏は「サウンドやタイムラインの概念」を挙げる。ヨシダ氏は元々グラフィックデザインから入ったことから、「静止画に音が入り、さらに動き出して展開も加わることの“気持ち良さ”が、自分にはとても新鮮だった」と振り返る。
では、この「気持ち良さ」とはどんなイメージなのか。ヨシダ氏は「画面(あるいは空間)が弾んでいる」というニュアンスでそのイメージを表現する。ヨシダ氏の代表作である「東京新型横断歩道」でそのイメージを説明すると、「躍動感のある細かいモーションが高密度で詰め込まれている」という部分がポイント。その空間がまるで生き物のように動き、まるで映像に命が吹き込まれているような感覚が“弾んでいる”という表現につながるそうだ。さらに言えば、作品が生み出すこの魅惑的な動きは当然、何度も試行錯誤を繰り返して調整されており、そういった表現の追求こそが作品に対するヨシダ氏の“こだわり”と言える。
作品の制作では、メインのDCCツールとしてCinema 4DとAfter Effectsを使用。さらに、レンダラーにはRedshiftを採用し、GPUレンダリングを活用している。Cinema 4Dを選んだ理由についてヨシダ氏は、After Effectsとの「連携のしやすさ」やシンプルなUIによる「使いやすさ」を挙げる。After Effectsをひと通り覚えてから3DCGソフトに移行した経緯があるためAfter Effectsとの「連携のしやすさ」を重視したほか、Mayaも試してみたが「機能が豊富でもやや複雑に感じた」ことから、最終的にCinema 4Dを選んだそうだ。
また、Redshiftを選んだ理由には「GPUレンダリングの快適さ」を挙げた。初めてGPUレンダリングに触れたときの感動を、ヨシダ氏は「まさに革命的だった」と表現。例えば、従来のCPUレンダリングでは処理速度の問題からグローバル・イルミネーションの使用を諦めるざるを得ないケースもあり、「それっぽい表現を疑似的に見せるような研究もしていた」という。しかし、GPUレンダリングであれば、そのような対応は必要なし。しかも、インタラクティブに操作しながら結果を見られるため、ルックを見ながらモーションデザインが可能になったそうだ。デザイナーやアートディレクターにとって、その恩恵は「非常に大きい」と語った。
CPUはシングルコアのクロック周波数も重視、さらにGPUやメモリ、OSにもこだわる
使用するPCの構成について、ヨシダ氏がまず重視するのは「CPU」。After Effectsでの作業比率が高いことから、購入の際には出来る限り高性能なモデルを選んでいるという。ただし、After Effectsはシングルコアのクロック周波数が影響する処理も多いため、ヨシダ氏は「コア数とシングルコアのクロック周波数のバランスも踏まえて選んでいる」そうだ。
また、GPUレンダリングを使用していることから、GPUも極力高性能なモデルを選択。さらに、Cinema 4DとAfter Effects以外にもIllustratorやPhotoshopを並行して起動することもあるため、メモリも「64GB以上しかありえない。むしろ、最近は128GB欲しいぐらいかも」と付け加える。そのほか、GPUレンダリングの活用という観点から、OSはWindowsをチョイス。作業効率を上げるためにはパーツごとの自由なカスタマイズが不可欠となるため「Windowsの方が融通が利きやすい」とした。
このように、作品づくりだけでなくPCの構成にもこだわりを持つヨシダ氏。今回は、自主制作作品などを使って検証を行ってもらい、現在使用している現行機のPCと比較しながら、SENSE∞の性能を見極めてもらった。
検証機「SENSE-F069-LC129K-VBX-CMG [CG MOVIE GARAGE]」と第12世代インテル® Core™ プロセッサーの概要
今回は、ユニットコムのSENSE∞シリーズ「SENSE-F069-LC129K-VBX-CMG [CG MOVIE GARAGE]」の性能を、ヨシダ氏のPCと比較しながら各ツールで検証してもらった。
検証機のSENSE-F069-LC129K-VBX-CMG [CG MOVIE GARAGE]は、第12世代インテル® Core™ プロセッサーで最上位クラスの性能を持つ「インテル® Core™ i9-12900K プロセッサー」を採用。第12世代インテル® Core™ プロセッサーは10nmのプロセスルール「Intel 7」で製造された最新プロセッサーで、パフォーマンス重視の「P-core」と効率や低消費電力を重視した「E-core」という、2種類のCPUコアで構成されている。これにより、総合的な処理性能と電力効率の向上をはかっている点が大きな特徴だ。なお、P-coreとE-coreではクロック周波数などのスペックが異なるほか、ハイパースレッディングへの対応はP-coreのみとなるため、コア数の合計は16コアとなるが総スレッド数は24スレッドとなる。
また、GPUは上位モデルの「GeForce RTX 3080」、メモリは32GB、ストレージはNVMe接続の1TB SSDを搭載。優れたCPUに加えて、全体としてもハイスペックなパーツで構成されており、優れたパフォーマンスを発揮するモデルとなる。
一方、ヨシダ氏の現行機は3年ほど前に購入したデスクトップPC。当時の最上位クラスだったCPU「インテル® Core™ i9-9900 プロセッサー」やGPU「GeForce RTX 2080 Ti」、さらには64GBメモリなどを搭載。現状でも、高い実力を発揮できる構成に仕上がっている。
SENSE-F069-LC129K-VBX-CMG [CG MOVIE GARAGE]
- 価格
372,700 円~(税込)
- CPU
インテル® Core™ i9-12900K プロセッサー(16コア【P-core 8、E-core 8】 / 24スレッド / P-core 3.20GHz、E-core 2.40GHz / TB時最大5.20GHz【P-core 5.10GHz、E-core 3.90GHz】 / 30MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3080
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe接続1TB SSD
- OS
Windows 10 Home 64bit
- 電源
800W【80PLUS GOLD】
ヨシダタカユキ氏の現行機
- CPU
インテル® Core™ i9-9900 プロセッサー(8コア / 16スレッド / 3.10GHz / TB時最大5GHz / 16MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 2080 Ti
- メモリ
64GB(16GB×4)
- ストレージ
NVMe接続1TB SSD
- OS
Windows 10 Home 64bit
▶検証1:CPUテスト(Cinema 4DとAfter EffectsでのCPUレンダリング時間計測)
異なる素材を利用し、Cinema 4DとAfter EffectsでCPUレンダリングの時間を計測した。Cinema 4Dでは、約100万ポリゴンのシーンをCPUレンダリングしたところ、現行機では1フレームに「約13分」かかったのに対して、検証機は「約7分」と2倍近い性能差となった。
After Effectsでは、3Dレイヤーで構成された現在制作中のシーンを使ってCPUレンダリングを実施。現行機の「約1分15秒」に対して検証機は「約40秒」と、こちらも大きな差となった。それぞれの結果から、コア数やクロック周波数のスペック差とともに、CPUの世代進化による全体的なパフォーマンスの向上も相まって、検証機のインテル® Core™ i9-12900K プロセッサーが圧倒的な性能を発揮。これに対してヨシダ氏は、「待ち時間がかなり短縮されることがわかったので、これは大きなメリットになる」と笑みを浮かべた。
▶検証2:GPUテスト(GPUレンダラーRedshift、After Effectsリアルタイムビュー計測)
自主制作の動画作品「新宿 歌舞伎町 0番街」を使用し、GPUレンダリングにかかった時間を計測。現行機では「約3分40秒」かかっていたものが、検証機では1.5倍以上速い「約2分」で完了した。
また、After Effectsでの作業中の使い勝手もチェックしたところ、通常の操作では現行機と比較してもそれほど大きな差は感じなかったそうだ。しかし、リアルタイムレンダリングでは少し重めのシーンを動かしても、検証機であれば「パッとすぐに結果を表示」(ヨシダ氏)。ヨシダ氏は、現行機のGeForce RTX 2080 Tiもそれなりにスムーズだと感じていたそうだが、検証機のGeForce RTX 3080は「さらにスムーズに処理してくれた。最新モデルの実力を感じた」と満足げだった。
CPUの実力差に買い替えを痛感! さらにクリエイター支援にも注目
今回の検証でヨシダ氏は、検証機の優れたパフォーマンスを高く評価。とくにCPUは「ここまでの差が出ると、さすがに買い換えの必要性と痛感した」と語り、そのパフォーマンスの高さに脱帽した様子だった。また筐体デザインに関しても、持ち運びを考えた上面の取っ手や、取り外し可能は上面と正面のメッシュパネルに着目。ヨシダ氏はレンダリングで一晩中PCを回し続けていることも多いため「ファンの掃除がしやすい」といったプロ仕様の使い勝手の良さも魅力の1つとして挙げた。
そのほか、インテルは次世代を担うクリエイターを支援する「インテル® Blue Carpet Project」を2022年3月からスタートしているが、ヨシダ氏はその取り組みにも注目。このプロジェクトでインテルは「プロフェッショナルから学生まで、さまざまな次世代を担うクリエイターに、インテル® CPUを搭載した最新PCを提供。最先端のテクノロジーを体感してもらいながら、Windows PCによるクリエイティブの可能性の拡大をサポートしていく」としており、PCの性能にもこだわるヨシダ氏はその姿勢に共感する。
ヨシダ氏いわく、最新のPCを使うことで待ち時間を減らせれば、それだけ「トライ&エラーを行える時間が増える」ことになる。これはつまり「処理速度が倍になれば、得られる経験値も倍に増える」ということであり、クオリティアップにもつながることを意味する。それだけに、インテルが若いクリエイターを支援することは「とても意義のあることだと感じる」と語ってくれた。
TEXT_近藤寿成(スプール)