Unityを軸としてMV監督・CG制作からVTuberまでをこなす マルチクリエイター・ヲタきち氏が 超軽量ノートPC「AERO 14 OLED」をレビュー!
Ado『ウタカタララバイ』のMV監督を務め映像監督として活躍するほか、3DCG制作やライブディレクション、さらには自身がVTuberとして配信を行うなど多方面で活動するマルチクリエイター・ヲタきち氏。
同氏にGIGABYTEから新発売となったクリエイター向けノートPC「AERO 14 OLED」を、普段実際に行なっているCinema 4DとUnityでの制作、VTuberとしての配信までを通して検証してもらった。
ハイスペックモデルでマルチな制作を行う
映像クリエイター・ヲタきち氏
――普段はどのような制作をされていますか?
ヲタきち氏(以下、ヲタきち):映像ディレクターのヲタきちと申します。普段はVTuberとして、3Dキャラクター「ヲタきち」名義で制作活動を行なっています。ここ最近では昨年末の紅白歌合戦のウタ『新時代』ライブのクリエイティブディレクションと3DCG制作などを行なったり、「ヲタきち不動産」としてバーチャルスタジオ制作を行なったりと、3DモデルやUnityを活用した事例が多いです。そのほか、モーショングラフィックスを活用した広告関係のCMや、実写映像のプロジェクトも手がけています。
ヲタきち
バーチャルYouTuber「ヲタきち」は、地球外生命体マルチクリエイターとしてYouTube活動を行う他、企業依頼の映像制作も行います。ワンアイデアを活かした撮影編集ギミックやグラフィックを掛け合わせた映像構成、イベント企画やグッズデザインなど、作る事全般が大好きな宇宙人です!
2014年7月、映像制作会社「ナナメ」を共同起業。2018年10月に独立後、ディレクターを主な活動としたクリエイティブチーム「NIN」を設立。
YouTube:@wotakichi
Twitter:@wotakichii_
――幅広いクリエイティブ活動を行なっているんですね! 普段はどういったPCを使用されていますか?
ヲタきち:昨年末に買い替えたばかりのデスクトップPCをメインに使用しています。CPUはインテル® Core™ i9-13900K(24コア32スレッド)、GPUはGeForce RTX 3090 Ti、メモリ128GBというモデルです。スペックは「大は小を兼ねる」と考えていて、この先5年、最低でも3年を見据えて選定しました。
――非常に高いスペックですね。どういった理由で各パーツを選定したのでしょうか。
ヲタきち:普段からマルチに仕事をしているので、必然的に一定のスペックは求めてしまいます。3DCG制作においてはGPUも重要ではありますが、それよりも重視していたのがCPUとメモリでした。UnityやCinema 4Dを使うことはもちろん、実写の撮影や編集も行いますし、企画書の作成などではPhotoshopやIllustratorも使用します。ジャンルの異なる3つの仕事が同時に進行しているときもあって、どうしても複数ツールを立ち上げておく必要があるんです。Cinema 4Dで制作したモデルをUnityで編集して書き出して、それをPremiere Proでカット編集してAfter Effectsでコンポジットして……という一連の作業を常日頃から行なっていると、同時にいくつものツールを併用するのが基本になるんですよ。
――今回はクリエイター向けのノートPCとして、AERO 14 OLEDをご使用いただきました。まずは率直に、ご感想をお聞かせください。
ヲタきち:モデリングからUnityでのシーン作成、配信までの一連の作業を試してみましたが、完璧に動いていましたね。私自身は10年ほど映像の世界にいますが、10年前は「DCCツールをノートPCで動かしてみたい」というのは鼻で笑われる感じだったと思います。仮に動いたとしても、分厚くて高価なノートPCが必要でしたよね。率直に、この薄さ、このサイズ感のノートPCでスムーズに制作ができたことには驚いています。
出先でも安定した作業環境を求める ヲタきち氏からみたAERO 14 OLEDは?
――自宅では申し分ないスペックで作業されているようですが、普段の業務へのノートPCの導入も検討されているのでしょうか?
ヲタきち:はい。以前から「出先でもしっかり使えるパソコン」が欲しいと思っていたんですよ。ARライブの検証やアートディレクターとしての作品監修、あるいは教育機関での講義など、一時的に外に出て作品を見せるシーンが多いんです。
自宅マシンでつくったシーンデータをノートPC側で再現するのは難しいので、現場でリアルタイムにプレビューする場合は出先のPCをお借りして作業を行うこともあります。データの移動も大変ですし、動かない時はもっと大変です。
MacBookは持っていますが、これはあくまで打ち合わせ用と割り切っています。そもそもメインで使用しているUnityの開発がWindows寄りですので、Windowsで使いやすい高性能ノートPCが必要だな、とは常々感じていました。
AERO 14 OLED
- CPU
インテル® Core™ i7-13700H
(12コア24スレッド)
- GPU
NVIDIA® GeForce RTX™ 4050 Laptop GPU 6GB GDDR6
- メモリ
16GB メモリ LPDDR5
- ストレージ
1TB M.2 PCIe Gen4 SSD
ヲタきち氏のメインPC
- CPU
インテル® Core™ i9-13900K
(24コア32スレッド)
- GPU
NVIDIA® GeForce RTX™ 3090Ti 24G B GDDR6X
- メモリ
128GB(32GB × 4) DDR5-4800
- ストレージ
1TB SATA SSD / 4TB M.2 PCIe Gen3 SSD
――ノートPCに求めるものはどういったところですか?
ヲタきち:いきなりカクつかないこと、つまり常に性能が安定していることです。長時間の撮影現場ではバッテリーをずっと回し続けるせいもあって、途中で性能が落ちてくることもあります。また、撮影機材をレンタルしている場合などは撮影データを当日中に外部ストレージに移す必要がありますが、その際のスピードも重要です。また、「USB2.0ポートしか空いてない!」なんてことがないように、ハードウェア設計も大切だと考えています。今回検証した一連の流れの中では、AERO 14 OLEDはこの辺りもクリアしていたように思います。
Cinema 4DやUnityによるシーン制作と
フルトラッキング配信で検証!
――ここからは実際の検証結果についてお伺いします。まずは、今回の作業内容について教えてください。
ヲタきち:今回はCinema 4Dでモデリングした3m x 3m四方の部屋をUnityにインポートし、各種設定の上でフルトラッキングのモーションキャプチャを試しました。その上でOBSを起動し、問題なく配信ができるかをチェックしています。
「潜水艦」をイメージしたアイソメトリックな構図の部屋で、キャラクターが動くにあたって必要な最低限の要素を用意したモデルをつくりました。Cinema 4D側ではClonerを用いてモデリングを効率化したり、UV調整をしたりと、日頃からデスクトップPCで行うことと同等の作業を行なっています。大体、モデリング自体は3時間ほどで行いました。
――部屋のモデリングにあたって意識した点などがあれば教えてください。
ヲタきち:キャラクターの等身が低いので、オブジェクトの中心位置を下の方に置いています。この時点でテクスチャやマテリアルは設定しておらず、シーンの動的な仕掛けは全てUnity上で行なっています。ちなみに、最初は潜水艦のイメージでつくっていましたが、最終的にはタイムマシンのような部屋になりましたね(笑)。
――この後はUnityの作業になると思いますが、シーン設計についての解説をお願いします。
ヲタきち:Cinema 4Dでの作業が終わったら、FBX形式でエクスポートしたのちUnityにインポートします。このシーンのポイントは4つあって、ひとつは右後ろに見える3本のハンドルがアニメーションしている部分。これはキーフレームがループしているだけで、それほど重い処理ではありません。もうひとつは左にあるパイプの中を流れる青色の光で、これはマテリアルが一方向に向かってオフセットする仕組みになっています。また、後方に位置する空気の排出口と、正面上部に位置するぼやっとしたボリュメトリックライトが設置されています。
ひとつひとつの要素は重いものではないものの、今回は検証用ということもあってある程度のスペックがないとリアルタイムで動かないシーンをつくろうと思っていました。でも、結論から言えば、本機では全く問題なく動作していました。アニメーションやパーティクル、ブルームなどの処理など、いくつか重くなるであろう要素を入れてみたんですけどね。
――動的な要素が多いシーンではありますが、問題なく動作していたということですね。作業中も、ストレスなくスムーズでしたか?
ヲタきち:お世辞ではなく、デスクトップPCと変わらないようなテンション感で作業ができていましたね。最初は「ディスプレイを外部で繋げないといけないかな?」、「キーボードも普段使っているものを繋げた方が良いかな?」と不安に思う部分もありましたが、作業してみるとマウス以外はAERO 14 OLED単体で非常にスムーズでしたた。
Unity関係でひとつ気付いたのが、パッケージのインストールが非常に速かったんですよ。普段よく画面越しにUnityのレッスンをやっているのですが、それぞれのクリエイターの環境によってアセットやプラグインの読み込み時間に大きな差がある印象を受けます。本機はそこが本当に速かったので、優れた構成なんだと改めて実感しましたね。
――PCIe Gen4のSSDストレージがサポートされていることもあって、ファイルの読み書きは速いのかも知れませんね。メモリもDDR5世代なので、一昔前の世代から比べると大きな差があると思います。
ヲタきち:描画負荷だけでなく、今回はフルトラッキングのモーションキャプチャも試しているので、多少ではありますが通信処理なども行われています。ただ、全体的に本当にスムーズですね。ちなみに、キャプチャデバイスは「mocopi」を使っています。
キャリブレーションさえ終われば、あとはキャラクターが私の動きと同期して動いてくれます。もちろん仕事ではハイエンドなキャプチャスタジオを活用しますが、個人としてもここまで手軽にフルトラッキングができるようになっているんです。
ヲタきち:今回は配信用という目的のため、同シーンを30分以上使う前提でライトをベイクしています。こういった配信用の部屋は自分で配信する場合に加え、VTuberさんに納品することも多いので、Unityの知識がない方でも使えて、なおかつ低スペックなものでも動けるようにベイクすることが多いです。ちなみに、今回の検証ではAERO 14 OLEDに搭載の標準マイクを使用しましたが、普段はピンマイクを使用するなどしてリップシンク(音声に合わせてキャラクターの口が動く)を設定しています。
――配信はOBSとのことですが、これはパッケージ化したUnityの実行ファイルをゲームキャプチャしているだけでしょうか?
ヲタきち:その通りです。ある程度の画質にすると配信にも負荷が掛かりますが、ここも問題なかったですね。充電しながらの高負荷な作業の際はさすがに発熱を感じましたが動作については後半につれて重くなるなどはなく、少なくとも1時間以上は快適に配信作業ができました。
これはつまり、ノートPCとmocopi、あとはキャプチャ情報を受け取るiPhoneさえあれば、どこでも配信スタジオの代わりになるということなんです。高価なスタジオでなくとも、例えば地域の公民館などがVTuberのスタジオになるような未来がくるかも知れませんね。
――その意味でも、自宅ではなく出先でUnityが動作するノートPCの重要性は高まりそうですね。
ヲタきち:そうですね。こうした環境構築は、個人のVTuberはもちろん、例えば「バーチャル空間でのちょっとした配信をやりたいけど、制作会社に毎回発注するのは大変」といった企業などが使う分にはマッチするかもしれません。
スペック、ディスプレイ、軽さ、総じて
「つくっていて楽しい!」と思えるノートPC
――改めて、検証を終えたAERO 14 OLEDの総評をお願いします。
ヲタきち:WindowsのノートPCを使うのはかなり久しぶりでした。思い返せば、いつも適当なものを買って後悔していたような記憶もあります。ただ、今回AERO 14 OLEDを使ってみて、改めて自分の中で「ノートPCは十分クリエイティブな仕事に使える」という意識が芽生えました。
一番良いと思ったのは液晶画面でした。モニタによって色味が違うのは当たり前ですが、本機は非常に発色がよく、そのままの色が出ていると感じました。これは本格的な現場での確認に使っても問題がないと思います。
――スペック面で言うと、VESA DisplayHDR™ 600 TrueBlack認証、映画産業レベルの100%DCI-P3色域を持っています。きちんとクリエイターに評価されるディスプレイだということを聞いて、安心しました。
ヲタきち:正直に言うと、ノート型で色味の再現性を求めるならMac一択なのかなと思っていたんです。ただ、今回はそのイメージが逆転しました。また、アスペクト比が16:10なのも、画面が広く感じられて嬉しいポイントです。上下にWindowsのタスクバーがあったとしても16:9映像をフル画面でプレビューできますし、UnityやCinema 4Dなどマルチウインドウで扱うツールも使いやすいですね。
――最後に、AERO 14 OLEDはどんなクリエイターに向いているか、マルチな活動を続けてきたヲタきち氏ならではの目線で教えてください。
ヲタきち:直接的には、「なるべく普段のデスクトップ環境との差がない、スタイリッシュで軽量なノートPCが欲しいクリエイター」だと思います。完全に同じ環境をつくるのは難しいというか、つくる意味はないかも知れませんが、少なくとも私自身はデスクトップPCと非常に似たテンションで制作を進めることができました。
性能的な面では、モデリングを行うアーティストにも向いていると思います。また、液晶の品質を考えると、PhotoshopやIllustratorで作品づくりをするアーティストや、DaVinci Resolveなどでカラーグレーディングを行うコンポジターにもおすすめできると思います。スペックも申し分ないですし、色の再現性がとにかく高いので、本当に「つくっていて楽しい!」と思えるノートPCだと思います。
お問い合わせ先
日本ギガバイト株式会社
www.gigabyte.com/jp
TEXT_神山大輝/ Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_柳田晴香 / Haruka Yanagida