CG業界での活躍を目指す学生やアマチュア向けのコンテストとして、CGWORLDが継続的に開催している学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」。毎回、第一線のクリエイターとCGプロダクションで構成された審査員陣を唸らせる力作が集うこのコンテストだが、その入賞者には日本を代表するCGスクールのデジタルハリウッド(以下、デジハリ)在校生が目立つ。その理由はデジハリのカリキュラム? 指導力? 今回、デジハリの講師とWHO'S NEXT?受賞の卒業生に話を伺い、その秘密を探った。
CGWORLD(以下、CGW): 皆さん過去にWHO'S NEXT ?で受賞経験をお持ちですが、当時のことを伺っていきます。
北之防博文氏(以下、北之防):僕は2022年第1弾で第9位の優秀作品に選んでいただきました。これは入学して最初の課題となる、3ヶ月をかけて架空の部屋の静止画をつくる「部屋課題」でつくったものです。講評の時間に、小倉先生をはじめ先生方に「ぜひ出すべきだ」と言ってもらえて、プロからの意見も聞けるしということで応募しました。
卒業生
北之防博文氏
カナバングラフィックス ショットアーティスト
2022年 大阪本校 本科CG/VFX専攻卒
www.kanaban.com
CGW:スピード受賞ですが、制作はスムーズに進みましたか?
北之防:いえ。入学までCG経験がなく、CG作品自体初めてでしたから、途中ですごく迷いました。その当時、途中経過を報告し合う授業で小倉先生に迷ってることを伝えたら、「初心に返るべきだね」と。ガツンと言われたことがきっかけで、最初につくりたいと思ってたものに回帰できました。
小倉由也氏(以下、小倉):作品づくりって途中で浮気するのが付きものですが、だいたい最初の彼女が一番良いんですよ(笑)。
講師
小倉由也氏
講師
CGW:深いですね。では次に、小川さんに伺います。
小川遼一郎氏(以下、小川):私は2022年第2弾で第13位に選んでいただきました。制作時期は「部屋課題」とその後の「動画制作課題」が終わったあとで、ちょっと新しい作品をつくってみようかなというタイミングでの制作でした。
卒業生
小川遼一郎氏
トゥエンティイレブン ジェネラリスト
2023年 東京本校 本科、CG/VFX専攻卒
2011.co.jp
CGW:制作のきっかけは何ですか?
小川:周りに応募すると言っていた人がいたからです。けっこう時間がなくて、約3週間でつくって締め切り直前に滑り込みで提出しました。
CGW:小川さんは次の2023 年第1弾でも受賞されてますよね?
小川:はい、ありがたいことに、第9位に選んでいただきました。森江康太さんのアニメ調なフォトリアルな画に惹かれて、自分でもやってみようと思ってつくった作品です。
CGW:ルックのテイストがちがう作品で2回とも受賞、すごいです。では次に中塚さんお願いします。
中塚南緒氏(以下、中塚):私は2022 年第2弾で小川さんと同率第13位に選出いただきました。北之防さんと同じく「部屋課題」の作品で、先輩からのアドバイスもあって応募しました。
卒業生
中塚南緒氏
WACHAJACK プロデューサー
2023年大阪本校専科、3DCGデザイナー専攻卒
wachajack.com
CGW:特に力を入れたのはどの部分ですか?
中塚:「部屋課題」は企画、コンセプトを5W1Hできちんと練って、空間だけでストーリーを表現するというのが大阪本校のルールでした。それで、私の場合は植物園に行ったりしてフィールドワークを十分やってから、最後にCGに着手した感じです。
CGW:逆に苦労した部分はどのあたりでしょうか?
中塚:ひとつは構図ですね。先生から「簡単なモデルでも構図さえ綺麗なら画として決まる」と教えてもらって、実際やってみてその通りでした。あとはコンポジットです。先生に「コンポジットってメイクと一緒で、全体を見て綺麗に仕上げるのが大事」とアドバイスしてもらって、そこからは、作業したら頭をリフレッシュして、もう1回全体を見直してというのを何回も繰り返すようにしました。
デジハリの特長はその風通しの良さ
CGW:入賞者を多く輩出している理由を、小倉さんは講師としてどうお考えですか?
小倉:どうしてでしょうね? 正直よくわからないんですよ(笑)。ひとつ言えるのは、デジハリは24時間開いていて、学生のみんながいつでも集まって楽しくやれる環境だからかもしれません。僕ら講師を含めて、“公園の砂場に集まって遊んでる”みたいな性質が、お互いの切磋琢磨に役立っている可能性はありますね。
小川:確かに、社会人クラスは本気でやりたい人が多くて、いろんな業界にいる、いろんな知識をもった人がたくさんいます。だから幅広く濃い情報交換ができたことは大きかったと思います。
小倉:デジハリの教室は、教室といっても堅苦しい場所じゃなくて、サロンみたいな考え方をもった場所ですからね。
北之防:社会人スクールならではですよね。横の繋がりでお互いに助け合うというか。「課題が終わったら飲みに行こう」みたいなノリも普通でした(笑)。
中塚:意見交換は本当に活発でしたね。お互いに感想やアドバイスを言い合って、新しく見えてくるものがとてもたくさんありました。深夜作業で自習室に長い時間一緒にいたりしますから、繋がりが深くなるんだと思います。
CG/VFX専攻での学びのゴールは映像、映画をつくること
CGW:「部屋課題」を中心にカリキュラムについての話が出ていますが、デジハリの本科CG/VFX専攻では何を学べるのでしょうか?
小倉:特に何かを教えているという感覚はないんですよね。大事なこととして、「部屋課題」は1年を3期に分けたうちの1期にやるデッサン課題で、あくまで通過点。2期で映像制作、3期で卒業制作と進んで、最終目標は映像、映画をつくることです。
CGW:なるほど。動くものをつくる力を養うのですね。
小倉:そうです。授業内容は技術が3 割、他はアナログで芸術的な部分。後者は基本になる企画立案に必要な直感を鍛えるためのもので、学生ひとりひとりが自分で考えることを大切にしています。技術的なところは、作品課題をつくるために覚えるもので、優先度は下がりますね。
北之防:小倉先生は何も教えていないと言っていますが、それはちがいます。先生の授業は「今日はデザインの話です」みたいなカッチリしたものではなくて、大きな話の中に大事な話がいくつも散りばめられているもので。聞き逃せない授業なんですよ。
小倉:そうなのかなぁ(笑)。学校としてデジハリの最大の特長は何かといえば、CG/VFX専攻ならCGとVFXだけをやれば良いということでしょうか。高校とちがって、ホームルームとか体育とかはやりませんし、特定の業界でやっていくために必要なことだけを自由にやる場所、そう言えると思います。
社会人スクールだからこそ実現できる、講師と生徒、生徒同士の共助コミュニケーションの恩恵に満たされた学校。デジハリの自由な校風と環境に支えられ、学生たちは今日も多くの仲間と共に切磋琢磨を続けている。
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TEXT__kagaya(ハリんち)
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota