【クリエイターノートPC】重さと価格は伊達じゃない! maxillaディレクター陣も納得した「Razer Blade」の魅力とは
東京を拠点とするクリエイティブエージェンシー/ ビジュアルプロダクション「maxilla」。ブランド戦略の立案からCM・MV、舞台演出やインスタレーションのシステム開発まで、ずば抜けた感性で案件を咀嚼し、多種多様なアウトプットを生み出すチームだ。
今回maxillaのディレクター5名が、デスクトップ並みのパワーと洗練されたルックスを備えたRazerのクリエイティブノートPC「Razer Blade」をレビュー。各ディレクターのクリエイティブワークにRazer Bladeがどう貢献したのか、率直な感想を聞いた。
実写、CG、生成AIなど。自らも手を動かせるクリエイティブエージェンシー「maxilla」とは?
——本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
山口悠野氏(以下、山口):山口です。入社してから約8年が経ちました。主に実写案件のディレクターをやっています。
松野貴仁(以下、松野):Helixes Inc.の役員兼クリエイティブのマネージャーをやっている松野です。僕はグラフィックから実写、3Dといろいろやっていまして、今はプランニングも含めて幅広い案件に携わっています。
田中清健(以下、田中):maxillaの新卒第1号の田中です。2012年に学校を卒業してすぐ入社しました。実写映像を中心に、最近はバーチャルプロダクションを用いた案件が増えてきたのでUnreal Engineも使い始めました。
二子石和耶(以下、二子石):入社5年目、モーショングラフィックスを中心にやっている二子石です。イラストを動かす漫画のPVやTVアニメのOP映像のディレクションとか、広い意味での2D映像を手がけることが多いです。
渡邊勝城(以下、渡邊):渡邊です。フランスでグラフィックの美術学校を卒業して日本の美大に編入してからmaxillaにインターンで入って卒業後そのまま新卒入社しました。実写を中心に、ミュージックビデオ、ファッション映像、CMなどをやりながら、アートディレクターとしてロゴやポスター、ジャケットのデザインもやってます。
多種多様な個性を備えたディレクターが縦横無尽にクリエイティブを制作
——Helixesが社名で、maxillaは事業部名、ですか?
松野:はい。maxillaは株式会社Helixes(ヘリクシーズ)の中にあるクリエイティブエージェンシーとプロダクション事業を手がける事業部です。ただ、元々はmaxillaで、現CEOの志村(龍之介氏)、COOの八木(光平氏)、そして僕の3人でスタートしたクリエイターユニットみたいなものでした。
——どんなクリエイティブを?
松野:僕ら3人はハードコアやパンクミュージックが好きという共通項があって、八木がそうした音楽にまつわるファンZINEをつくろうとしていたんです。いろんなバンドにインタビューして写真やグラフィックを盛り込んでと、3人で夢中でつくっていたときに「こういうのを仕事にしていきたいよね」という話になって。具体的に考え始めたときに、「これからの時代は、映像じゃないのか?」ということで映像やモーショングラフィックスもやり始めました。
——様々な案件を手がけていくうち、現在の体制になったわけですか?
松野:はい、ミュージックビデオや企業のプロモーション動画をつくっていました。それがだんだん広がって、規模が大きくなってきて、クリエイティブエージェンシーとして企業さんと二人三脚で長いスパンのキャンペーンをやったりするようにもなっていったんです。
——maxillaはクリエイティブエージェンシーとのことですが、何名ぐらい在籍を?
松野:全体では40名弱はいますね。maxillaの強みは、社内に様々なテイストのアウトプットができるディレクターが揃っているところ。インハウスでプロジェクトをコントロールしながら、しかも手も動かしながら、クライアントと消費者の間に感覚のズレが出ないように、橋渡しをする仕事をしています。
——maxillaのメンバーは、実写撮影やCGといった実作業も自分たちで担当しているのですか?
山口:基本的にみんな手を動かします。maxillaのクリエイターはまず全員がPremiere ProやAfter Effectsを使い慣れていて、プラスアルファでそれぞれ3DCGやモーショングラフィックスといった、何かしらのクリエイティブスキルを備えています。
松野:会社の業務定義で言うと、スキルやカルチャーについて横断的なディレクションができること。これがmaxillaのディレクターとアートディレクターに求められる素養です。
各ディレクターの個性に合わせたハード&ソフト環境
——皆さんのPC環境について教えてください。
松野:ディレクターは出社して仕事をするメンバーが多いので、オフィスの自席にハイスペックのデスクトップPCとデュアルモニタを基本的には用意しています。ただ、ライブイベントなどの案件では現地での試写や最終調整を行うことがあるので、そうしたニーズに利用できる共有マシンとしてMac Book Proも用意しています。あとは、リモートワーク主体のメンバーの場合はノートPCを普段から持ち歩いていますね。
——松野さんは、どのような作業をPCで行なっていますか?
松野:僕の場合、CG作業にCinema 4Dと、最近はStable Diffusionなどの画像生成AIを使う案件が多いですね。どちらもGPUパワーが必要になるので、オフィスのマシンにはGeForce RTX 4090を積んでいます。
二子石:自分は正直、PCなどのハードウェアは疎いので、“パソコン大臣”(※ハードウェアなどのテクニカルにも精通しているmaxillaのディレクター阿保哲郎氏)に「〇〇の作業を快適に行えるようにしたい」などと要望を伝えて、その方に適切なスペックのデスクトップを組んでもらう感じです。ツールについては、コロナ禍に入ったときに新たな武器を手にしようと独学で覚えたBlenderを。あとは、After Effectsですね。アニメやコミック作品のPVをモーショングラフィックス主体で仕上げる仕事が多いので。Blenderはコンポジット作業もできるので重宝しています。
渡邊:僕もPCのことはめちゃくちゃ疎いので、パソコン大臣に頼っています(笑)。自分は実写作品が中心で、編集作業はオフィスの自席にあるデスクトップPCで行なっています。クライアントとの社外打ち合わせのときなどには共有のMacBook Proを使いますが、それで本格的に編集作業をやることはあまりないですね。使用ツールは、Premiere Pro、After Effects、Photoshop、Illustrator、たまにInDesignと、基本的にはAdobe CCで完結しています。3Dを扱う場合も自分で作業するときは、Element3Dでやりきっちゃいますね。
山口:僕は、ノートPC1台派です。外部モニタも使いません。昔はモニタに囲まれた環境で作業するのが格好良いと思った時期もありましたが(笑)、今はオフィスも自宅も外出時も1台のノートPCで完結させるようにしています。
——どんな思いがそこにはあるのでしょうか?
山口:いつでもどんな環境でも一定のパフォーマンスを発揮できるようにすることですね。「あのマシンじゃないと、完成させられない」みたいなことにならないようにしたいので。実は少し前までRazer Blade 16を使っていました。そのときからRazerには、ハイパフォーマンスという印象があります。
田中:僕は実写畑出身ですが、先ほどお話ししたようにバーチャルプロダクションの案件をきっかけにUnreal Engineを使い始めていて、UEシーン上でCGカメラを動かしてコンテを切ったり、本番用の合成作業を行うことが増えています。普段、仕事で使っているデスクトップPCのGPUがGeFroce RTX 2080なので、パワー不足を感じ始めています。
——田中さんは、カメラもご自身で?
田中:そうですね。元々、自分でカメラを持って撮影する人間だったこともあって、今でも自分で撮ることが多いです。maxillaでは、実写撮影用のカメラはソニー製が中心ですね。FX6とか、VENICE 2とか。バーチャルプロダクション案件では、VENICE 2を使っています。
——FX3やFX6はよく聞きますが、ソニー製シネマカメラの最上位モデル(VENICE 2)も社有とは、驚きました! ところで、松野さんはStable Diffusionを使われるとのことですが、生成AIツールはどのような使い方を?
松野:法法令を遵守するのは大前提ですが、現状ではモラル的に批判を浴びるリスクがあるので広告案件やIPでの使用はしていません。挑戦的な試みが求められるアーティストさんのMV制作などで、クライアントとも話し合った上で利用しています。また他社も似た感じだと思いますが、本制作というよりも企画段階で、コンセプトアート / イメージボード / モックアップの制作などに使うことが多いです。よく使うのはStable Diffusionで、その他のサービスは用途に合わせて、あくまで素材づくりや素材加工のツールとして利用しています。
——maxillaの皆さんは、リアルタイムCGやAIなど、新しいテクノロジーを積極的に採り入れていらっしゃる印象です。
松野:Helixesの行動指針的なものとして「停滞は緩やかな死」というものがあるんですよ。自分たちが今どこにいて、クリエイターとしての興味・関心に従ってどういうスキルを身につけていくのかを常に考えながら仕事をしていこうみたいな考え方ですね。だから、自分たちディレクターが所属するクリエイティブグループでも、プロデューサーやPMたちが所属するプロデュースグループでも、そうしたマインドセットを持って活動することを心がけています。
デスクトップPCにも引けを取らない「Razer Blade」の実力
——今回は、Razer Bladeシリーズの5製品をレビューされたそうですね。
山口:maxillaのディレクターは個性豊かなので「5名それぞれに1台ずつ貸し出してもらえませんか?」と提案させていただいたところ、快諾していただけました。そこで、僕はRazerの使用経験があって普段からノートPC1台スタイルなので「Razr Blade 14」を。松野・田中・二子石の3人は「Razer Blade 16」の構成ちがいを3製品、そして渡邊には「Razer Blade 18」を1ヶ月間、それぞれ自由に使わせていただきました。
今回の評価機
撮影現場での作業や社外試写など、通常の業務でもフル活用
——皆さんが行われたレビュー内容を教えてください。
山口:僕はシンプルな動画編集作業をRazer Bladeでやっていましたが、撮影した実素材をそのまま扱っても全然動きますし、やっぱり使いやすいなと。元々ユーザーだったこともあり、最新モデルではしっかりとパフォーマンスが向上していることを実感しました。快適でしたね。
松野:僕は「FZMZ(ファゾムズ)」というバーチャルアーティストの案件の作業をRazer Bladeで行いました。FZMZのSNSに投稿するコンテンツを作ったのですが、バーチャルアーティストの3DモデルをCinema 4Dでレンダリングして、Stable Diffusionで生成した背景素材と合成して、ひとつのシーンに仕上げました。
——3DCGと生成AIを同時に。
松野:はい。出先でRazer Bladeを広げて、Cinema 4DとStable Diffusionを両方起ち上げて、行き来しながらの作業です。ノートのRTX 4090はどうなんだろうと最初は半信半疑でしたが、すごくサクサク動いて、生成AIはやっぱりGPUなんだと実感しました。
Instagram投稿用のビジュアル制作にStable Diffusionを活用
二子石:評価機をお借りしている最中に有休を取りました。いつもなら社有のMacBook Proですが、せっかくだからとRazer Bladeを持って行きました。休み中に、ちょっとした仕事の確認作業で使いました。その後は、国内出張がありました。出先で実作業を行う必要があったため、日頃、会社で使っているデスクトップを持って行ったのですが、今思うとこのときにこそ、Razer Bladeを持って行けばよかったです(苦笑)
——デスクトップを運んだのですね、大変だ……。5人の中では二子石さんが一番、使い込まれているとか?
二子石:はい、今でも愛用しています。最近手がけている漫画のPV案件で、クライアント立ち会いの下での試写がありました。その場で修正作業をやってしまいたいと思い、Razer Bladeを持って行きました。実際にAfter Effectsを起ち上げて、修正して書き出すという一連の作業を行いましたが、デスクトップと遜色ないスピードでやれたので、めちゃくちゃ助かりました。
田中:僕はリモートワークで使いました。コンペ用のグラフィックをUnreal Engine上で作るといった作業をしましたが、快適でしたよ。僕は基本的に、家で子育てしながら仕事をしてるんです。3歳過ぎの子どもと遊びながら、片付けをしながら、PCで片手間作業をすることも多くて。もう、どこにでも持って歩いて使ってましたね。
渡邊:フランスのアートスクールに留学していたこともあって、キーボードはUS配列が好みです。そこでUS配列のRazer Blade 18を使わせてもらいました。Premiere Proでカット編集と、グリーンバック撮影したフッテージのキーイング処理などに利用しました。このときのグリーンバック素材は、8K撮影の大きなデータでしたが、多重合成したものを再生してみてもサクサク動いてくれて感心しました。
洗練された外観と細やかな気配りは、クリエイターとの相性抜群
——Razer Bladeはデザインがシャープと言うか、洗練されていますよね。
松野:シンプルに黒基調で格好良いです。家に持ち帰ったとき、嫁さんにも「何この格好良いやつ?」って、言われました(笑)
渡邊:よくある“ザ・プラスチック”みたいな質感じゃなくて、触り心地が良かったです。重厚感もあって。
——指紋防止コーティング処理が施されているそうです。1枚のアルミ削り出しで繋ぎ目もないと。色も塗装ではなくて金属自体の化学変化なので、塗装剥げもないとか。
二子石:無駄なものがなくて、シンプルにまとまっている筐体ですよね。
松野:わかる。モノリスみたいな、最もプリミティブでクリエイティブなフォルム。
田中:画面も綺麗で鮮明ですよね。
二子石:自分は、Razer Bladeで『VALORANT』もプレイしてみたんですけど(笑)、普段使っているモニタよりも発色が鮮やかでした。
——色域はDCI-P3に100%対応していて、個別キャリブレーションを行なってから出荷されているそうです。
田中:内蔵スピーカーの音が良いのもポイント高かった。ヘッドホンで聴いているレベルの品質。さすがTHX Spatial Audioです。
二子石:小さなところですが、Webカメラを物理シャッターで隠せるところも好印象でした。
Razer Blade最大の強みは、デスクトップPCのパフォーマンスを外に持ち出せること
山口:今回、二子石はRazer Bladeを使ってみて、松野に「会社でこれを買ってください!」って、何度も直訴してるんですよ。
松野:しつこいくらい(笑)
二子石:外で実際に使わせてもらってかなり良かったので。会社にメインのデスクトップを置きつつ、サブマシンとしてRazer Bladeが使えたら最高だなと。
——今は外部に持ち出すPCとして、Mac Book Proを共有されているんですよね?
二子石:そうなんですが、共有なので他のディレクターが持ち出しているときもあるし、作業環境の選択肢を複数確保するという意味ではWidowsマシンもほしい。それなら、パフォーマンスも優れているRazer Bladeが良いなと。
——今回試用されて、そう思われたわけですよね?
二子石:はい。作業データをそのままSSDに入れてRazer Bladeと一緒に現場に持って行って、そこでAfter Effectsを起動したら普段のデスクトップ環境と同じパフォーマンスで動作したことに感動しました。細かいことを気にせずにいつでも同じ感覚で作業できるというのが、シンプルに快適でした。
——シーンや場所を選ばず、いつでもフルパフォーマンスを発揮できるかは、大切なポイントですよね。
二子石:最近、撮影現場とか試写とか、社外で映像編集をする必要があるときが増えています。パフォーマンスを重視する場合は、先ほども話したようにデスクトップPCを持って行っていたことを考えると、ノートPCで同じパフォーマンスを発揮できる価値は大きいです。
山口:強いて難点を挙げるとACアダプタが大きくて重いことですね。内蔵バッテリもありますが、パフォーマンス重視の場合は、アダプタで給電している状態で使わないと本来のパフォーマンスが引き出せないので……。
——ハイエンドGPUの安定したパフォーマンスを出すためには、やはりACアダプタが必要みたいですね。
田中:あとは排熱と、高負荷の作業をしているときは相応にファンの音が大きくなる。と言っても、他社製品にも言えることだし、排熱についてはスタンドなどを併用すれば基本的には問題なく使える印象です。
松野:実際に使ってみての感想ですが、Razer Bladeを評価する際は、別のノートPCと比較するよりもデスクトップ環境との比較で考えた方が良いかもしれない。乱暴な言い方をすれば、「デスクトップよりも軽くて、電源を確保さえできれば問題ない」わけだから(笑)。プロフェッショナルが求める作業環境として、Razer Bladeは良い製品だと思いますよ。
maxilla(マキシラ)
コンテンツIPに特化した事業創出会社「Helixes(ヘリクシーズ)」の事業部であり、東京を拠点とするクリエイティブエージェンシー / ビジュアルプロダクション。ブランドの戦略立案からCM・MV といった映像をはじめ、アートワークやWebの制作、舞台演出、インスタレーションにおけるシステム開発など、固定のアウトプットにこだわることなく、様々に情報をデザインしている。
https://maxilla.jp/
INTERVIEW & EDIT_NUMAKURA Arihito
TEXT_kagaya(ハリんち)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru HIROTA