真にリアルなデジタルツインでプロトタイプを減らしコスト削減を実現するEXOVERSE。製造業界を変革する次世代ソフトの全貌に迫る!
製造業においては既存のビジュアライゼーションソリューションでは精度が低く、結局リアルのプロトタイプが必要となっているというのが現状で、多くのコストや時間がかかる点がネックとされている。
産業分野の新たなビジュアライゼーションソリューションを開発するEXOVERSEは、物理的に正確なレンダリングや光学シミュレーションを用いることで、現実と一致した見た目を再現できる真の意味でのデジタルツインの作成を目指している。同社は、多様なデジタルソリューションを提供するアスクと共に、日本の自動車業界を皮切りにサービスを広げていき世界に向けて展開予定だ。
本インタビューではEXOVERSEの代表取締役社長兼最高経営責任者に、製造業におけるプロトタイプ開発の課題と同社製品のもつ強味、そして導入メリットなどを語ってもらった。
プロトタイプのデジタル化への課題は、デジタルツインの精度
ティエリ・デロワ(Thierry Desroy)
EXOVERSE
代表取締役社長兼最高経営責任者
フランス出身で幼少期より美術や武道に親しむ。慶応大学に留学経験があり、日本のCG関連企業にて海外事業に携わるなど国際的に活動している。
CGWORLD(以下、CGW):EXOVERSE設立の経緯を教えてもらえますか?
ティエリ・デロワ氏(以下、デロワ):まず製造業におけるプロトタイプ開発の問題点についてお話します。自動車業界のマーケティングを例にしますと、市場投入する前に展示会などで新製品のお披露目をすることになるわけですが、商談用のイメージの作成などの準備が必要になります。ただ、これにはデザイン部門やマーケティング部門、エンジニアリング部門などをまたいだ横断的なコミュニケーションを取る必要がありますが、なかなかスムーズに進むものではありません。
結果として、プロトタイプをつくらざるを得ないというのが良くある流れです。その場合、プロトタイプをつくる必要があるだけでなく、シューティング(製品の写真や映像の撮影)をプロトタイプがある場所まで行って実施したり、場合によっては海外まで行く必要があるなど時間もコストもかかります。
そういった背景があり製造業においては、物理的なプロトタイプを減らしていくことがコスト削減そしてROI(投資収益率)の向上につながるため、デジタル化することが求められています。カーボンフットプリント(製品の製造から廃棄までに排出される温室効果ガス)を減らしていこうという業界的な潮流もあり、その取り組みが企業イメージ向上にもつながるため、デジタル化を待ち望む声は大きいです。
ただ、デジタルツインの精度に課題がありプロトタイプとして信頼できるレベルにないという点がデジタル化を阻んできました。我々はその技術的な解決を図るべく、EXOVERSEを起ち上げました。デジタルツインという言葉は15年~20年前あたりから使われていましたが、当初はあくまでもマーケティングでの利用にとどまっていました。コンフィギュレーターを通して、自動車の塗装やアクセサリーなど、付加価値が生まれるような場面で展開していました。この時問題であったのは、見た目を美化することを優先し、デザインやエンジニアリングが軽視され信頼できるデジタルツインではなかったことです。
技術的な課題点としては、従来の多くのCGソフトはRGBを用いた表現であり、RGBによる計算ではマテリアルの見え方を正確にシミュレーションすることが難しく、照明条件によるメタメリズムも正確に予測しにくいという点があります。表現の正確性という点でいうと、スペクトルや偏光を使っていて、測光や放射測定が可能な光学シミュレーションのツールがあります。しかしレンダリングに非常に時間がかかるのがネックで、数時間、場合によっては数日~数週間かかることもありますし、レンダリングは工学解析向けに最適化されているので、デザイン用途ではマテリアル表現がシンプルで、ビジュアライゼーションにはあまり向いていません。
信頼性の高いデジタルツインの実現
CGW:レンダリングを綺麗に見せつつ、物理的に正確に見せるというのが困難なわけですね。
デロワ:そうですね。それらを解決するために、パストレーサー機能をもったソフトもいくつか登場しました。正確に表現できる点が優れていたのですが、一方でライトからセンサーへの計算をしないため、放射測定や測光に関しては正確なデータを出せないということで、エンジニアリングとデザインの橋渡しができるようなソフトではありませんでした。
その後も、デザインに特化したソフトと、エンジニアリングに特化したソフトがそれぞれ開発されていきましたが、見た目の良さと物理的な正確さを両立させる、またはその橋渡しをするようなソフトは現れず、製品の開発過程で複数のソフトを使う必要がありました。問題点としては、修正などの手戻りがあるたびにデータの整理や最適化する必要があって、ソフト同士の連携が十分にできなければエラーもでやすいプロセスになることが挙げられます。その橋渡しができるようなソフトとして、双方向スペクトルと偏光手法による物理的に正確なレンダリングが可能なソフトをつくろうということを決めました。
物理ベースの基盤をつくり、デザインとエンジニアリングとを統合
CGW:今後展開されていくサービスについてご紹介をお願いします。
デロワ:当社のソフトの独自のバリュープロポジションですが、高精度のデジタルツインであることが挙げられます。先ほども触れましたが、双方向スペクトルと偏光の手法によってそれを可能にしています。
物理的に正確かつリアルタイムな予測レンダリングを可能にする「EXOVISION」そして物理的に正確な光学解析を実現する「EXOQUANT」を提供していきます。いずれも光学解析に特化したソフトと同じグレードの性能を誇りまして、そのうえで2つのソフトは完全に連携しており、今までのデザイン系ソフトとエンジニアリング系ソフトを統合したようなソフトになっています。ですので、デザインとエンジニアリングのチームが共同作業をしながらより早く開発ができ、そのうえでデザイン意図を保つことも期待できます。
また、ビジュアライゼーションに必要な3Dのデータ、マテリアル、光、HDRIなどのライブラリ、つまりビジュアルBOMとして格納したものとして「EXOVAULT」の提供も予定しています。これによりマテリアルの作業準備などをする必要がなくなり、開発全体で同じデータを使うことでエラーの発生を抑えることができます。最後に、製造業で使われるCADデータの変換を目的とした「EXOFLOW」も開発していきます。これによりデジタルスレッドを維持しながら、ビジュアライゼーション用のCADデータの変換が可能になります。
これらのソフト群を導入することで生まれるメリットとしては、信頼できるデジタルツインが作成できることで、物理プロトタイプを減らして、開発期間が短くなりコスト削減につながるという点があります。今までに存在したツールと違う点は、見た目がリアルであるだけではなく、現実の光学現象を予測できる信頼性を備えたデジタルツインを構築できることです。設計・デザイン・エンジニアリングの各工程で同じ物理モデルを共有できるため、作業の手戻りやデータ変換に伴うエラーを大幅に減らせることも、大きな違いだと考えています。
さらに、部門を横断した開発ができるようになれば、開発スピードの向上だけでなく、デザイナーが考えているデザイン意図を正確に反映して実現できるようになることから、ブランディングイメージの向上にも寄与するということで、それにより製品の細かい差別化が可能になることも想定しています。結果として消費者のニーズをつき詰めた製品を生み出すことにつながるので、、開発のプロセスやワークフローとして選択してもらえるものになると思います。当社はソフト開発企業としてだけではなく、サービスを提供したクライアントに対してビジネスイネーブラーという立場で、より自らの仕事に効率よく集中できるような環境をつくり出す、そのお手伝いができるソフトを開発したいという思いがあります。
CGW:製品開発のワークフローを統合して全般的にサポートできる製品群になる予定なのですね。提供されるソフトやサービスのポイントが他にもあれば教えてください。
デロワ:部門を横断して使えるように開発を進めますので、デザイナーやエンジニアといった職種や立場に関係なく使いやすいUI/UXを提供するつもりです。現状ある光学解析のツールはスペシャリストでなければ使いこなせないツールだったりしますので、インターフェイスは作業者が普段使っているものに比較的近いイメージで提供したいですね。
CGW:今後の製品展開のロードマップを教えてもらえますか?
デロワ:今年2026年の秋頃から自動車メーカーと共同でプロジェクトをスタートする予定です。2027年からはパイロットカスタマーとともにソフトウェアの提供を開始します。その後、2028年から本格的な販売を開始する予定です。プラットフォーム全体については、2029年頃の提供を目指しています。また、展開する業界としてはまず自動車業界からスタートすることを考えていますが、建設や航空関係でも展開できると考えています。その他にもリアルで正確なグラフィックが求められるところ、例えば医療関係などでも展開できる可能性はあるのではないでしょうか。
CGW:製造業に限らず、物理的な正確でリアルなイメージが求められる場面では求められる場面は多そうですね。今後の展開が楽しみです。
お問い合わせ
EXOVERSEついては以下よりお問い合わせください。
株式会社アスク
www.ask-corp.jp
TEXT & EDIT_小倉理生 / Riki Ogura(種々企画)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota