Blender、AfterEffets、Davinci Resolveなど複数ツール使用にも耐えうる安定性! AMD Ryzen™ 7 5700X 搭載の「DAIV A9」をオンライン編集のプロ集団、XORが検証!
VFX、オンライン編集のプロフェッショナルチームでありながら、撮影のスーパーバイザーやCG制作まで幅広く手がけるXOR(エクソア)。OSを問わず、DCCツールの特性に応じてあらゆるマシンを使いこなす代表の堀江友則氏とオンラインゼネラリストの五十嵐 淳氏が、映像制作におけるDAIV Aシリーズの使用感を徹底検証。データに基づいた検証結果と、操作感や安定性の印象について聞いた。
CG制作から編集まで、多数のツールを横断する制作現場
オンラインエディター、VFXスーパーバイザーとして20年近くの経験を積み、現在は企画やワークフロー構築の段階からプロジェクトに関わることも多い堀江友則氏。Flameによるオンライン編集を核としながら、プロジェクトの規模やワークフローに応じて柔軟にポジションを変え、使用ツールもPremiere ProやAfter Effects、Davinci Resolveと多岐にわたり、場合によっては自らBlenderで簡単なCG制作を行うこともある。
「当社はCMやショートムービー、MV、映画等を主戦場としておりますが、媒体にこだわりをもたず、映像に関わることであれば何でもやっていきたいという気持ちがあります。CMもドラマも大型映像もすべて業務として取り扱うとなると、当然Flameだけでは対応できない案件も出てきます。ハードウェア、ソフトウェア両面で、プロジェクトごとに最適なツールを選択して仕事をすることを大切にしています」(堀江氏)
FlameはmacOS環境で動作するソフトウェアのため、XOR inc.で活用されるマシンはiMac Pro(2017、late)がメイン。この他にも、GPUが必要な作業はNVIDIA GeForce RTX™ 2080 Ti搭載のWindowsマシンで行い、その上でMacbook Pro(2019)なども併用している。堀江氏は「昨今の映像制作は、ひとつの専門的な軸がある上で、ゼネラリスト的な働き方が求められる時代」とし、そのためには様々なアプリをラウンドトリップすることも状況によって重要であるという。どんなツールも問題なく使えるようハードウェアの使い分けもしていて、例えば、CPU、GPU 両方をバランスよく使うDavinci Resolveや、GPUの処理能力が重要となるBlenderの場合は、Windowsマシンをメインで使用している。
想定を超える実測値を出し、ユーザビリティの面も好印象
今回検証に使用した「DAIV A9」はAMD Ryzen™ 7 5700X、NVIDIA GeForce RTX™ 3070というスペックで、メモリのみ128GBにアップグレードしている(OSはWindows 11 HomeからWindows 10 Homeに変更)。
使用した第一印象について、堀江氏はパワー、スピードに対して好印象でありながら余裕もあり、極めて安定感が高いと評価。「例えば自作マシンなどは、スペック上は良く見えても実際には安定感に欠けたり、使用した際に引っかかりがあったり、どこか不安定な要素がある場合も少なくありません。一方でDAIV A9は印象として排熱性も高そうで、あらゆるケースでスムーズに動作していました。この安心感が、マウスコンピューターのようなBTOメーカーにお願いするメリットのひとつとなると感じています」(堀江氏)
検証には同社がVFXを手がけたNina UtashiroのMV『ARIA』の中盤部分にある、アーティスト本人が分裂するような演出のCGデータを使用。DCCツールはBlender 3.3 LTSで、実写撮影のポージングを元にした3DCGモデルにクロスシミュレーションを適用し、モデル全面に切れ目を複数入れた上でフォースフィールドで肉体が内側から破れるような負荷の高い表現を行なっている。
比較対象となったのは、同社が2年前に約60万円で購入し、現在もメインで活躍するIntel™ Core i9-10920X、GeForce RTX™ 2080 Ti搭載マシン。各種ベンチマークについては下記の通り、Cyclesレンダリングの実測値は検証機とほぼ同等で、GPUレンダリングに関してはDAIV A9側が10%ほど高速な数値が出るなど、想定以上に良好な結果が得られている。また、CPUメインで動作するAfter Effectsでは書き出し、アップスケールエフェクト、タイムワープなどに関する検証が行われたが、こちらはアップスケールを除くすべての項目でDAIV A9が検証機を上回る実測値となっていた。
これらについて、堀江氏は「ベンチマークはあくまで指標でしかなく、実際に作業をした限りではクリティカルな差が出ていない、むしろDAIV A9側が有効なシーンも存在するというのが今回の検証における結論となりました。数年前のものとは言え高スペックマシンと互角以上の部分があるとしたら、価格面で考えても非常に優秀なマシンだと考えています」と結論付けている。
また、短期間かつ厳密なスケジュールで制作を進めるMV制作においては、レンダリング時間やファイルコピー時間、あるいはソフトウェアの起動時間に至るまで、クリエイター本人が想定した時間をオーバーする、つまり「思ったよりも進んでいない」という状況がなく、スムーズに処理が進行することが重要になる。今回の検証に参加した五十嵐 淳氏はプライベートでもAMD Ryzen™ 7 3600搭載機を使用しているが、AMD Ryzen™ 7 5700Xについて「レンダリングやファイルコピーが開始するまでの所有マシンにおいてたまにある一瞬のカクツキが、当マシンおいては感じる事が無く、極めてストレスが少なかった」と評価している。
1人で何役もこなすゼネラリストはもちろん、これから始める人にもオススメしたい安定性
堀江氏は検証の総括として「DAIV A9は4K編集においても充分なスペックで、3DCG制作も問題なくできます。プロユースにおいても、複雑で手が込んだ重い作業で無ければ遜色なくこなせるマシンです。編集やコンポジット、3DCG、カラーグレーディングなど、どんな作業が主になるかによってメモリ容量などのスペックは適宜検討して良いと思いますが、少なくとも基本スペックにおいてもどの方向でも戦えるマシンだと思います」と語っている。堀江氏や五十嵐氏のようなマルチプレイヤーだけでなく、これから映像制作を始めようと考える方が「これさえあれば何でもできる」という安心を得られるという意味でも、バランスの良いDAIV Aシリーズの活用は広がり続けるだろう。
TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_竹下朋宏