自主制作アニメを多数SNSで発表し、世界中にファンをもつ気鋭のクリエイター・安田現象氏。長編アニメーション映画『メイクアガール』の公開が1月31日(金)に控えている。初の劇場作品制作にあたっては、これまでより精度の高いカラーマネジメントが求められたという。その工程で活用されたのが、EIZOのモニタ「ColorEdge CG2700S」だ。プロフェッショナル向けのカラーマネジメントモニタがどのように『メイクアガール』のクオリティを支えたのか、安田監督に詳しく聞いた。
アニメーション作家 安田現象氏
安田現象スタジオ by Xenotoon
xenotoon.com
Information
長編アニメーション映画『メイクアガール』
1月31日(金)劇場公開
原作・脚本・監督:安田現象/配給:角川ANIMATION/アニメーション制作:安田現象スタジオ by Xenotoon/製作:メイクアガールプロジェクト
make-a-girl.com
©安田現象 / Xenotoon・メイクアガールプロジェクト
新進気鋭のアニメ作家が挑むオリジナル長編映画『メイクアガール』
――『メイクアガール』とはどんな内容の作品でしょうか?
安田現象監督(以下、安田):ある天才少年が、斜め上の発想で科学的に彼女を“作る”というお話です。そうしてできあがった彼女はインプット通りに行動し、恋人関係が進むのですが、その裏にもうひとつ別の本質的なストーリーが走っており、それらの考察要素を楽しめる内容になっています。約90分の劇場長編作品です。
――安田監督はこれまで主にショートアニメーション作品を制作されてきましたが、初の長編作品の制作にあたってはどのようなちがいや苦労がありましたか?
安田:自分のつくり方自体は変わっていないのですが、大きく異なったのはその物量です。制作期間も限られていたので、まずは絵コンテを完成させ、その後CG作業に入り、スケジュールに余裕が出てきたところで演出的なブラッシュアップを重ね、よりクオリティの高い映像表現を目指していきました。このあたりは、少人数のスタジオで制作しているからこそ可能な小回りだったかと思います。
――安田監督にとって、今回の劇場版における「色表現」はどのような位置づけにありますか?
安田:CGアニメーションの場合、撮影処理の工程をおざなりにすると、どうしても画面がチープになってしまうので、高い水準を必ず担保する必要がある制作工程だと考えています。それが劇場作品ならではの豊かな画面づくりにつながると思います。
制作フローを大きく変えた EIZOのカラーマネージメントモニタ
――今回の制作ではEIZOのカラーマネジメントモニタ「ColorEdge CG2700S」を使用されたと伺いました。制作のどの工程で使用されたのでしょうか?
安田:映画館で作品を上映するためには、スタジオで制作した映像データを上映専用の形式に変換する必要があります。変換をお願いしている会社にお渡しする直前の色調整において、EIZOさんのColorEdge CG2700Sを使わせていただきました。
劇場で上映する上ではDCI-P3という色域を備えたモニタで色味を確認する必要があったのですが、それまで使用していたモニタは十分な色域をもっていなかったので、ColorEdge CG2700Sにはとても助けられました。
TOPIC1:DCI-P3、BT.2020などの映像制作専用のカラーモードを搭載
デジタルシネマ規格である「DCI-P3」や、4K/8K放送の色基準となる「BT.2020」など、国際規格で定められた映像制作向けカラーモードを標準搭載。これらのカラーモードは前面のボタンから簡単に切替えが可能で、用途や制作プロジェクトに応じた色管理を手間なく行える。「専門的な知識がなくても、ボタンをポチポチと押すだけでカラーモードの切り替えができるので便利でした」(安田氏)
――従来はどのようなモニタで作業をされていましたか?
安田:22型のモニタで、高さ調節もできない、本当に最低限の作業ができる程度のものでした。遮光フードもなかったので、座る位置によっては照明がダイレクトで当たってしまう状況でした。
――ColorEdge CG2700S導入後、どのような変化がありましたか?
安田:これまでにつくってきたショートアニメは主にSNSやWebサイトで公開するもので、色の確認をする際には一度iPhoneに出力して色を確認し、再度パソコンのモニタで修正を行う、という手戻りが発生していました。ColorEdge CG2700Sを使うことで、広い色域で作品を映しながら、モニタ画面上だけで色調の修正を完結することができ、手戻りが発生せず快適でした。特にこのスタジオでは撮影処理と背景美術をほぼ同時並行で行うので、その段階で正確に映る色域で見ながらつくれるのはとても助かりました。
――そのほかに使用されてみて便利に感じられたことは?
安田:シンプルなところでいえば、27型だったことです。After Effectsでの作業やDaVinci Resolveでの編集の際に、大きなモニタであれば拡大縮小の作業ひとつとっても効率が全く変わってきます。また、階調がきちんと再現されるため、影色の潰れや明るい箇所の白飛びがハッキリとわかり、丁寧に調整することができました。これはスマホの画面では見えなかった気づきでした。
――眼の前に映っている色味が間違っていないことが担保され、クリエイターが心配なく制作に集中できるところが大きなメリットですね。安田さんから見て、このモニタはどのようなクリエイターにお薦めできそうですか?
安田:自主制作をしているクリエイターの方におすすめします。かつての自分のように、モニタに造詣が深くない方にも強くおすすめしたいです。
TOPIC2:キャリブレーションセンサー内蔵で 表示のずれを正しく再調整
ColorEdge CG2700Sには測定精度の高いキャリブレーションセンサーが筐体に内蔵されている。EIZO独自のカラーマネジメントソフトウェア「ColorNavigator 7」と組み合わせれば、定期的なキャリブレーションをモニタが自動で実施し、常に正しい色表示で制作を進行できる。「自動で調整してくれるので、手間がかからず、制作に集中できました」(安田監督)
安田:とくに1人で制作する方は、なかなか色の管理にまで意識が向きづらいのですが、撮影やルックを正しく把握することは作品のクオリティに直結します。ColorEdge CG2700Sは作業をしながら広い色域で正しい色遣いを確認することができ、最終工程まで寄り添ってくれるモニタだと思います。
ColorEdge CG2700S
- 販売価格
242,000円(税込)(※EIZOダイレクト価格)
- 種類
IPS (アンチグレア)
- バックライト
広色域LED
- サイズ
27.0型 (68.5cm)
- 推奨解像度
2,560×1,440 (アスペクト比16:9)
- 表示領域 (横×縦)
596.7 x 335.7 mm
- 表示色
約10.7億色、10-bit対応 (約278兆色中/16-bit LUT)
- 画素ピッチ(横×縦)
0.233×0.233 mm
- 輝度 (標準値)
400 cd/m2
- コントラスト比 (標準値)
1,600:1
- 応答速度(標準値)
19 ms(中間階調域)
- 色域(標準値)
Adobe RGBカバー率99%、DCI-P3カバー率98%
お問い合わせ
EIZO株式会社
www.eizo.co.jp
TEXT_日詰明嘉/Akiyoshi Hizume
EDIT_海老原朱里/Akari Ebihara(CGWORLD)、Mana Okubo(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota