「IT&クリエイティブ×教育」をベースとするコミュニティの集合体「学びラボ」を運営する“うめちゃん”こと梅原政司氏。近年は小学生~大学生を対象としたBlenderの授業なども開催し、CG制作を通じた“クリエイティブへのきっかけづくり”にも取り組んでいる。
今回は、梅原氏が学びラボを設立したきっかけや、CGに対する熱い想いにフォーカス。さらに、Blenderの授業などで利用しているマウスコンピューターのクリエイター向けノートPC「DAIV R4」の選定理由や、その魅力なども教えてもらった。
Profile
30歳でCGと出会う「本当に自分が情熱的になれるものを早く見つけてほしい」
CGWORLD(以下、CGW):最初に、CGを始めたきっかけを教えてください。
梅原政司氏(以下、梅原):CGに初めて触れたのは、サラリーマンになってから数年後の30歳のころ。先に設計業務でCADに触れ、その後さらにCGに出会ったのですが、初めてCGに触れたときの感覚は本当に衝撃的でした。可愛いキャラクターもアニメーションも自由に作れるわけですから「これは面白すぎる!」と感動し、そこからCGに夢中になりました。
ただ、じつを言うと“嬉しい”や“楽しい”という感情以外に、“悔しい”という気持ちもふつふつと湧いてきたんです。なぜなら、CGに出会ったものの「年齢的に遅すぎる。CGの専門職で働くにはさすがに厳しい」という現実が頭によぎったからでした。しかし、あまりに悔しくて「どうにかして仕事にしたい!」という気持ちが強かったので、そのまま働きながら副業的にCGを教える講師の仕事をスタートさせました。
CGW:なぜ、CGの講師だったのでしょうか。
梅原:もともと、院生時代を含めた大学6年間に、進学塾のアルバイト講師をずっとやっていたからです。自分としてはかなり情熱をかけて講師の仕事に取り組んでいたので、昔情熱をかけていた「教育」といま夢中になっている「CG」を掛け合わせたら「きっと頑張れるはず!」と思い、CGの講師を選びました。
とはいえ、当時はもちろんCGの超初心者だったので、まずはサラリーマンとしてフルタイムで働きながら子育てにも参加しつつ、夜8時から深夜1時ぐらいまでは1年間毎日CGの勉強をしました。そして2021年3月、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」で“うめちゃん”として講師活動をスタート。これまでに3万人が私の有料講座を受講してくれていますが、これは本当に幸運だったと思っています。
CGW:Udemyで人気講師となったなかで、なぜ学びラボを立ち上げたのでしょうか。
梅原:先ほど「年齢的に遅すぎる」という話をしましたが、だからこそ「多くの人にもっと早くCGに出会ってほしい」という想いがありました。さらに、30歳でCGと出会った自分はかなり大変な思いをしたので、できれば「同じような苦労はしてもらいたくない」という気持ちもありました。そこで、さまざまなモノづくりの体験をいろいろな人に届け、幅広い選択肢から「本当に自分が情熱的になれるものを早く見つけてほしい」と考え、学びラボで立ち上げました。
「日本人全員をクリエイターにしたい」立ち上げた3つの事業
CGW:次に、学びラボについて教えてください。
梅原:学びラボは「創造の力でみんなを元気にする」をスローガンを掲げて活動している組織です。2021年の3月に前身となる教育コミュニティの学びラボを立ち上げ、2023年8月に一般社団法人である現在の学びラボを新たに設立しました。
私としては「日本人全員をクリエイターにしたい」という想いでさまざまな取り組みにチャレンジしていますが、そこには「すべての人がモノづくりによって楽しくなれるし、生産的にもなれる」という考えがあります。さらに、そんな世の中になれば「日本も絶対に元気になるし、人生ももっと楽しくなるはず」という願いもあります。
CGW:学びラボでは、どのような活動を行っているのでしょうか。
梅原:メインの事業が3つあり、それぞれにコミュニティがあります。
1つ目は、クリエイティブなことが好きな大人のためのコミュニティ「そらいろクリエイターズ」です。「クリエイティブ×教育」をキーワードに、全国にいる約120人のサポートメンバーが地域や学校へ学びを届けています。また昨年からは、マウスコンピューターのノートPCを20台持ち出し、全国の学校などでCGやゲーム制作の出張授業を行うワークショップをスタート。開催地に近いサポートメンバーが集結して日中は子どもたち向けのワークショップを開催し、夜に打ち上げも兼ねた交流会を行っています。
2つ目は、小中学生のためのオンラインの学び場「そらいろぱれっと」です。プログラミングやゲーム制作、デザイン、イラスト、CAD、3DCG、AIなど、世の中で子ども向けに提供されている習い事はひと通りやっている感じです。さらに、そういった技術やツールだけにとどまらず、我々が「生き抜く力」と呼んでいる授業があるのもユニークなポイントです。例えば、「お金」や「職業」に関する知識の授業があるほか、面白いものでは「検索力(=Webで欲しい情報を素早く的確に探し出す力)」という授業もあるんです。
そして3つ目は、人気ゲーム「Fortnite」のコミュニティ「しまぷろ」です。近年、Fortniteは単なるゲームではなくメタバース化というかSNS化のような感じになっており、誰でもFortnite内で“新しいゲームを作れる”という環境が生まれています。この状況に対して、しまぷろではゲームを遊ぶ側ではなく“作る側”の人たちが交流するためのコミュニティとなっており、開始から約1年ですでに530人の参加者がいるほど盛況です。
CGには子どもを楽しませるポテンシャルが絶対にある!
CGW:オンラインが多いなかでリアルな出張授業はとても特徴的だと感じますが、始めた理由は何だったのでしょうか。
梅原:先ほど「3万人が私の講座を受講してくれた」と話しましたが、個人的に「その3万人には直接会ったわけではない」という点にちょっと物足りなさを感じていたんです。本音を言えば「その3万人に会いたかったし、会った方がきっと楽しかったはず」と思っていたので、それなら「自分の手足を使った活動をやるべきだ」と考えたのが大きな理由の1つです。
また、CGには「子どもが楽しんだり驚いたりしてもらえるだけのポテンシャルが絶対にある!」という自信もありました。実際、図書館で行ったイベントではPCのマウスを初めて触ったという小学3年生が参加してくれたのですが、やり方を1度教えたらすぐに夢中になってくれました。しかも、最終的にゲームを完成させて帰っていったのは、とても印象的でした。さらに、出張授業を体験してくれた子どもたちは「また来て!」と言ってくれていますよ。
CGW:ちなみに、実際に訪れる学校などはどのように選んでいるのでしょうか。
梅原:学校側から依頼があるわけではないので、こちらから直接学校へ電話して「やらせてください!」とお願いしています。公共機関への依頼などはちょっと敷居が高いイメージもありますが、私の感覚では「学校側は意外とウェルカム」という印象ですね。おかげで、昨年だけでも小学校、中学校、高校、大学、フリースクール、街の図書館など、合計9か所で実現できました。
CGW:出張授業で気を付けている点などはありますか?
梅原:例えば、Blenderでレンダリングしたり、無料のアバター作成ソフト「VRoid Studio」でアバターの洋服を着せ替えてそのまま動かすテストをしたりすると、ほぼ確実にDAIV R4のファンが勢いよく回転する(=高い負荷がかかる)のですが、私はこういったタイミングでCPUやGPUの説明もするようにしています。
というのも、単にCGやゲーム制作に関する説明をするだけでなく、それ以外のさまざまな要素について説明をすることも「非常に大事なことだ」と考えているからです。例えば、CGを作るためには物理や科学、色彩などの技術も必要になります。普段の学校の勉強も何かと役立つので、そういった話もできる限りするように心がけています。
そもそも、起きている現象の意味も分からずに設定パラメータの数字を変えているだけでは、何か問題が起こったときに自分だけでは対処できません。だからこそ、CGを学びたいのであれば物理や科学、数学、美術の色彩などはできる限り理解しておいた方がいいですし、むしろCGをきっかけにそういうことにも興味を持ってくれたら、私としても嬉しい限りです。
重視したのは“コスパの高さ” 、サイズ感やカラーもお気に入り
CGW:出張授業用のノートPCとしてマウスコンピューターの「DAIV R4」を20台導入したそうですが、選定で重視した点は?
梅原:もっとも重視したのは「コストパフォーマンス」でした。私の想定では、出張授業に参加した子どもの親御さんに「子どもにCGをやらせたいのですが、どんなPCを買えばいいですか?」と質問されたときに、自分が持参したノートPCを指して「これです!」と言える製品が理想でした。そのため、まずは価格が「20万円を超えてしまうと厳しい」と考えました。
ただし、CGの授業ではBlenderを使用するため、スペック面を踏まえるとCPUに内蔵されているGPU(いわゆるオンボードGPU)だけでは性能不足となるだけに、専用のGPUは必須でした。そこで、20万円に収まる価格とBlenderを利用できる性能を兼ね備えたコストパフォーマンスを重視して製品を探したところ、DAIV R4に行きついたというわけです。
CGW:コスパ以外でDAIV R4の気に入った点は?
梅原:14型の画面サイズや約1.42kgの重さ、さらにはACアダプタの大きさなども含めた“全体のサイズ感”は、個人的に一番の魅力だと思っています。17インチ前後のゲーミングノートPCと違って手軽に持ち運べますから、外出先などでちょっとした作業が行えるスペックとの“バランス感”も絶妙だと感じます。
それから、白い本体カラーも非常に気に入っているポイントの1つです。最近はコロナ禍の影響もあってか、CGやゲーム制作などに挑戦する女性が増えていますから、そういった層にはビジネス寄りのブラックやシルバーよりも好まれやすいのではないでしょうか。学びラボの体験型イベントでも、小学生であれば女の子が半数を超えるケースもありますし、中高生でも昔のように“男の子ばかり”という状況ではありません。ですから、子ども向けという観点でも白いカラーリングはポイントが高いと思っています。
導入ハードウェアについて
梅原氏がCGの出張授業用に20台導入したDAIV R4は、14型液晶ディスプレイを搭載するクリエイター向けのノートPC。インテルのモバイル向け高性能CPU「インテル Core i7-12650H プロセッサー」やモバイル向けGPU「GeForce RTX 3050 Laptop GPU」を搭載しつつも、コストパフォーマンスに優れたモデルとなる。そのほかの基本スペックはメモリが16GB、ストレージがNVMe接続500GB SSD。梅原氏が使用するDAIV R4のみ、ストレージを1TB SSDに強化している。
※今回ご紹介したDAIV R4は、現在販売終了となっております。後継製品はこちら
- 価格
109,800円(税込)
- CPU
インテル Core i7-12650H プロセッサー(10コア【Pコア 6、Eコア 4】 / 16スレッド / Pコア 2.30GHz、Eコア 1.70GHz / TB時最大4.70GHz【Pコア 4.70GHz、Eコア 3.50GHz】 / 24MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3050 Laptop GPU
- メモリ
16GB(8GB×2)
- ストレージ
NVMe接続500GB SSD
- OS
Windows 11 Home 64bit
- ディスプレイ
14型 液晶パネル
- 無線
Wi-Fi 6E(最大2.4Gbps)対応 IEEE 802.11 ax/ac/a/b/g/n準拠+Bluetooth 5内蔵
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
※土日祝は、法人のお客さまも個人窓口でのご対応となります。ご了承ください。
www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)
PHOTO_大沼洋平
INTERVIEW_池田大樹(CGWORLD)
EDIT_中川裕介(CGWORLD)