【検証】GeForce RTX 4090搭載『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』を、UE5、Unity HDRP、Stable Diffusionで長時間ぶんまわす!
こんにちは、KATASHIRO+のますくです!普段は3DCGモデリングにまつわる講師業や執筆を行っています。過去にCG関連の機材開発や、コンピューターグラフィックス用途の業務用機材を数多く自作、開発してきた経験もあり、最近では最新ソフトウェア・ハードウェアレビューにも挑戦しています!
今回はエルザジャパンより、AMD Ryzen 9 7950X、NVIDIA GeForce RTX 4090を搭載した最新のワークステーション「ELSA VELUGA G5-AD 6100E GeForce RTXモデル」の提供を受けましたので、各種ベンチマークテスト他、Unreal Engine 5(以下、UE5)、Unity HDRP、さらにはStable Diffusionを活用しながら、長時間高負荷テストを行っていきます。
ますく(坂本一樹)
1991年生まれ、多摩美術大学卒。
原型・ゲームモデリングの専門会社で修行を積み、大手ゲーム会社 R&D部門にてAIを活用したアバター生成技術の特許を取得したのち独立。
アプリケーションやゲームなどリアルタイム分野のモデリングに特化したCGスタジオ「KATASHIRO+」を設立。
CGWORLDの執筆に多く携わり、 ブログやFanboxなどのメディアに力を入れており、3Dモデリングやゲームエンジン、CG原型、3Dスキャンなどの指導を教育機関・個人へ行っている。
制作依頼、企業への技術顧問、教育機関・個人指導について、お気軽にお問い合わせください(Twitter X:mask_3dcg)
『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』の構成パーツと基本性能をチェック
今回お借りした『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』はコンパクトな筐体に、AMD Ryzen 9 7950X(以下、Ryzen 9 7950X)、NVIDIA GeForce RTX 4090、DDR5 RAM、M.2 SSDなど、最新の高性能パーツを詰め込むことのできるハイエンド機です。
※GPUは購入時にNVIDIA GeForce RTXシリーズおよびRTX Aシリーズの豊富なラインナップから選択可能
静音性能
まず、この製品を使ってみて驚いたのが、静音性能の高さです。コンパクトな筐体にNVIDIA GeForce RTX 4090、Ryzen 9 7950Xという現行最高峰のパーツを搭載しながらも、高負荷な処理をしても全くの無音だったことに驚きました。無音過ぎてエアコンや窓の外の車の音がうるさく聞こえる程です。
今まで私は、デスクトップPCはある程度うるさいものだと思って諦めていたのですが、ノイズがないことでこれほどQOLが上がるのかと驚愕しました。一度ELSA VELUGAの静音性を知ってしまうと、元の環境には戻れなくなりそうです。
冷却性能
更に、長時間高負荷な処理をしていても高温にならない、高い冷却性能を見せてくれました。パソコンの不調の原因の大半は熱暴走なので、静かで熱くなりにくいというのはカタログスペックには見えない部分で不調のリスクを減らし、耐用年数を大幅に伸ばすとても大きな価値だと感じました。
小型高性能なのに優れたエアフロー
続いて、筐体の内部構造を見ていきましょう。
Mini-ITXサイズのケースからサイドパネルを外して、フロントパネルを外すと、サイズの大きいフロントのファンが目に入ります。
こちらはFractal Designの筐体に付属する巨大な180mmファンで、ベアリング付きの高耐久度を誇る静音ファンを採用しています。ベアリング付きの巨大ファンは大変珍しく、最もグレードの高い部類に入るものではないでしょうか。とても美しい構成です。
続いて、エアフローを見ていきましょう。前面パネルが全てメッシュになっており、巨大なファンで吸気を行うことで、CPUの熱を上部の電源ユニットと背面に逃しています。一方、GPUの熱については、筐体下部から吸引し上部に逃がす専用のエアフローが確保されており、効率的な空冷が実現されています。
ミニタワーPCにハイエンドパーツを詰め込んでここまで美しいエアフローを実現するのはかなり難しいことなので、迫力のある巨大なファンと合わせてとても感動しました。筐体内部のパーツも黒で統一されていて、とても高級感のある仕上がりですね。
構成パーツから見る2023年のハイエンドPC事情
今回貸出をいただいた『VELUGA G5-AD 6100E』のパーツも詳しくみていきましょう(※)。
※2023年3月時点における個体のパーツ構成です。状況に応じて構成内容は変更となる可能性があります
CPU:AMD Ryzen 9 7950X
AMD Ryzen 9 7950Xは、16コア・32スレッドを持つ、ハイエンド向けCPUです。後ほどベンチマークテストの項目でも述べますが、安定性とコストパフォーマンスに優れており、プロダクションと個人クリエイター双方にとって、業務用PCとして有力な選択肢のひとつだと思います。
RAM:Crucial 最新のDDR5メモリ
RAM(メモリ)には高品質で信頼性が高いCrucialの『Crucial 64GB Kit (2 x 32GB) DDR5-4800 UDIMM』が使用されています。
最新のDDR5の規格のメモリを採用しているため、既存のDDR4規格のメモリと比べて転送速度の向上や低電圧化を実現しており、発熱も従来モデルよりも抑えることができ、高負荷時にもより安定的な運用が可能になりました。
Crucialのメモリについては、以前レビューさせていただいたことがあるため、メモリ購入を検討されている方はぜひ前記事も読んでみてください。
超・静音、冷却性能を実現する秘密
カバーを外して驚いたのは、Mini-ITXのコンパクトなマザーボードに、これまで見たことがない巨大なグラフィックボードGeForce RTX 4090が搭載されていることです。
フロントパネルとリアパネル全体がエアフローのためのメッシュ構造になっていて、フロントの140mmとリア120mmの静音ファンがPC全体を効率よく冷やしていることがわかります。
コンパクトな筐体に最強スペックを詰め込むのは究極のロマン
コンパクトな筐体に巨大なCPUクーラーとグラフィックスボードを搭載していて、無駄なスペースが一切なく、筐体全体が冷却装置を兼ねている点にロマンを感じるのは筆者だけでしょうか。
実は、恥ずかしながら筆者も小さな筐体に現行最高峰のスペックのパーツを詰め込む挑戦をしたことがあるのですが、熱処理が上手くいかずオーバーヒートを繰り返してしまい、半年くらいでミドルタワーに載せ替えて簡易水冷に逃げてしまった苦い経験があります。
過去に憧れて、上手くいかなかった経験があったからこそ、ELSA VELUGAの無駄のない構成、パーツ構成、美しい組み上がりとエアフローにとても感動しました。
ベンチマークテスト
ここからは定番のベンチマークテストと総評を行っていきます。
3DMARK Time SPY
まずは世界的に有名なUL Solutionの3DMARKのTIMESPYベンチマークを行いました。結果は、27437という素晴らしいスコアで、99%の現行ユーザーよりも上位となりました。
これより上位のスコアを獲得するためには、桁違いに高いサーバー用のCPUや、オーバークロックを行う必要があるため、個人のCGクリエイターにとって手が届く選択肢の中では、かなり素晴らしいスコアと考えても差し支えないでしょう。
VRMARK Orange Room
次に、3DMARKのVRMARKを試しました。VRは要求スペックがそもそも高いため、上位2%のところまでランキングが下がりましたが、ほぼ誤差の範囲と言って差し支えないと思います。
これ以上のスコアに行くためには、5倍近く高価なCPUに載せ替えるか(もう一台ハイエンドPCが変えてしまうコストがかかります)、安定性を犠牲にクロックアップする方向でチューニングする必要があるため、現実的に手が届く範囲で安定運用できるワークステーションとしては最高のスコアが出ていると思います。
EZBench
EzBenchはUE5で作成されたレイトレーシングを多用したシーンを用いたベンチマークテストです。4K画質で180fps前後が安定して出ています。スコアは28282でした。
私が現在使用している第11世代のインテル Core i9とNVIDIA GeForce RTX 3080環境では30〜40fpsしか出なかったので、最新環境がいかにパワーアップしているかがよくわかります。
UE5でがっつりコンテンツを作るなら、NVIDIA GeForce RTX 4090環境を早急に整えたいところです。
CINEBENCH R23
CINEBENCHはMaxonが提供するCinema 4Dをベースとした、レンダリングを性能を計測するためのベンチマークツールです。
先述した通り今回使用した『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』はRyzen 9 7950Xが搭載されているので、CPU自体のスコアは2023年3月現在で7位。上位にはインテルの第13世代Core i9をさらにオーバークロック設定にしたものと、同じくAMDのThreadripperのシリーズがランクインしています。
ThreadripperはモデルによってはCPUだけで50万円程度の金額がかかるので、個人のクリエイターにとって現実的に手が届くモデルとしては、最高峰のスコアを叩き出していることがわかります。
また、マルチコア性能だけではなく、シングルコア性能が4.5GHzと高いため、マルチコアに対応していないアプリケーションでも快適に動作することがわかりました。
Cyberpunk 2077 Bench
要求スペックが高いことで有名なCD PROJEKT RED社のAAAゲーム[Cyberpunk 2077]のベンチマークテストも実行してみました。
「レイトレーシング:ウルトラ」環境で、4K描画時で平均120FPSを叩き出しました。最低でも91フレームは出ています。これには非常に驚きました。
実用レビュー
【検証】Stable Diffusion
AI画像処理で話題性の高いStable Diffusionを使用して、GPU高負荷時の試用検証を行ってみました。
AIによる画像生成でのテストでは学習モデルやプロンプト、処理内容や生成物にも依存しますが、4枚同時生成も待ち時間20~30秒程度でImage-to-ImageやText-to-Imageを行うことができた。Control-NetやRoLAモデルなどの追加学習処理を加えると一気に重くなってくるため、AI画像処理をする方は、NVIDIA GeForce RTX 4090環境を整えることを強くおすすめしたいです。
エルザ ジャパンは機械学習向けのGPUやワークステーションを長年提供してきたため、今回検証した『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』も、長時間のハードワークに向いています。
静音性能の高さでストレスなく長時間作業できただけではなく、冷却性能の高さから、GPU使用率100%を丸一日続けても、GPU温度は50度前後のままでした。
快適性、安定性という意味で、カタログスペック以上の価値のあるワークステーションだと強く感じました。
【検証】Unreal Engine 5
UnrealEngine5では定番のマトリックスのサンプルシーン[CitySample]を動かしてみると、プレイモードで40〜120fps、平均で50fpsくらい出ていました。
レイトレーシングやインテリアマップなどの重い処理が多いため、NVIDIA GeForce RTX 4090の性能がよく活かされる環境です。
また、実際の編集モードではMAPのロード範囲を絞ることで120フレーム安定でノーストレスでシーンの編集を行うことができました。
【検証】Unity HDRP
Unity HDRPのサンプルシーン『Enemies』を開いてみました。
ここまでのクオリティとなるとほぼ実写ですね。GIやレイトレーシング、SSSが綺麗すぎて不気味の谷を完全に超えているように思えます。最も次世代マシンのパワーを実感できるシーンではないでしょうか。
Unityの3Dビューは何かを動かしているときに必要な分しか描画を行いませんが、このクオリティのCGを100fps以上で安定して作業できるパワーがあります。
まとめ
『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』はこんな人におすすめ
・安定した環境で高パフォーマンスを発揮したい
・できる限り安定した環境で制作したい
・保証がしっかりしていることを重視したい
・静かな環境でヘビーなタスクをこなしたい
・Unity HDRIやUE5環境でがっつり開発したい
・リアルタイムレンダリング/リアルタイムレイトレーシングを多用したい
・AI(機械学習)/4K、8K動画を多用したい
・高画質配信をしたい
・バイノーラル収録など、静かな環境で収録したい
特に、CG制作の中でも、UE5でAAAタイトルを作りたい方など、リアルタイムで美しい描画を必要とする方におすすめしたいです。またCG業種以外のクリエイティブな業種の方でも、ハイエンド環境を安定的に使いたい人におすすめしたいです。
私が個人でパソコンを調達するときに一番気にするのはコストパフォーマンスですが、安いパーツを選んでしまうことで後々トラブルになることも多く、プロの現場で信頼が培われてきたエルザ ジャパンが提供する本機は有力な選択肢になりうるなと感じました。
また、静音性に優れるので、静寂の中で集中したい方や音楽を聞きながら作業したい方、音楽関係の方や配信時にノイズが乗らないため声を綺麗に収録、配信したい方にも強くおすすめしたいです。
製品保証
『ELSA VELUGA G5-AD 6100E』には純正で3年保証がついてくるのも安心な点です。他社のBTOパソコンでは保証は有償の場合が多いため、3年間保証が標準でついてくるのは非常にありがたく、エルザ ジャパンの自社製品に対する品質クリアランスの高さがよくわかります。
エルザ ジャパンはプロユースに向けてこだわり抜いたパーツでワークステーションを構成しているため、本製品にも非常に素晴らしいパーツが使用されています。
エルザ ジャパンについて
最後にエルザ ジャパンについて紹介させてください。
エルザ ジャパンはプロフェッショナル向けのハイエンドGPUを販売するPCメーカーです。
近年急速に進化しているAIや機械学習分野のサーバー機器や高性能ワークステーション、メタバース分野のHMD、動画配信や業務用のハイエンドPCの制作販売に力を入れています。
業務用として、大企業や学術機関などにプロの現場向けのマシンを提供しているイメージの強いメーカーですが、今回の「ELSA VELUGA G5-AD 6100E」のように個人でも手が届くラインナップも増えています。
今回レビューさせていただいた ELSA VELUGAは、本当にパワフルで静かで、本気で購入を考えるほどに欲しくなってしまいました。最近NVIDIA GeForce RTX 3080環境を作ったばかりですが、NVIDIA GeForce RTX 4090環境を一度体験してしまうともう30xx世代には戻れなくなってしまいました。
次のハイエンドGPUも出てきそうですし、早く40xx環境に移行するためにも貯金したいと思います。それでは、またどこかでお会いしましょう。
TEXT_ますく(KATASHIRO+)