モーショングラフィックス制作に特化したマウンテンスタジオ、映像を魅力的に見せるための"平面での画づくり"へのこだわりに迫る!
得意のモーショングラフィックス制作を武器に数々のPVを手がけてきたマウンテンスタジオ。モーショングラフィックスへのこだわりや得意とする表現スタイルをうかがうとともに、長年採用しているマウスコンピューター「DAIV」シリーズの導入経緯や魅力についても語ってもらった。
2Dデザインを専門的に学んだクリエイターが生み出す“平面での画づくり”に長けた映像が強み
CGWORLD(以下、CGW):まず、会社としてCGを手掛けるようになったきっかけを教えてください。
鈴木俊彦氏(以下、鈴木):弊社は1995年にデザイン事務所として発足し、最初は主に雑誌のデザインなどを手掛けていました。そんななか、1997年にStrata 3Dに関連した依頼を受ける機会があったのですが、四苦八苦しながらもいろいろと試しているうちにCGの魅力に目覚め、その後は思い切ってデザイン事務所からCG制作会社へ完全にシフトしました。
CGW:では、モーショングラフィックスをメインとするようになった経緯は?
鈴木:15年ほど前から、会社の方向性として「CGをメインにしていく」ことになり、当初はキャラクターをモデリングしたりリグを組んだりしていました。ただ、それらの作業をするなかで「自社のスタイルに合わない」、「これでは他社に勝てない」と思い始めていました。
そもそもの成り立ちがデザイン事務所だったわけですから、ある意味当たり前かもしれません。そのような流れを経て「動くデザインであるモーショングラフィックスに集中すべきだ」という発想に思い至ったわけです。
マウンテンスタジオ
1995年にデザイン事務所として発足し、1997年に法人化。現在はモーショングラフィックスを主軸としつつ、3DCGアニメーションや映像制作、Webデザインなども手掛ける。現在のスタッフ数は17名。
ホームページ:https://mountain-st.com/
Twtter:@studio_mountain
CGW:これまでの試行錯誤がうかがえますが、現在はどのようなジャンルの案件を手掛けることが多いのでしょうか。
鈴木:メインとなるのはやはりPVです。ゲームであればオープニング映像やエンディング映像などで、アニメも同様です。また、例えばアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』では、本編中に登場するモニターグラフィックスのデザインを手掛けたこともありました。
一方で、企業系PVの場合は多岐にわたりますが、例えば商品PRやイベント用のオープニング映像などが挙げられるでしょうか。映像でのデザイン要素としてモーショングラフィックスを使うものであれば基本的には何でもお引き受けしており、企業紹介や展示会での映像など幅広く網羅しています。
CGW:モーショングラフィックスに注力するなかで、他社にない“自社の強み”は何だとお考えですか?
鈴木:スタッフは基本的に全員同じツールを使えるので、2D系のコラージュなどはスタッフ全員が得意としています。スキル面でポイントとなるのは、さまざまなデザインを動画にしっかりと落とし込んで形にできるところでしょうか。弊社の場合は、CGを専門に学んできたスタッフは意外と少なく、アナログで絵を描くようなデザイン系の知識や技術を専門的に学び、習得してきたスタッフが多い傾向にあるので、そのあたりも影響していると思います。
逆にいうと、弊社の場合はツールが使えても、“画づくり”ができないと仕事になりません。だからこそ、完成形をしっかりとイメージし、それを形づくれる人材が欲しいという採用方針が一貫してあります。会社説明会でも「ツールを使えれば最初の1~2年は役に立つが、画づくりができないと3年後は使いものにならない」と言っているくらいなので、その意味では画づくりで勝負しているところは大きいかもしれませんね。
鈴木俊彦氏
チーフ クリエイティブディレクターで入社10年目。日本工学院専門学校出身で学生時代はデザイン全般を習得し、マウンテンスタジオに入社してから映像制作を手掛けるようになった。ゲーム『ソードアート・オンライン フェイタル・バレット』のオープニング映像をはじめ、多彩な映像制作に携わっている。
モーショングラフィックス制作における”画づくり”のポイントを解説!
CGW:これまでに制作してきた作品の中から、デザインのこだわりやポイントなどを教えてください。
鈴木:モーショングラフィックスのなかでも弊社が得意としている表現を、ジャンルごとにご紹介させていただきます。
まずは「細かい演出やストーリー構成が必要な映像」として、過去に手掛けたライトノベル『ソードアート・オンライン』のゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション リコリス』のオープニング映像をご紹介いたします。こちらは、前提となる小説やゲームの世界観があるので、本編のストーリーの流れやキャラクターの関係性を意識して演出の順序や見せ方を検討し、場合によって拡張するようなデザインが求められました。
それを踏まえて必要な要素や色使いを考えていくわけですが、これの場合は絵の具のように染みていく感じや煙がじわっと広がっていく表現が映像全体を通して統一された印象を与えていると思います。さらに、キャラクターのCG素材自体もそのまま置くのではなく、色使いや演出の展開などを考慮して見せている感じです。
CGW:オープニング映像だからこそ気を付けた点などはありますか。
鈴木:例えば、タイトルを出すカット(0:10~0:18)では、あくまでもタイトルが主役になります。そのため、他の要素を出し過ぎるとタイトルの邪魔になってしまいますし、逆に情報量が少なくなりすぎると寂しくなってしまうので、そういった部分のバランスは重視しています。
鈴木:次は「3Dやシミュレーションを使ったモーショングラフィックス」の例をご紹介させていただきます。「mountain studio 2021」ですが、これは展示会などでの自社PR用に作った映像になるため、前提として技術面でのアピールという観点が当然あります。それを踏まえたうえで、1つ1つの画的な良さにこだわっており、展示会などでの来場者がひと目見て思わず足を止めてくれるようなものを目指しました。
CGW:この映像で意識したところは?
鈴木:カットそれぞれに「何を見せたいか」という目的があるのですが、これは自社技術をアピールするデモリールなので、マウンテンスタジオがもつ技術をどう見せたら印象良く映るか、ということを考えながら演出しました。なかでも、とくに意識したのは色使いや動きのタイミングで、例えば金属片が降ってくるようなカット(0:08~0:10)では速度が途中からスローになるなどの細かい演出をしています。
CGW:技術的に気を付けたポイントなどはありますか?
鈴木:一例として“煙”(0:31前後)を挙げると、ただ単に煙を見せるのでなく、空間の明るさや格好良く見える煙の色、ボリューム感などをベースに考えました。さらに、煙がアニメーションしていてロゴを視認できる瞬間とできない瞬間があるのですが、あえてロゴを隠す瞬間をつくることで動きの後にロゴにもしっかりと目が向くため、全体の流れとして印象に残るような見せ方ができています。
鈴木:最後にサイバー系モーショングラフィックスとして、CGWORLDのチュートリアルコンテンツ用に制作した「Head Phone Tracking CGworld ON line Tutorial」をご紹介いたします。
CGW:サイバー系モーショングラフィックスを得意としている理由は?
鈴木:サイバー系のデザイン作業では、PC負荷が高く処理時間もかかる流体シミュレーションなどを利用することが少ないので、見た目の試行錯誤に時間を当てやすいのが魅力です。さらに、配置するパーツのデザインや色使いなどの演出で“制作者のカラー”を出しやすい印象があり、そういった傾向が、弊社にマッチしていると感じます。
また、世界観からまるごと任せてもらえれば、弊社の持ち味であるデザイン力を活かせるうえに作りながらの試行錯誤もしやすいということから、サイバー系の表現を選択するという側面もあると思います。
CGW:今後、試してみたい技術・ツールなどはありますか?
鈴木:新しい技術やツールについては、使えるものであれば何でも積極的に取り入れていきたいと思っています。例えば、これまではAfter Effects、3ds Max、Cinema 4Dがメインツールでしたが、最近ではBlenderも徐々に使うようになっています。実際に使ってみるとBlenderはなかなか優秀なので、使い方次第で表現の幅が広がると感じています。
さらに、Unreal Engineの導入も検討しており、昨年出展したイベントではMetaHumanのシステムを利用したプロモーション映像「Utilization proposal by real avatar mountain studio」をデモリールとして披露しました。最近ではUnreal Engineを使って背景をリアルタイム合成するミュージックビデオなども出始めているので、将来的にはそういったUnreal Engineの案件も受けられるようにしていきたいと考えています。
CPUレンダリングを強化しつつ、コストパフォーマンスも重視した機材選び
CGW:制作のワークフローについて教えてください。
鈴木:依頼内容にもよりますが、基本的にはまず絵コンテから着手します。ただ、絵コンテで何を映像に出していくかを決めていくケースもあれば、出したい要素が依頼時にすでに決まっている場合もあり、その際は直接Vコンテの状態にしてしまうケースもあります。
次に、絵コンテを進めながらクライアント側との打ち合わせをして、テイストや要素を検討していき、場合によっては絵コンテを提出しながら動画で使う素材も作成。それらが出来上がったら、After Effectsに素材を入れてコンポジットやエフェクトの追加などをしていきます。
あとは、実際に映像が出来上がってきたらクライアント側にチェックしてもらい、修正の依頼があれば対応。最後に、必要に応じて完成用のレンダリングをかける感じです。
CGW:一連の作業の中で、負荷のかかる工程は何でしょうか?
鈴木:シミュレーション系の演算やレンダリングですね。とくに本番のレンダリングはどうしても時間がかかってしまうので、レンダリング専用のPCとしてCPUのコア数が32コアと24コアのハイスペックマシンを2台用意しています。
CGW:シミュレーションで利用することを考えると、機材選びで重視するのはやはりCPUでしょうか?
鈴木:そうですね。最近のCG業界ではGPUを重視する風潮があるように感じますが、弊社の場合はポリゴン数の多い高品質な素材などを使うことはあまりないので、レンダリングの観点も含めてCPU重視です。
CGW:現在導入しているPCのスペックの目安は?
鈴木:CPUはCore i7で12コア、メモリは32GB、ストレージはSSD、GPUはGeForce RTX 3050か3060といった感じで、価格は30万円までに収めるイメージです。なお、各スタッフの作業環境については「基本的に同じ環境を統一したい」という考えがあるので、導入台数の観点からコストパフォーマンスも重視しています。
CGW:導入PCの多くがマウスコンピューターのDAIVシリーズとのことですが、DAIVを選んだ理由は何でしょうか。
鈴木:コストパフォーマンスに優れている点は、DAIVを選んでいる大きな理由の1つです。また、筐体デザインが格好いいところも気に入っています。ノートPCも見た目が良く、しかも軽いので、現場作業用として使わせてもらっています。
さらに使い勝手の面でも、安定性に優れていてなかなか故障しないので、安心して作業できる点は嬉しいポイントです。仮に故障してもスムーズに問題を解決してくれる充実のサポート体制も優秀なので、その点も含めて非常に助かっていますね。
マウンテンスタジオが導入する「DAIV」のポイント
マウンテンスタジオでは、スタッフ用の作業PCとしてマウスコンピューターのDAIVシリーズを採用。デスクトップPCのDAIV Z5とノートPCのDAIV 6P-RT(現在は後継機として「DAIV Z6-I7G5TSR-A」を販売中)を導入している。
DAIV Z5は、高性能なインテル第12世代CPU「インテル Core i7-12700 プロセッサー」を採用したコストパフォーマンスに優れるデスクトップPC。エントリークラスのGPU「GeForce RTX 3050」や32GBのメモリ、SSDのストレージなどを搭載することで、コストを抑えつつも多彩なデザイン業務をこなす性能を併せ持つ。
DAIV 6P-RTは、大画面の16型液晶を備えたノートPC。薄型・軽量でありながら、インテル Core i7-12700H プロセッサーやGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU、32GBのメモリを搭載し、デスクトップPCにも引けを取らない性能を発揮する。
DAIV Z5
- 価格
27万5,200円(税込) ※カスタマイズ済の価格
- CPU
インテル® Core™ i7-12700 プロセッサー(12コア【Pコア 8、Eコア 4】 / 20スレッド / Pコア 2.10GHz、Eコア 1.60GHz / TB時最大4.90GHz【Pコア 4.90GHz、Eコア 3.60GHz】 / 25MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3050 / 8GB
- メモリ
64GB(16GB×4)
- ストレージ
NVMe接続 1TB SSD+1TB HDD
- OS
Windows 11 Pro 64bit
- 無線
IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n準拠+Bluetooth 5内蔵
- 電源
500W【80PLUS BRONZE】
DAIV 6P-RT(現在は後継機「DAIV Z6-I7G5TSR-A」を販売中)
- 価格
27万8,700円(税込) ※カスタマイズ済の価格
- CPU
インテル® Core™ i7-12700H プロセッサー(14コア【Pコア 6、Eコア 8】 / 20スレッド / Pコア 2.30GHz、Eコア 1.70GHz / TB時最大4.70GHz【Pコア 4.70GHz、Eコア 3.50GHz】 / 24MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU / GDDR6 4GB
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe接続 1TB SSD
- OS
Windows 11 Pro 64bit
- 無線
インテル® Wi-Fi 6 AX201(最大2.4Gbps/ IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n)+Bluetooth 5モジュール内蔵
- パネル
16型 液晶パネル
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)、EDIT_小倉理生