名古屋の映像制作プロダクションで20年以上映像制作に携わっていた「モジョン」こと寺村太一氏。今春独立してフリーランス活動を始めるにあたり、80万円を超えるマウスコンピューターのデスクトップPC「DAIV DD-I9G90」を作業用PCとして導入した。一般的なCGプロダクションの作業PCが平均20~30万円であることを考えると“超高級で規格外”に感じるが、寺村氏は「費用に対して得られる効果を考えれば、最適解でした」と話す。その理由や機材選びのポイントを聞いた。
また今回は、検証で使用したテストファイルを用意。
>> 検証用テストファイルはこちら
自身のPCで同じ検証ができるので、DAIV DD-I9G90との性能比較に役立ててほしい。
独立後、「トラブル」への意識は大きく変わった
CGWORLD(以下、CGW):初めに、独立までの経歴を教えてください。
寺村太一氏(以下、寺村):地元の名古屋を拠点に、これまでは映像制作プロダクションなどの社員として勤務しながら、合計20年ほどCG制作に携わってきました。そして2023年春に独立し、同じ名古屋でフリーランス活動をスタートさせました。
CGW:名古屋のCG業界の特徴は何でしょうか。
寺村:名古屋は自動車をはじめ、メーカーが多いエリアです。その地域性から、依頼される案件は企業のプロモーション映像やCMといった非エンタメ領域が多い印象です。また、仕事を受ける映像制作プロダクション側は少数精鋭で分業化もされていないことが多く、案件の頭から終わりまでを1人で担うゼネラリストが多いですね。
ただし、一般的なCGプロダクションのゼネラリストと、映像制作プロダクション所属のゼネラリストでは少し意味合いが異なると思います。CGのゼネラリストと言えば、モデリングやアニメーション、コンポジットなどCG作業全般を手掛けますが、映像のゼネラリストはそれらに加えて企画やディレクションなども担当する機会が多くあります。私は後者だったのでその経験を活かし、独立後も案件全体に幅広くかかわらせてもらっています。
CGW:フリーランスになっても仕事内容には大きな変化がなかったようですが、変化したこととしては何が挙げられますか?
寺村:1番大きいのは「トラブルに対する意識」です。会社員の場合は何かトラブルが起きても周りの仲間が助けてくれますが、フリーランスではそうはいきません。そのため、トラブル対策の観点からいろいろと慎重なスタンスを取るようになりました。
例えばスケジュールは、クライアント都合の突発的な変更が発生するケースがありますし、仕事を詰め込みすぎると事故も起きやすい。だから、可能な範囲で余裕のあるスケジューリングを心掛けています。
さらに、データの安定運用にも気を配っています。例えば、以前の会社ではNASでデータを管理していたのですが、独立後はチームでデータ共有する必要がないので、現在はオンラインストレージのDropboxを使用。作業中のデータなどをリアルタイムでバックアップしながら制作するスタイルを取っています。これに加えて、万が一システムが壊れてしまった際の対策として、システム環境全体を丸ごとSSDにクローン保存しています。
クライアントとの意思疎通にも「スピード感」は不可欠!
CGW:実作業で意識していることはありますか?
寺村:「スピード感」については、会社員時代から個人的に強く意識しています。とくに、クライアント側に「映像やCGに関する知識があまりない」や「完成形のイメージが明確ではない」といったケースでは、とりわけ気を使っていますね。
このような場合、自分としてはできるだけ早い段階でクライアントに完成形のイメージ画を共有してあげることが大切だと感じています。なぜなら、イメージ画の共有がクライアント側にとっては判断材料や安心材料になり、ときには相談ベースだった案件が実際の仕事につながったケースもあるからです。またこちらとしても、早い段階でクライアントと完成形のイメージを共有できれば軌道修正もスムーズです。
CGW:そのスピード感を高めるために工夫している点は?
寺村:例えば、高速なGPUレンダリングによる「高速プレビュー」を活用して作業効率を上げる点は、工夫の1つかなと思います。ハードウェアの観点からいくと、GPUレンダラーを徹底的に活用するためには高性能PCが必須となるため「高性能PCの導入」はポイントになるでしょう。
自分は独立にあたって超ハイスペックなマウスコンピューターの「DAIV DD-I9G90」を導入しましたが、おかげで提案用やCGや映像もスピーディーに制作できています。高性能なPCは最終成果物のクオリティアップにも当然貢献してくれますが、個人的には「初動で迅速に対応できる」という点も大きなメリットです。
またソフトウェアについては、会社員時代はRedshiftがメインレンダラーだったのですが、フリーランスになってからはOctaneRenderに変更しました。というのも、ノイズがないきれいな最終画像の出力ではRedshiftの方が速いのですが、パッと見でいい感じの画を素早く出力したいときにはOctaneRenderの方が速いと感じたからです。もちろん、これは組み合わせるDCCツールなどによって変わってきますが、Cinema 4DとOctaneRenderの組み合わせは非常に高速なので、自分はその組み合わせで利用しています。
なお今回、DAIV DD-I9G90の実力をチェックすべく、「Cinema 4D+OctaneRender」と「Cinema 4D+Redshift」の2パターンでGPUレンダリングの検証を実施しました。検証で使用したテストファイルも用意したので、詳しくは後述の検証パートをチェックしてください。
※本記事に掲載されているDAIVのレンダリングイメージは、寺村氏が記事用に独自にデザインされたものを使用しています
現場の声を理解したデザインや信頼のサポート体制が選定理由
CGW:独立にあたり、作業用PCとしてマウスコンピューターのDAIVを選んだ理由は何だったのでしょうか。
寺村:DAIVシリーズは、以前勤めていた会社で2016年の登場当時から使用してきたのですが、コストパフォーマンスやカスタマイズ性の高さに加えて実際の使い勝手も非常に良好で、「クリエイティブ作業に特化したメーカー製BTOの先駆け的存在」だと認識しています。
さらに、アマナが監修していることもあって「現場の意見を分かっている」と感じる工夫も随所に見られます。例えば、移動を前提としたハンドルやキャスター、あるいは大型GPUを支えるサポートバーなどを標準で装備している点は、他メーカーのデスクトップPCではなかなか見られません。
それから、新型DAIVの筐体デザインについても、個人的にとても気に入っています。フロントやトップはプラスチック成型ですがチープ感はなく、むしろ優れた質感で高級感があります。さらに、ブランドロゴも透かし的な扱いとなっていて悪目立ちしておらず、「信頼できる仕事道具」といった雰囲気も魅力的。クライアントが立会うスタジオ撮影などに持ち込む際には、安心感や信頼感を持ってもらえると思いますね。
CGW:デザインや機能性以外ではどうでしょうか。
寺村:これまでに致命的なトラブルに見舞われたことがないので、信頼性などの「スペックに現れない部分」にもDAIVの魅力を感じています。過去にはコスパとカスタマイズ性の高さから自作PCで作業をしていたこともあるのですが、PCの安定動作やトラブルに頭を悩ませてしまい、クリエイティブな作業に専念できないケースも多々ありました。その反省から独立時には「安心を買う」という意味でメーカー製PCを選びたいと考えていただけに、独立のタイミングで新型DAIVが登場してくれたことは個人的に「ベストタイミングだった」と感じています。
さらに、メーカー製PCといっても故障は当然ゼロではないですから、仮にトラブルが起きても「信頼できるサポート体制がある」という点はとても心強い。実際、少し前に「GPUに高負荷をかけるとPCが落ちてしまう」というトラブルに見舞われましたが、そのときも24時間365日対応のサポートに問い合わせたことで、迅速な原因解明と復旧に至りました。このときは本当に助かりましたね。
80万円は決して高額ではない、新型DAIVが自分の「最適解」
CGW:DAIV DD-I9G90の実際の性能や使い勝手についてはどう感じましたか。
寺村:まだ4ヵ月程度しか使っていませんが、高性能であることはもちろん、安定感もあってとても満足しています。そもそも、自分は独立前の会社でもGeforce RTX 2080 Ti×2基を搭載する高性能PCを利用していたのですが、ハイエンドGPU「GeForce RTX 4090」を搭載するDAIV DD-I9G90はそれをはるかに上回るパフォーマンスでした。
例えば、OctaneRenderのベンチマーク「Octanebench」のスコアを見ても、GeForce RTX 4090は「1272」、Geforce RTX 2080 Ti×2基は「693」と2倍近い差があります。ベンチマークのスコアは概ねGPUレンダリングのスピードに直結するのですが、実際の使用感でも同じぐらいの違いが出ていると感じますね。
CGW:DAIV DD-I9G90は非常にハイスペックですが、スペックが上がると消費電力や冷却ファンの音などが気になるところです。そのあたりについてはどうでしょうか?
寺村:最初は自分も、これだけ高性能だと「発熱や消費電力はすごいことになるだろう」と覚悟していました。しかし、実際に計測してみるとGPUレンダリング時の消費電力は400W程度で収まっていたのはかなりの驚きでした。Geforce RTX 2080 Ti×2基を搭載した以前のPCでは600W以上だったので、それと比較しても電力効率はかなり優秀だと実感しています。
また静粛性についても、CPUは水冷CPUクーラーが標準装備されていますし、GPUも現時点ではそれほど激しくファンが回ることがないので、感覚的には「意外と静かだ」と感じています。実は現在、仮住まいに住んでいて寝室と作業部屋が一緒なのですが、夜にGPUレンダリングを実行していてもファンの音が苦になることはなかったので、静粛性も想像以上に優れていると思いますね。
CGW:さまざまな面でDAIV DD-I9G90に満足していることがわかりました。一方で、80万円を超える価格は決して安くはありませんが、その点についてはどうお考えですか?
寺村:確かに、一般的なPCと比較すると、DAIV DD-I9G90はハイスペックでかなり高額なマシンといえます。もちろん購入にあたって80万円という金額には覚悟が必要でしたが、得られるメリットは価格以上のものがあると予想しました。そしてその予想は導入後には確信に変わりました。
この高速なマシンがもたらす圧倒的スピード感に私自身とても驚いていますが、結果としてクライアントをも驚かす事になりました。『まさか、こんなに早くCGの提案が貰えるとは思わなかった』、『もうこのCGサンプルが完成版で良いじゃないですか!』。どちらも実際に頂いたクライアントの声でして、初のお取引の相手でしたが非常に喜んでいただけ、次の案件のご相談もくださいました。個人だからこそマシンの性能が仕事の速さに直結し、クライアントの満足度や安心感に繋がった実感があります。
フリーランスとして独立するという事は、今まで以上に個人の力を問われるという事かと思います。機材によるパフォーマンスの低下をお金で解決できるなら、解決しない理由はありません。そういった体験を踏まえても、80万円の新型DAIVを選んだことは私にとって「最適解だった」と感じています。
寺村氏が導入した「DAIV DD-I9G90」のポイント
DAIV DD-I9G90は、クリエイター向けの「DAIV」の最上位クラスにあたる「DAIV DDシリーズ(現DAIV FXシリーズ)」のデスクトップPC。ハイエンドモデルのインテル第13世代CPU「インテル Core i9-13900KF プロセッサー」とGPU「GeForce RTX 4090」を採用し、圧巻のパフォーマンスを発揮する。寺村氏はこのモデルをベースに、オプションとしてメモリを64GBから128GBにアップグレードするとともに、ストレージは最大6,700MB/sの高速データ転送に対応する2TB SSD「SAMSUNG PM9A1」(M.2 PCIe Gen4 x4接続)を選択。さらにOSも「Windows 11 Pro 64bit」を選ぶなど、妥協なきこだわりを見せている。
DAIV DD-I9G90
- 価格
871,090円(税込)
- CPU
インテル® Core™ i9-13900KF プロセッサー(24コア【Pコア 8、Eコア 16】 / 32スレッド / Pコア 3.00GHz、Eコア 2.20GHz / TB時最大5.80GHz【Pコア 5.80GHz、Eコア 4.30GHz】 / 36MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 4090
- メモリ
128GB(32GB×4)
- ストレージ
NVMe接続2TB SSD(最大6,700MB/sのモデルを選択)
- OS
Windows 11 Pro 64bit
- 無線
Wi-Fi 6E(最大2.4Gbps)対応 IEEE 802.11 ax/ac/a/b/g/n準拠 + Bluetooth 5内蔵
- 電源
1200W【80PLUS PLATINUM】
検証:GPUレンダリングの処理時間
DAIV DD-I9G90のGPUレンダリングのスピードを検証すべく、「Cinema 4D+OctaneRender」と「Cinema 4D+Redshift」の組み合わせでそれぞれにGPUレンダリングにかかった時間を計測。OctaneRenderは1440x2560px、Redshiftは2560x1440pxの画像解像度で実行したところ、結果はOctaneRenderが「29秒」、Redshiftが「3分7秒」となった。
検証で使用したそれぞれのテストファイルはここからダウンロード可能。興味のある人はこのテストファイルを使って自身のPCでGPUレンダリングし、上記の結果と比較してほしい。DAIV DD-I9G90の実力や、寺村氏が同機を選んだ理由が見えてくるはずだ。
>> 検証用テストファイルはこちら
問い合わせ
<法人>
株式会社ボーンデジタル
TEL:03-5215-8671(平日のみ:10~19時)
<個人>
株式会社マウスコンピューター
TEL:03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/