「ハイクオリティなゲームエフェクト制作のために」スパーククリエイティブの、自社開発ツールを用いた制作手法と機材選び。使用モデルはGeForce RTX 40 シリーズ搭載。
著名なゲームタイトルや数多くのスマホゲームのエフェクト制作を手掛けるスパーククリエイティブ。自社開発のリアルタイムVFX制作ソフト「SPARK GEAR」を駆使し、プラットフォームやゲームジャンルを問わずにクオリティの高いエフェクトを制作している。
そこで今回は、SPARK GEARの特徴や実際の使用感などに迫るとともに、エフェクト制作を始めたきっかけなどを若手スタッフに聞いた。さらに、作業用PCとして利用しているマウスコンピューターのデスクトップPC「DAIV」シリーズの導入経緯やメリットについても語ってもらった。
会社の魅力は「チャレンジしたいことに邁進できる」こと
スパーククリエイティブ
「最先端の技術と最高峰のグラフィックを目指す」を掲げ、VFXエンジン「SPARK GEAR」を軸としたグラフィックス制作に取り組むVFXスタジオ。エフェクトはもちろん、モデリングやスカルプティング、アニメーションなどのあらゆるクリエイティブワークを手掛け、エンターテインメント全般のコンテンツを制作する。
ホームページ:https://spark-group.jp/creative/
X(旧Twitter):@SPARKCREATIVE0
CGWORLD(以下、CGW):コンシューマーゲームやスマートフォンゲームなど、プラットフォームに限定されずゲームのエフェクト制作を手掛けていますが、質の高いエフェクトを制作するうえでのポイントは何でしょうか。
今西圭太氏(以下、今西):プラットフォームやジャンルなどによってエフェクト表現はさまざまに変化しますが、共通しているのは「(そのゲームなどの)世界観に応じた“カッコイイ”演出をつくる」という点でしょう。例えば、RPGで炎系の魔法を表現する場合、炎の要素をどれだけ深堀りできるかがクオリティに大きくかかわってきますし、それを追求できればおのずと質の高いエフェクトに行きつくと考えています。
CGW:現状でエフェクト表現を職種にしている人は少なく、3DCGデザイナー全体の12%(CGWORLD調べ)という結果もあります。そういったなかで、どういった若者が貴社に入社してくるのでしょうか。
今西:確かにそういった現状ではありますし、エフェクトを対象とした授業を行なっているCGの専門学校もまだまだ少ないと思います。ただ、例えば弊社代表取締役の岡村は専門学校で講師を務めており、エフェクトの教育を率先して行なっています。そのため、それがきっかけでエフェクトに興味を持ち、弊社に入社してくれる人も多くいます。
また、スタッフ同士がお互いに知見やノウハウを出し合うなど、スキルアップのための勉強会を社内で開催しているのもポイントの1つかなと思います。現在、CGWORLD.jpで連載している「UE5でつくるセルシェーディング」の内容は、その勉強会に近いかもしれませんね。
CGW:松川さんや平井さんは、どのようなきっかけでエフェクトに興味を持ち、スパーククリエイティブに入社しようと考えたのでしょうか。
松川慶氏(以下、松川):自分はまさに、専門学校時代、弊社岡村にエフェクトのいろはを教わった一人です。元々、エフェクトには「作品をより華やかにしてくれる力がある」と感じていました。そこから、岡村から多彩なエフェクト表現を教えてもらったことで、「スパーククリエイティブに入社してエフェクトを極めてみよう」と考えました。
平井滋己氏(以下、平井):自分は専門学校時代に背景を専攻しており、エフェクトにはまったく無縁でしたが、就職活動を進めるなかでスパーククリエイティブやエフェクトのことを知ったという経緯があります。そのとき、例えば松明の炎や雨などのエフェクトを加えることで、無機質な印象のある背景でも「活き活きとしたグラフィック演出ができる」と感じたんです。そこから、総合的な演出力や幅広い技術力などを身に付けたいと考え、スパーククリエイティブへの入社を決めました。
CGW:実際に入社してエフェクトに関する能力は伸びましたか?
平井:非常に伸びたと実感しています。弊社は、勤続年数にかかわらず「挑戦したい人にどんどん機会を与える」という社風があるので、日々の研鑽によって着実に進歩できていると感じます。
今西:やりたいことをやって成果も出るのであれば、スタッフにも会社にもメリットになるので、これはWin-Winだといえます。さらに、弊社は社長とスタッフの距離感が近いので、やりたいことがあった場合にそれを社長に直接相談すると、それがそのまま採用されるケースもよくあります。そういった土壌も含めて「自分がチャレンジしたいことにどんどん邁進できる」という点は、弊社の魅力の1つだと思います。
「デザインに集中できる」「習得しやすい」がSPARK GEARのメリット
CGW:貴社の大きな特徴の1つである自社開発のリアルタイムVFX制作ソフト「SPARK GEAR」について教えてください。
最上亮太氏(以下、最上):SPARK GEARは、Unreal EngineやUnityをはじめとする幅広いプラットフォームに対応したVFX制作エンジンです。エンジニアでもあるCTOの広本がメインで開発に携わっていることから、「一線級のVFXクリエイターとグラフィックエンジニアがともに在籍している」という点も、弊社の特徴になるかなと思います。
今西:他のエフェクト制作ツール、例えばUnityのShurikenやUnreal EngineのCascade、Niagaraとの違いとしては、シェーダーやマテリアル、モデル、テクスチャなどのリソースを「プリセットで内蔵している」という点が挙げられます。これにより、クリエイターは他のDCCツールを使ってリソースを作る手間を削減できるほか、マテリアル内での設定や調整も不要になります。そのため、クリエイターは「デザインのための時間をより多く確保できる」というメリットを得られるわけです。
松川:プリセットで内蔵しているため、「習得しやすい」という点もメリットになると自分は感じます。例えば、自分は入社してからSPARK GEARとUnityを同時に使い始めましたが、Unityはシェーダーの管理が大変で、制作に時間がかかってしまうケースが多くありました。一方、SPARK GEARにはそういった部分での苦労がないので、デザインをどんどん進めることが可能です。個人的な印象ですが、SPARK GEARは初めてでも扱いやすく、かなり早く習得できると感じています。
平井:早く習得できるという点は同感です。自分はSPARK GEARが初めてのVFXツールでしたが、あとから使い始めたUnityでは、パーティクルを1つ出すだけでもノードを複数つないでいく工程が必要でした。しかし、SPARK GEARはMayaでのモデリングと同様に、パーティクルの動きを付けてからテクスチャを割り当てるような工程が非常にわかりやすく簡潔にできています。おかげで、自分は1ヶ月ちょっとであらかたの操作はマスターすることができました。UIもわかりやすく作られているので、簡単なオペレーションを覚えればすぐに使えるツールだと思いますね。
今西:新入社員以外にも、近年はモデリングやモーションを担当していたスタッフがエフェクト担当に変更されるケースもあるので、そういったコンバート時の負荷が他のDCCツールと比べて「非常に少ない」という点も、SPARK GEARの利点だと感じています。
CGW:ちなみに、SPARK GEAR以外のDCCツールはどのように使い分けているのでしょうか。
今西:業務の大半はSPARK GEARで行なっていますが、一部の取引先からは契約で使用ツールを指定されるケースがあるので、その場合は指定ツールを使います。あとは、プロジェクトやエフェクトの表現などに応じて、UnityやUnreal Engineなどを適宜使い分けるというイメージです。
PC選びでは「クリエイターが問題なく作業できる」ことを重視する
CGW:次に、機材選びのポイントを教えてください。
最上:弊社はさまざまなクライアントから案件を受託しているので、クリエイターが使用するPCでは、それらの案件に対して「クリエイターがまったく問題なく作業できるスペックを搭載している」ことを重視しています。例えば、少し前であればGeForce RTX 3000シリーズのGPUや16GBのメモリを基準としていましたが、2023年に入ると、制作に用いるDCCツールやゲームエンジンで要求される推奨環境も向上し、そのスペックでは多くの業務で支障が出るようになってきました。そこで現在は、GeForce RTX 4000シリーズのGPUや32GBのメモリなどを基準としています。
CGW:最近はマウスコンピューターのDAIVシリーズを導入するようになったそうですが、その背景は?
最上:以前は状況に応じてさまざまなBTOメーカーのPCを購入していたのですが、2022年7月にマウスコンピューター製品を取り扱うボーンデジタルの担当者に出会ったのが1つのきっかけでした。担当者の話を聞いてみると、マウスコンピューターの製品は性能と価格のバランスが良く、筐体の拡張性や可搬性にも優れていたので、そこからマウスコンピューターのPCを導入するようになりました。
CGW:2023年9月に「DAIV FX-I7G70」を、さらにその後すぐに「DAIV FX-I7G80」を導入していますが、その理由は何だったのでしょうか。
最上:DAIV FX-I7G70はクリエイター用PCの追加機材として、DAIV FX-I7G80は新規案件でのエンジニア用機材として発注しました。この案件では、大規模なゲームエンジンそのもののビルドが必要な開発で、大容量のVRAMやストレージが求められたため、その条件を満たす、GPUはGeForce RTX™ 4080搭載、メモリは64GBのDAIV FX-I7G80を選定したという経緯があります。
CGW:DAIV FX-I7G80はもちろん、DAIV FX-I7G70もハイスペックなPCですが、貴社の業務で負荷の高い作業にはどういったものがありますか。
今西:エフェクトで使用するモデルやテクスチャを制作する際、場合によっては流体シミュレーションや衝突シミュレーションなどを実行することがあるため、そのときはGPUがかなりの高負荷状態になると思います。実際、旧世代(GeForce RTX3000シリーズ)のGPUを搭載したPCだと、1つのリソースをつくるのに1~2時間かかったこともありました。ただ、GeForce RTX 4000シリーズのGPUであれば、それが10~15分あるいは数分レベルで終了できたので、PCのスペックの重要性を痛感した瞬間ではありましたね。
スペック面の不満は一切なし、納期が早く故障率が低いのもDAIVのメリット
CGW:実際に導入してみて、DAIVシリーズのメリットや魅力は何だと感じましたか。
最上:「故障率が圧倒的に低い」という点が魅力的です。以前導入していたPCは定期的に何らかの不具合が発生していましたが、DAIVシリーズはいまのところ全く不具合が発生していません。パーツ選定が優れているかなと感じます。特に在宅勤務のスタッフが使っているPCが壊れた時は、代替機を用意するのに時間がかかり、業務に支障が発生してしまうため、故障率の低さはとても助かっています。
CGW:なるほど、制作において故障で制作時間を失わないことはとても大切ですよね。
最上:また、調達の観点でも、注文から納品までが早く、本当に満足しています。例えば、急ぎで機材を調達したくても、通常の通販サイトでは対応してもらえないケースがよくありました。実際、DAIV FX-I7G80を導入する際はまさにそのような状況でした。ここまでの超ハイスペックなPCを1~2週間という短いスケジュールでもきちんと納入してもらえたことは、大きなメリットだと感じています。おかげで、いまは新規スタッフが急に入社するようなケースでも、マウスコンピューターであれば大丈夫という気持ちで安心して相談させてもらっています。
CGW:業務での使い勝手などはいかがでしょうか?
松川:どの作業でも動作が重く感じることはないので、スペック面での不満は一切ありません。ゲーム業界やゲーム自体のクオリティは今後さらに上がっていくと思いますが、それにも十分対応できるようなスペックだと感じています。
平井:自分も非常に快適に作業できています。自分のエフェクト人生はDAIVとともに始まったので、良き相棒として今後も末永く使い続けたいですね。
そのほかにも、業務機材として「取り扱いやすい」、OSのダウングレードなど「こちらの要望にも柔軟に対応してくれる」、市場価格が反映されるので「場合によっては同一価格でも上位モデルが手に入る」など、あらゆる点で融通が利く点も魅力です。
CGW:筐体のデザイン等についてはどうですか?
最上:以前のPCは持ち上げないと運べなかったので、キャスターの存在は非常に助かっています。例えば、PCの交換は意外と多いですし、新規スタッフの入社によるPCの運搬作業などもかなりの頻度で発生している状況です。毎月4~5台は取りまわしているイメージですし、在宅勤務者のために配送対応を行うケースもあるため、キャスターのありなしは作業効率に大きく影響していると感じます。ちなみに、機材をセッティングするスタッフの中には女性もいるのですが、「お散歩感覚で運べる」ととても好評です。
CGW:最後に、会社としての今後の展望などを教えてください。
最上:会社として、規模の拡大(=社員数の増加)は今後も続けていく予定です。これに加えて、現在は受託案件がメインですが、将来的には「自社でゲーム開発のすべてを手掛けたい」というビジョンがあります。弊社は、VFXクリエイターとエンジニアだけでなくその他の職種(プランナーやモデラーなど)もそろっており、ゲーム制作を丸ごと受託できる環境が整っているので、そういったところも目指していきたいと考えています。
スパーククリエイティブが導入した「DAIV FX-I7G80」と「DAIV FX-I7G70」のポイント
「DAIV FX」シリーズは、マウスコンピューターが展開するクリエイター向けPC「DAIV」シリーズの中で最上位に位置づけられるデスクトップPCである。
DAIV FX-I7G80は、CPUに「インテル Core i7-13700KF プロセッサー」、GPUに「GeForce RTX 4080」を採用し、64GBのメモリや1TBのSSDを搭載。総合的に優れた高性能モデルとなっており、VRAMやストレージで高い基準を求めるゲームエンジンの開発にもきちんと対応する。
DAIV FX-I7G70は、DAIV FX-I7G80の下位モデルでGPUとストレージが異なるが、全体としての実力はハイレベル。負荷の高いシミュレーションも難なくこなすなど、クリエイティブな作業を快適に進められるパフォーマンスを持つ。
NVIDIA GeForce RTX 40 シリーズとは?
速さのその先へ アップグレード
Tensorコアは第3世代から第4世代、RTコアは第2世代から第3世代になった。GeForce RTX 40シリーズGPUに搭載されている第4世代Tensorコアは、NVIDIA DLSS 3などの革新的なAIグラフィックス技術の実現をしている。NVIDIA DLSS 3内の技術であるNVIDIA Reflexによって、早い応答性を保ちつつ、AIを活用してフレームを生成し性能を飛躍的に向上させます。DLSSの超解像度について、AIを使用し、低解像度の画像からより高解像度の画像を出力することで、すべてのGeForce RTX GPUの性能を飛躍させます。DLSSは、複数の低解像度画像をサンプリングし、かつ前のフレームからのモーションデータとフィードバックを使用してネイティブ品質で画像を再構築します。
DAIV FX-I7G80
- 価格
572,700円
- CPU
インテル(R) Core(TM) i7-13700KF プロセッサー ( 16コア / 8 P-cores / 8 E-cores / 24スレッド / TB時最大5.4GHz / 30MB )
- GPU
GPU:NVIDIA GeForce RTX 4080 / 16GB ( DisplayPort×3 / HDMI×1 )
- メモリ
64GB(16GB×4)
- ストレージ
SSD 1TB +4TB
- OS
Windows 11 Pro 64ビット
DAIV FX-I7G70
- 価格
332,800円
- CPU
インテル(R) Core(TM) i7-13700KF プロセッサー ( 16コア / 8 P-cores / 8E-cores / 24スレッド / TB時最大5.4GHz / 30MB )
- GPU
NVIDIA GeForce RTX 4070 / 12GB ( DisplayPort×3 / HDMI×1 )
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
SSD 1TB+ HDD 8TB
- OS
Windows 11 Pro 64ビット
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)
EDIT_山下一貴 / Itsuki Yamashita(CGWORLD)