2023年、物理的なパチンコ玉やメダルを使用しない「スマート遊技機」の登場により、パチンコ・パチスロの業界に新風が巻き起こっている。対応の新機種においてはスペックも向上し、よりリッチで新規性の高い映像表現が可能になった。このような状況で、『ルパン三世』シリーズや、『戦国乙女』シリーズといった人気作を手がける遊技機メーカー「平和」(東証プライム上場)では、よりクリエイティブの高い表現を生み出すために、「映像企画」と呼ばれるディレクターと「デザイナー」がコンセプト段階から一体となって、日々アイデアを練り上げている。現在、映像企画、デザイナーの2職種を募集中の同社に、映像表現のこだわりや求める人物像について伺った。
業界の追い風となるスマート遊技機の登場
CGW:まずは最近の遊技機業界の景気や状況について教えていただけますか?
T:ここ数年の遊技機市場を取り巻く環境は、決して楽観視できない状況が続いていました。ただ、2022年11月にスマートパチスロが、2023年4月にスマートパチンコが市場に投入されまして、遊技機業界全体としても大きな転換期に入っていると感じております。
CGW:スマートパチンコ、スマートパチスロとは?
T:従来は、パチンコであれば物理的な玉を、パチスロであれば物理的なメダルを投入して遊技していただいていましたが、これらが全て電子化され、お客様が投入する必要がなくなりました。その結果「いちいち玉やコインを入れる手間と時間が省けた」というお客様からの評価や、衛生面の向上にもつながっています。
もちろん「やはりメダルがあった方が実感が湧く」とか、「出たものを箱に入れることが楽しみなんだ」とおっしゃるお客様の声も無視はできませんが、業界として新しいことが始まったことはアピールできるんじゃないかなと思います。実際、コロナ禍以前に比べて遊技機ユーザー数が回復しているというデータも出ています。
CGW:現在、貴社の開発はどのような状況でしょうか?
T:平和は『ルパン三世』のような版権物からから『戦国乙女』のようなオリジナル機種まで様々なコンテンツを主軸として持っています。ここに加えて新たにIPを取得し、新規ユーザーの獲得や、新たなゲーム性の追求を目指した新機種の開発を行っています。
CGW:新機種のスペックが向上している分、演出なども豪華になっていく傾向にあるのでしょうか?
T:それはありますね。演出の総量はもちろん、クオリティも年々上がってきています。機種スペックが向上すれば、映像演出に使えるツールも向上します。そこでは使いこなす側のセンスや、そのコンテンツの良さをいかに引き出すかが問われてきます。やはりお客様のなかには、そのコンテンツが好きでわざわざその機種を打ってくださる方もいるので、新規性のある表現やそのコンテンツの良さを引き出すような作り方を心がけています。シリーズもののIPであれば、以前の良さを踏襲しつつも、それを超える新しいものを投入することを心がけています。
東証プライム上場企業ならでは 恵まれた福利厚生とデザイナーの制作環境
CGW:貴社のクリエイターの働き方はどのような感じでしょうか?
T:まず勤務形態についてご説明いたします。弊社の勤務形態は、9時30分から18時までが定時となっております。また、完全週休2日制を採用しており、夏季休暇も設けております。有給休暇などの取得に関しては、全社員の平均取得日数が年間15日となっており、柔軟な休暇の取得が可能です。仕事のスケジュールや兼ね合いにより、繁忙期を避けるような調整も行っておりますが、それ以外の時期については、基本的には自身のタイミングで休暇を取得いただけます。繁忙期には多少の残業が発生することがございますが、弊社では毎週ノー残業デーなどの取り組みを実施しており、労働時間の適切な管理を推進しております。
CGW:福利厚生はいかがでしょうか?
T:会社の中に社員食堂があり、多くの方に利用いただいております。他に団体生保への加入、財形住宅貯蓄制度、退職金制度、従業員持株会制度があります。また、育児休暇を取得することもできます。
CGW:クリエイターの制作環境について教えてください。
T:デザイングループではAfter Effectsをメインツールとしています。その他、Adobe Photoshop、Illustratorを使っております。3DCGソフトについてはMaya、3ds Maxを使用しており、プラグインについては最新のものが一通り使える状態になっています。また、PCはこれらの3DCGソフトがストレスなく動くスペックのものを用意しています。
中途で入られた方で、それまで使用されていたツールに何か優位性がある場合は導入した実績もありますので、それぞれのクリエイターが自分のやりたい表現を活かせる環境づくりが整えられています。
CGW:実際に他社から転職されたクリエイターの方はいらっしゃいますか?
T:はい、遊技機メーカーはもちろんのこと、映像プロダクションやアニメ会社を経て平和に入社したクリエイターもいます。本人からは、「以前の会社ではすでに決まった映像をひたすら作るだけという立場だったが、平和では自分で作りたいと思う映像を、企画担当と直接話し合いながら作れるのが嬉しい」といった声を聞いています。
クリエイターひとりひとりが演出を考案 メーカーならではの映像制作のこだわり
CGW:ここからは具体的にデザイナーの業務内容について伺っていきたいと思います。どのような流れで制作が進んでいくのでしょうか?
T.M.:弊社ではプロジェクトが始まる段階で、機種のゲーム性などを考える企画担当とともに、演出のディレクションを担当する映像企画と、デザイナーがアサインされ、一緒に話し合いながら映像コンセプトを作っていきます。
CGW:制作において最も優先される事項はなんでしょうか?
T.M.:やはり、最優先されるのは、お客様に楽しんでもらえるかどうかです。それを軸にすべての演出を組み立てていきます。派手な演出をしてみたり、緩急をつけたり、バランス感覚を大事にしつつ作っていきます。
たとえば、当たらないときの演出をド派手に見せたら、お客様からしたらストレスになってしまいます。そこをうまく間引きながら演出していくのがポイントで、この機微はある程度経験を積まないと見えてこないんです。
CGW:ではそんな演出について、各クリエイターの方にこだわったポイントをお仕事の具体例とともに教えていただけますか?
T.M.:私はスマートパチスロ『L戦国乙女4 戦乱に閃く炯眼の軍師』における「破軍建返し」という演出を担当しました。
その演出では、山本カンスケというキャラクターが、ニヤリと悪い顔をするのですが、表情の扱い方にはこだわりました。普段はかわいいキャラクターなので、その印象が強くなってしまわないよう、ニヤリとさせるのは、ほんの一瞬。キャラクターを大事に扱った演出を心がけています。
I.S.:私は本作品のアシストタイム(メダルが増えるボーナス状態のこと)の終了時、リザルト画面のエフェクトを担当しました。リザルト画面では、画面の上部に獲得した枚数などが表示されます。お客様はこの画面を撮ってSNSに上げたりされるのですが、ここがキャラを立たせているだけだと画面的な動きがないので、エフェクトを付与することで、より綺麗に見せています。
CGW:エフェクトに関しては外部の協力会社さんよりも遊技機のことをよく理解している社内のデザイナーさんがより効果的に表現できるんですね。
I.S.:そうですね。レバーの感覚やボタンを押したときの気持ちよさといった感覚は、わずかなタイミングのズレで体感として全く異なったものになります。また大味なエフェクトにはならないように、細かいとこまで気を遣って作っています。
T.Y.:私はスマートパチンコの『eルパン三世13 銭形からの招待状』を担当しました。ディレクターとして全体のクオリティチェックも行なっており、「ルパン三世らしさ」を軸にすべての演出を組み立てていきました。
たとえば「LUPIN THE PUSH」という演出がありまして、これは各話タイトルのタイプライター演出に付随した新規演出です。ルパンのテーマに合わせた演出になっているので、社内サウンドチームの方からその音を提供してもらい、パチンコ的には一番高揚する演出として制作しました。
K.S.:私は、ルパン三世、次元大介、石川五ェ門、シリーズお馴染みのメインキャラ3人が集合するキャラリーチの演出を担当しました。
本機種のテーマは「コミカルなルパンへの原点回帰」でしたので、演出の中では、弊社で過去に作成したルパンのOPをオマージュして採り入れています。3人集合時の画では、質感を変えて色をアピールし、「これからアツい演出が始まるぞ」と、格好良くオシャレに仕上げました。
遊技機を打ってきた経験が制作に活きる 平和が求めるクリエイターについて
CGW:平和では現在クリエイターを募集中とのことですが、その狙いを教えていただけますか?
T:チーム全体の底上げを図りたいという狙いがあります。社内のメンバーも日々、新しい映像に触れたり、映像技術のカンファレンスに行くなど刺激を受けていますが、別の会社で培った技術や知見を備えている方が入ってくださると、全く違った刺激になります。その意味でも新たに人材を迎えることは、弊社にとって大きなメリットと言えます。
CGW:迎えるにあたって、どんなクリエイターが活躍しやすいですか?
T:やはり、実際にユーザーとして遊技機を楽しんでいる方ですね。お客様の立場に立ってどういう演出をすれば、より心を掴めるのかといった考え方や感性を持っていることは、この仕事をする上で重要です。
もちろん弊社社内でもクリエイター全員が遊技機ユーザーというわけではありませんが、実際に活躍している社員を見ると、遊技機の知識や経験が深い人物という印象があります。この点は選考材料として強く押し出していきたいと考えております。
CGW:映像制作の技術についてはいかがでしょうか?
T:今回は即戦力になる方を募集しているので、After Effectsなどを使ったオーサリング技術については必須としています。また、映像表現に直結する技術をお持ちの方であったり、前職での技術力を重視していきたいと考えております。
CGW:先ほどオーサリングについてお話がありましたが、たとえばアニメ制作会社などでAfterEffectsを使って撮影・コンポジットのお仕事をされている方でも大丈夫なのでしょうか?
T:もちろん歓迎いたします。近年のアニメ制作は撮影やエフェクトに非常に力を入れていますし、遊技機にそのまま持ってこられるレベルのものもたくさんありますので、そうした技術をお持ちであれば、ぜひ弊社で力を発揮していただきたいと思います。
CGW:募集人数はどの程度の規模でしょうか?
T:デザイナーと映像企画を合わせて7名から9名と考えております。内製チームを持っている遊技機メーカーは少ないので、デザイナーの方にとっても初期工程から関われることは魅力的に映ると思います。
CGW:平和で働くことで得られる経験について、どのようにお考えですか?
T:やはり、企画に対してゼロから携われることだと思います。それに加えて、パチンコ・パチスロ両方の制作に携われる点が魅力だと思います。デザインの部署としてはパチンコ・パチスロに垣根はありませんので、ご自身で向いている方を選択することができます。
CGW:最後に、今後の遊技機開発や映像制作の方向性について教えていただけますか?
T:映像技術・表現に対する要求は年々、上がり続けていますので、追いつき追い越すような映像作りを目指しています。また、遊技機は映像だけではなく、役物やサウンドが一体となって面白さを伝えていくものだと思っておりますので、その連動性も今後より重要になってくると考えています。
映像もただの1枚絵だけではなく、奥行きのあるパネルを使ったホログラムのような表現を試みたりと、新しい表現への研究は常に行なっております。筐体の形もさまざまな進化を遂げたり、あるいは回帰するような流行があると思いますので、それに負けない表現を目指していきたいと思っています。
私たちと一緒に平和の未来を切り拓く、熱意あるクリエイターをお待ちしております。
求人情報
■募集職種
①映像企画
②デザイナー
■待遇
年俸制478万円以上+決算賞与
内訳:月給36.5万円+賞与40万円+決算賞与
※決算賞与(4月)については業績が当社基準に達した場合に支給されます。
【年収例】
年収510万円/26歳(入社5年目)
年収615万円/32歳(入社11年目)
■雇用形態
正社員
※3ヶ月間の試用期間があります。その間の給与や待遇に変動はありません。
■休日・休暇
・完全週休2日制(土・日)
・祝日
・年末年始休暇
・有給休暇
・介護休暇
・慶弔休暇
・産休・育休
★年間休日数130日(2023年度予定)
応募はこちらから
https://cgworld.jp/jobs/30194.html
TEXT_日詰明嘉
EDIT_山下一貴 / Itsuki Yamashita(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充