ソニーの「空間再現ディスプレイ」が実現する 新しいビジュアライゼーション体験
裸眼のままで、そこに実物があるかのような立体視を実現するソニーの空間再現ディスプレイ、Spatial Reality Display(以下、SRD)。SRDの開発を手がけるソニー、SRDを活用したソリューションを提案するデータ・デザイン、マーケティングにSRDを活用しているアシックスの3社に、SRDが実現するビジュアライゼーションの魅力についてそれぞれの視点で語ってもらった。
ソニーが培ってきた技術力で、新たな空間を現実に召喚する
──SRDとは、どのような商品ですか?
森川靖大氏(以下、森川):SRDは「空間そのものを目の前に召喚」する、立体ディスプレイです。画面からものが浮き上がって見える、奥行きも感じられる、そして顔を動かすとその位置に応じて目の前にものがあるようにちがう角度で見ることができる──そんな新しい視聴体験を提供するディスプレイです。
──立体視によるビジュアライゼーションについて仕組みを教えてください。
石橋時光氏:ディスプレイ上部にセンサーがあり、人の目の位置を認識しています。その目の位置情報をもとに右目用と左目用の映像をリアルタイムで作成し、ディスプレイ表面の「マイクロオプティカルレンズ」を通じてそれぞれ左右の目に異なる映像を届けることで、立体を見せるという仕組みです。
森川:難しく聞こえますが、実際に裸眼で見ていただけたらまさに「現実世界に新たな空間を召喚する」感じ、わかってもらえると思います(笑)。
──SRDは実際にどのような領域で活用されていますか?
越智瑞貴氏:インダストリアルデザイン、建築設計、医療教育、エンタメ、博物館での展示といったあらゆる分野や用途で活用されています。実際に使用されている方からは、「今まで2Dモニタで見ていた3D映像をそのまま3Dで見ることで、より構造の理解が深まった」、「デザインの効率化やクオリティ向上に繋がった」とご好評をいただいています。普段3Dデータを扱っていない方でも直感的に構造が理解できるので、クライアントへのプレゼンテーションや部署を跨いだ情報共有のツールとして使っていただいています。
森川:建築設計用途では、ご要望の多かったAutodesk RevitやSketchup ProのデータをSRDで見るための「CAD & BIM Viewer」を8月にリリースしました。その他Maya、ZBrush、Blenderといったソフトウェアにも対応しています。
──今後の展望をお聞かせください。
中川 拓氏:今年10月以降には、SRDを複数台組み合わせて大画面化することができる「マルチディスプレイ設定」にも対応予定です。さらに大きいモデルも実寸大で表示できるようになるので、より広くビジュアライゼーション活用に貢献できたらと思います。SRDは全国のソニーストアで体験いただけるので、是非皆さんの目でご覧いただけたら嬉しいです! お手持ちのデータを表示してみたいという相談も大歓迎です!
SRD活用の道筋を提案する、データ・デザインの取り組み
──データ・デザインの事業内容と、SRDとの関わり方について教えてください。
データ・デザインは、主に3Dに関連したソフトやハードを取り扱っており、ツールを組み合わせてデジタルプロセスを構築する企業です。ソニーさんのソリューションパートナーとしてSRDを取り扱っており、SRDにモデルを実寸大で表示させるビューアを用途別に開発しています。
SRDは様々な業種で導入されています。例えば、製品のデザインレビューではレンダリング後に2DまたはHMDでレビューしていたところ、SRD導入後はHMDを使う煩わしさがなくなり、意思決定が速くなります。
展示用途においては、希少な商品の現物展示には盗難や災害による破損のリスクがありますが、現物を3Dスキャナでデータ化すればリスクを低減できる上、複数拠点での同時展示も可能です。
既存のワークフローにSRDを無理なく組み込む方法をご提案することで、多様な分野のお客様の課題を解決しています。
──SRDの活用について、今後の展望をお聞かせください。
データ・デザインでは3DレンダリングソフトのKeyShotも取り扱っています。現在は、KeyShotでレンダリングしたデータをVRに移行するツール「KeyVR」についても、SRDで使用できるように開発を進めているところです。
さらに、今後はお客様にフィードバックをいただきながらアプリケーションを細分化させ、お客様と共同でカスタムビューアを開発していきたいと考えています。SRDを使ってみたい、という企業の方には、SRDを実際に見ていただきながらソリューションをご提案できますので、3Dデータをお持ちでない場合にも、ぜひデータ・デザインにご相談いただけると嬉しいです。
実物をデジタルに置き換えてサステナブルに アシックスのSRD活用
──アシックスとSRDとの関わり方について教えてください。
アシックスではサステナビリティへの挑戦として、2020年にシューズのデジタルサンプル作製を開始しました。シューズを3Dモデル化し、実物のサンプル作製数を削減するという試みです。その過程で出会ったのが、実物大のリアルな3Dモデルを裸眼で見ることができるSRDです。初めて見たときはそのリアルさに感動しました。「これなら開発だけでなく販売でも3Dモデルを使える」と思い、SRD活用の検討を始めました。
──具体的に販売でどのように活用したのでしょうか?
アシックス原宿フラッグシップとアシックスラン東京丸の内でSRDでのシューズの展示を行なったほか、6月にはフランスでパリファッションウィークに伴ったポップアップイベントでの展示を行いました。
立体視に感動する声はもちろんのこと、ランニングシューズ内部の「カーボンプレート」のような通常では見えないパーツを様々な角度から見ることができる点で、コアなお客様にもご好評をいただいています。ブランドとしても、ウェブサイトの製品画像では伝えきれない商品設計の細部を3Dで直感的に理解いただけることは嬉しく感じますし、技術や根拠が伝わると、よりお客様の心が動くことを実感しました。デジタルならではの見せ方で接客クオリティも上がっています。
──SRDの活用について、今後の展望をお聞かせください。
デジタルカタログとしての活用が出来ると思います。現物では展示しきれないバリエーションのある商品をデジタルで展示すれば展示スペースの削減もできますし、管理の難しいパーツの展示も出来ますよね。デジタルだとどんなに小さいパーツでも紛失する心配もないですし。商談の際も、通常は何百というようにサンプルが必要になりますが、SRDのデジタルカタログがあればサンプル削減ができるのではないかと考えています。今後も様々な工程で、3DデータとSRDを活用しサステナブルな取り組みを展開していければと考えています。
空間再現ディスプレイ(Spatial Reality Display)ELF-SR2
27インチの大画面でリアルに3Dコンテンツが目の前に広がる、4K広色域空間再現ディスプレイ。
価格:550,000円(税込) ※ソニーストアでの購入価格 2024年8月時点
お問い合わせ
ソニー株式会社
資料請求・お問い合わせ先
www.sony.jp/biz/inquiry/catalog/form_simple.html
TEXT_園田省吾(AIRE Design)
EDIT_Mana Okubo(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota、大沼洋平/Yohei Onuma